読書感想『塗仏の宴ー宴の支度ー』※ネタバレ注意
先週どころか11月28日に読み終わった本は著作京極夏彦の百鬼夜行シリーズ第六巻『塗仏の宴-宴の支度-』でした!
なぜこんなに遅れたかというと宴の始末を読みきってから感想を出そうと思っていたからでした。
今回ただでさえ長編のシリーズの中でも上下巻両方1000ページという超長編でした。読みごたえがありすぎてなんと一か月以上もかかってしまいました。
今回登場人物も視点も多く、関口君や朱美さん敦子ちゃん木場修、そしてなんと茜さんが語り部として出てきます。
その上各々が関わっている事件がどれも韮山周りの土地、そして催眠術という共通点を除いて全く関係がなくなんなら各々利害対立しているという、情景が飛びがちな京極作品の中でもよく分からない度が増してます。
絡新婦の時と同じくとりあえず全体の感想を書いた後、読みながら書いていた章ごと感想を書こうと思います。
全体の感想
宴の支度ということもあり本当にいろいろなところで話が取っ散らかっているという印象で共通するのが韮山と催眠術だけ。
韮山の大量殺人を追った関口君の話だけ見るとホラーっぽくてこれはこういう感じのホラーなのか?と思っていたら急に現代的なねずみ講的な話が始まり、そして京極の妖怪語りが始まったと思えば加藤さんの子供が催眠で殺されたという怒涛の展開。
韮山の大量殺人と催眠事件の首謀者が華仙姑でさっそくつながったと思ったら尾国さんに催眠で操られてるというまた変なところで物語が繋がるというこの奇妙な感じ。
怪しげな団体は多く、怪しい人も多く、全く関係なさそうな所で木場修は奮闘しているし、そっちにも変な奴がたくさんいるし。
そして茜さんが登場したと思いきや開幕の関口君と同じ奴に絡まれたと思いきやなんか死んでしまった…
そして犯人が関口君になっていた……
途中の拷問っぽいシーン、読みながら困惑していましたけどやっぱり関口君だった。もう何が何だかなので後編がないと本当にわけがわかんない。
今作のボスは関口君と茜さんの前に現れたあいつなんですね。
というわけで読んでいた時の章ごとの感想を書いていきたいと思います。
ぬっぺっぽう
なんかここにきて最も妖怪と繋がりを感じる、古式ゆかしい怪談チックな話が来た。普通に怖い。
関口君が語り部だとダメダメさ加減も相まってより不気味。
噂にしか残らない大量虐殺と記憶が置き換わっている住人、映像がぶつ切りになっていることも気になりすぎる。
というか最初と最後のシーンは誰のなんなのか全く見当がつかない。
うわん
懐かしい朱美さん。狂骨はわりかし最近になって読んでしかも好きな話だったのでよく覚えている。
1人の自殺志願者、しかもランダムなタイミングで自殺したがる男を直すという怪しげな宗教家と朱美&ナツ、それと助っ人の尾国さん。
ぬっぺっぽうと違い、なんだか解決したように見えるがこれもどこかで関わるのだろうか。
それにしても犬の鳴き声に紐づけられた強迫観念ってすごい。トラウマを植え付けることの最上位Ver.という感じがする。
最後に韮山と書かれていたがそこに繋がるのか。不老不死というのもその線でぬっぺっぽうと繋がるのか。
最後のシーンは関口君が何かに捕まったってことなのか。なんか拷問までされちゃってかわいそうに。
ひょうすべ
関口君の過去回想。読み始めてからひたすら『ひょうすべ』という妖怪の成立や変遷、推測などなど物凄い分量の『ひょうすべ』を摂取した。これはこれで面白い。
河童と菅原道真というベターな所から兵主や中国の妖怪を辿るこの長い語りが読めてしまうのも京極の凄さ。
そして物語は進行し、加藤さんが出会ったという『ひょうすべ』の話題へ。あの長い語りはここで生きてくるわけですね。
祖父の記憶の改竄を疑って入ったのに、実際には加藤さんが改竄されていて、しかも子供まで殺され、最も悲しいと思っていた事故すら使い物にされ、その上それを利用して騙しながら金をとられているという超非人道的な話しになってしまった。
前の章に出てきた優しいのにどこか怪しい尾国さん、普通にダメな人でした。なぜ道の教えをしっていたかというと商売敵だからだったんですね。末恐ろしい。こうなると朱美&ナツが危なくなってくるし、どうなってしまうのか気になる…
わいら
佐伯きたーーー!!!珍しく妹ちゃんの一人語りから始まったと思ったらついさっきまで大の悪役として話されていた華仙姑さんがまさかの嵌められてる側で、より尾国さんがやばいやつになってきた。
なんかきな臭い武闘家集団まで出てきたり、大量殺戮について語ったりとどうまとまるのか分からない雰囲気がしてきたけれど、ちょっとずつ線が繋がっている感じがする。
それにしても楽しそうな榎木津はいい。そしていざって時に兄に助けてほしい妹ちゃんも可愛い。
しょうけら
小さい頃に多くな悪いことをすると寿命が300日、小さな悪いことをすると3日減るという話を聞いた覚えがある。お腹の虫の話も朧気ながら木尾kジュの中にある。絵本かなんかでみたんだろう。
というわけで今回は庚申やらなんやらと催眠を巧みに使って詐欺をする団体にまんまとやられた女性とそれを裏手に取ったストーカーの話だった。今回もまたとてつもなく長い『しょうけら』と『庚申』についての講釈だった。木場修はよく長々と聞けるものだ。
また一つ怪しい団体が増え、そして怪しい少年まで出てきたらもはやお手上げである。名前が覚えられない。
それにしても関口君はなんなんだこれ。全く意味が分からないまま壊れていく姿だけ見せられるというのはなかなか不可解で不快である。
おとろし
前作ボスが出てきたと思ったらなんか大変なことになってきましたねこれ。
ここまで読んできた関口君の拷問はそう繋がるんですか。ただこんだけ様々な催眠や洗脳を見てくるとそのまんま関口君がやったとは思えないので急いで後編を読みたい。
茜さんはまさしく蜘蛛のように回り込み囲い込むのが上手いというか、からめとる感じをよく文章を表せるなと感心していたらなんか死んでしまった。
茜さんは榎木津の探偵秘書向いてると思っていたから残念。
今作のボスは関口君と茜さんの前に現れたあいつなんですねー。これは確かに京極堂のミラーリングか。
この辺にして後編読みたいと思います。