復元されたキューピッドと新解釈
ただ馬車馬のように働く日々が続くと、なんだか心の内側がざらざらしてくる。
余裕がなくなって、悪い意味で人の事をかまっていられなくなってしまう。そんな時は可及的速やかに、視界と心を美しいものでいっぱいにしなければ!
と 言うわけで、頑張ったご褒美に絵画展に行って来た。
ドレスデン国立古典絵画館所蔵
フェルメールと17世紀オランダ絵画展 @東京都美術館
『窓辺で手紙を読む女』復元されたキューピッド
17世紀のオランダと言えば、オランダ黄金時代。
光と影の魔術師の異名を持つレンブラントやフェルメールが有名だからか、明暗のコントラストが印象的な絵を思い浮かべる方も少なくないと思う。
(今回の展示ではそれぞれ一作品ずつ)
今回の目玉とされているのは、フェルメールが描いた初期の作品「窓辺で手紙を読む女」。
1979年のX線調査でその画中画として描かれたキューピッドが塗り潰されていることが分かっていたものの、長い間画家本人が消したものだと考えられてきた。
しかし最新の調査で、それは画家の死後、何者かによって塗り潰されたものだと判明。
大規模修繕プロジェクトを経て、キューピッドが復元され、当時フェルメールが描いた本来の姿を取り戻した話題の作品だ。
フェルメールは寡作の画家で、現存する作品は30数点。
その中に手紙をモチーフにした作品が数点あり、今回修繕され来日したそれが最初に表現したものだそう。
フェルメールは画中画を描いた作品をいくつも残しているが、それらはその絵画のストーリーや背景を表している。
今回の展示でも説明されていたが、画中画に描かれたキューピッドは「真実の愛」を象徴し、踏みつけている仮面は「嘘」や「欺瞞」を表す。
これまで「内省的」とされてきた作品であったが、キューピッドの出現によって、主人公である女性が読んでいる手紙が恋文であることをほのめかすだけでなく、「真実の愛のみが欺瞞に打ち勝つ」と言う意図が込められていると言う解釈に改められたそうだ。
キューピッド不在の修繕前の絵は、見る人の心情によって女性の表情の印象が変わり、手紙は良い知らせなのか悪い知らせなのか、得られる解釈は様々だった。
今回実際に観て、私個人として思うのは、キューピッドや仮面の意味が加わったとしても、女性の表情の印象は私自身の心情に左右されるということ。
「私たちの真実の愛が欺瞞を打ち砕くのよ!」(笑)なんて、自信満々に恋文を読んでいるようには、私には到底見えなかったから。
(絶対そういうことじゃないと思うものの 笑)
うーむ。他の誰かの感想も聞いてみたい。
オランダ黄金時代のインスタグラマー
ところで、今回の展示を回りながら、私はある事をずっと思っていた。
「なんかめちゃめちゃインスタっぽいぞ・・・!?」
比較的小さなサイズのものが多く、人物画や風俗画が大半を占めていたからかもしれないが、肖像画に描かれた人物のとるポーズや構図はまさに現代のインスタに投稿された写真のそれで、急に親近感とニヤニヤが止まらなくなってしまった。
今も昔も人々は”映え”がお好きなようだ。
特に、ワルラン・ヴァイヤン「手紙、ペンナイフ、羽根ペンを留めた赤いリボンの状差し」(1658年)だ。
これから見に行かれる方には是非確認していただきたいのだが、この絵がインスタのタイムラインに流れてきても、流れ作業で2回タップしてしまうレベルで現代的且つおしゃれな構図になっている。
それから、ヤン・デ・ヘーム「花瓶と果物」(1670-72年頃)には心を奪われた(インスタ風と言うわけでもないが)。
構図がバチバチにキマッている。
迫力のある花々の中にところどころ虫が隠れていて、非常に遊び心のある作品だ。
これを晩年に描いたなんてどれだけおしゃれな爺さんだったのだろう・・・。(素敵すぎる)
美しいものは心を癒す
今回来日している作品の中に日本で有名なものはあまりないのだけれど、オランダ黄金時代と言うこともあって、光と影のコントラストが効いた印象深い作品がいくつも展示されていた。
光源に対する距離感の表現なんて、声を出して唸ってしまいそうだった。
視界を沢山の美しいもので覆い、ざらついた心も癒すことができたようだ。
それもこれもオランダ黄金時代の皆さんのお陰だ。
次回絵画展に行くその時まで、またしばらく頑張れそうだ。
そういうわけで、オランダ絵画が好きな方は是非。
最後までお読みいただきありがとうございます。 また是非遊びにいらしてくださいね! 素敵な一日を・・・