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生分解性プラスチックは海洋ごみ削減につながらないのか?〈サステナ学習帳#94〉

生分解性プラスチックは、環境に優しい素材として注目されている。多くの企業が「生分解性」製品を打ち出し、消費者の間でも人気を集めている。しかし、現実的には、この素材に過度な期待を寄せるべきではなく、特に海洋ごみ問題を解決する魔法の素材ではない。本日は、生分解性プラスチックの現状と課題を確認したい。

【理由1:分解できる条件が限られている】
生分解性プラスチックは、特定の条件下でのみ分解する性質を持つ。具体的には、適切な温度、湿度、微生物が揃った産業用コンポスト施設が必要だ。しかし、多くの廃棄物はそのような条件に置かれない。例えば、海洋や野外に廃棄された場合、通常のプラスチックと同様、長期間そのまま残ることが多い。この技術的制約が、生分解性プラスチックの普及における大きな壁となっている。

【理由2:最終的にマイクロプラスチックになる】
生分解性プラスチックが分解されても、そのすべてが自然に完全に戻るわけではない。分解が進んだ結果として、マイクロプラスチックが環境中に残るケースがある。これらは海洋生物に摂取されることで生態系に影響を与え、人間の食物連鎖にも組み込まれる懸念がある。つまり、生分解性といえども、根本的な解決策とは言い難い。

【理由3:ポイ捨てを助長する可能性】
「生分解性」という特性は、一部の人々に「どこに捨てても大丈夫」という誤解を与える可能性がある。この結果、ポイ捨てが増加し、環境モラルの低下につながる恐れがある。事実、いくつかの調査では、消費者が「環境に優しい」と認識する素材の製品を使用すると、適切な廃棄への意識が低下する傾向が見られている。

【生分解性プラスチックの市場浸透と課題】
市場では、生分解性プラスチック製品の開発が進んでいる。例えば、コンビニチェーンやカフェでは、生分解性ストローや袋が導入され始めている。一方で、コストが従来のプラスチックより高く、大量生産や広範な普及が進んでいないのが現状だ。また、こうした製品が最終的にどのように廃棄されるかは利用者任せで、適切な処理施設に届かないケースが多い。現在の技術では、生分解性プラスチックの活用を促進するためのインフラ整備が不可欠である。

【まとめ】
生分解性プラスチックは、一定の役割を果たせる可能性を持つが、それだけで環境問題を解決するには不十分である。むしろ、過度な期待を抱くことで、プラスチック使用の削減という本質的な問題から目を逸らす危険性もある。今後は、素材の改良や廃棄インフラの整備を進めつつ、リデュース(使用削減)の意識を高めることが求められる。

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