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インドネシアの温泉その3【チアトル温泉2023年10月】

インドネシアで一番有名といっても過言ではない温泉で、温泉にあまり詳しくないインドネシア人でも、温泉に行きたいというと「チアトルに行け(発音はルを巻き舌にしてチアタールが近い)」と言います。

そんなわけで、木曜午前の授業が終わってから1泊2日でチアトル温泉に行ってきました。
ここは期待して行ったというより、押さえておかねばという感じが近いです。”日光を見ずして結構というなかれ”、の世界ですね。

有名な観光地なだけに、客引きが多く面倒です。ホテルを紹介するとか、オジェック(バイクタクシー)に乗れとか、マッサージはどうかなど、しつこくついてくる感じで最初は嫌な気分になりましたが、広大なサリアテルホテルの敷地に入ってしまえば、いなくなりますので、問題ありません。

日本の温泉で例えるとどこがイメージできるか考えたのですが、ぴったりくるところはないです。プールを中心とした観光地としては箱根かなという気もするし、強酸性泉で有名な場所でいえば草津温泉が近いけれど、どれも違うんですよね。
もしかしたらヨーロッパあたりの温泉街を参考にリゾート開発しているのかもしれません。

わたしは温泉街としてはあまり好きにはなれないですが、宿泊したサリアテルホテルと彼らの運営する温泉プール施設は気に入りました。ホテルの敷地内は客引きもいないし、気持ちよくリラックスできるところです。
バンドンから17キロ、1時間強で行ける近さ、加えて好きな強酸性泉でお湯もいいですしね。


■ チアトル温泉の概要

バンドンの北17キロにあります。
大きな温泉プール施設があり、ここを中心に町が形成されています。
ホテルも小さいところから中堅どころまでいくつかあり、看板にはPoolと書いてあるのでそれぞれ温泉プールを持っているようです。ただし、チパナス温泉郷に比べると、温泉街もホテルも広範囲に散らばっています。

歴史
ホテルのスタッフに聞いたところ、街の中心にある温泉プール施設とサリアテルホテル(Sari Ater Hotel)ができたのは約50年前。
それより前は、小さな温泉が湧いていたそうです。それがいつからあるのかは昔すぎてわからないとのことでした。
この辺の人たちは昔から温泉に入っていたんだろうか?と聞いたら、そりゃ入っていたんじゃないの、知らんけどで終わってしまい、期待していたような昔話は聞けませんでした。

源泉
源泉は3つあり、その1つがサリアテルプールの敷地内にあります。元々温泉が湧き出ている場所に、湯量が足りなかったからでしょう、源泉2つ目の山から引湯した温泉を合流させています。
山の引湯は、町の南西7キロほどのところにある”タンクバンプラフ”という火山からとってきています。ここは噴火口まで降りていける有名な観光地で、泥の足湯もあります。

源泉の様子を見せてもらいました。直径2mほどの湯だまりの底から湧いているのが一つ目の源泉で、奥のパイプから来ているのが山からの源泉です。
普通は湧き出るところから泡がぶくぶく立つのが見えたり、湧出量が多いと水面が盛り上がる現象が見られるものですが、それらしき形跡がなく、湯量としてはわずかなんだろうと想像しています。
奥から滝のように落ちてきているのは温泉なのか、川の水なのか確かめられませんでした。

この緑色の藻はおそらく草津温泉にもいるイデユコゴメでしょう。日本の文献にはインドネシアにも存在すると書かれていました。

日本だとこういう場合、タンクに入れて馴染ませて安定させてから供給するケースが多いのに対し、ここは直に流してしまうので、それだけ新鮮な状態を保っているということです。
インドネシアの雑さが逆に良い方に働いた一例ですね。

この建物内にポンプがあり、プールにお湯を供給。

3つ目の源泉は街の上の方にあると聞き行きたかったのですが、中に入って見ることができないというのであきらめました。遠いのか?と聞いたら「ルマヤン(普通)」との返答でした。日本人なら距離や徒歩何分とか返してくるところ、インドネシアらしいです。遠い、近い、普通の3種類なんです。

共同浴場はたぶんないか、一般開放されていない
Googleマップで調べたり、近隣を散歩してみたりしましたが、なさそうでした。
これは、確かめたわけではなくあくまでもわたしの予想ですが、おそらくもともと温泉を利用していた住民たちは、リゾート開発の過程で無料でリゾートの温泉プールに入らせてもらえることになっているような気がします。

インドネシアではホテル開発やダム、発電所の開発のさい、農地や森を明け渡す代わりに、ホテルで仕事をもらう等のベネフィットを受けるという話を聞いたことがあります。

■ チアトル温泉の行き方

行きはGrabバイクで行きました。お尻が痛くなる予感はしたものの、車の約半額と安いので、快適さより価格優先です。
バンドン市内から50分、料金は64,000ルピア(600円弱)
1時間半かかると言われていたのにあっという間につき驚きました。
途中、栃木の那須あたりに来たような錯覚を覚える気持ちのよい道を通ります。

赤丸が源泉のあるタンクバンプラフ。

帰りにバイクを呼ぼうとしたら、運転手が見つからないとアプリで出てきて、無理そうだったので車に切り替えるとすぐ見つかりました。
遠くまで申し訳ないねといったら、「バンドンからお客さんを運んできたところだったから丁度よかった」と言っていました。もしかするとたまたま見つかっただけで本当はつかまりにくいのかもしれません。
サリアテルホテルからバンドン市内まで121,000ルピア(1,100円くらい)で1時間強

この運転手は商売上手で、「途中に2人客がいるのでこの車に一緒にのせてもよいか」と聞いてきました。おもしろそうだったので「安くするならいいよ。」といって交渉成立です。10,000ルピア引きになります。

道をそれ、バンガローやキャンプ場のある施設に寄ると、ジャカルタのタンゲランから来たというインドネシア人カップルが道端で待っていました。
わたしが先客として車に乗っているのを見て、一瞬聞いてないよという表情になったものの、インドネシアでは普通のことなのか、他に選択肢がないからなのか、普通に乗り込んできました。

平日に2泊もしたというので学生かと思ったら社会人でした。自由に休めるんですね。途中のレンバンという町で降りていきました。ジャカルターバンドンは電車で往復、バンドンーレンバンはアンコタ(乗り合いバス)で移動とのこと。

■ 入った温泉(入った順)

(1)Gracia Spa Resort

チアトル温泉で一番高級なホテルです。一泊朝食付きで1.5万円くらいします。
風呂だけ入ることにして、Sari Ater Hotelにチェックインし荷物を置いたあと歩いて向かいました。
地図だとホテルから数百メートルに見えたのですが、地図を拡大して見ると道が途切れていてかなり遠回りしないといけません。高い塀でぐるっと敷地を囲っているようです。無駄に山越えをするルートになっていて、急坂をのぼり汗だくになりながら向かいました。
途中きれいなお茶畑の風景を見られたのでよかったです。

一面に広がる茶畑。日本の茶葉より大きな葉に見える。

入場料は10万ルピア。
事前情報だとタオルがつくとのことでしたが、タオルはなかったです。ワンドリンク付きで、さあ何を飲もうと思ったらTeh bottleというブランドの紙パック紅茶しか頼めませんでした。

それでも高級なだけあって、プールはすいており、全部で3つある大きいプールにわたしを含め5名程度しか客がいませんでした。

入ってみると、温度は39度弱くらい。緑がかった色をしていますが、国見温泉や熊の湯のようなバスクリンのような色調ではありません。

なめるとかなりの酸っぱさです。わたしの感覚だとPH2~2.5の間で、草津温泉より酸性度が強いと思いました。強酸性泉ですね。
すっぱさと、肌のちくちく感が草津温泉よりも強いです。

酸性で緑色ということは、おそらくアルミニウムが入っている緑礬泉なんだと思います。アルミニウムはなめても分かりません。

湯口には黄色く結晶化した硫黄成分が付着している。

気のせいかもしれませんが、プールの場所によって、お湯の味が変わるので、源泉が違う可能性があります。一番下にあるプールはただ酸っぱく、一番上にあるプールは若干塩気というかミネラル分を感じます。温度は同じでしたね。

帰りは絶対歩きたくないと思い、ゲートにいた警備員にオジェック(バイクタクシー)を呼べないか相談したところ、オジェックを呼ぶ代わりにサリアテルホテルへ行く抜け道を教えてくれました。400メートルくらいでつきました。

ホテルへ歩いている途中土石流で流された後のような景観があります。観光バスの駐車場のようで10台近くならんでいます。

写真ではわかりにくいが、前方に向かってなだらかな斜面になっている。

(2)チアトル温泉プール

Sari Ater Hotel and Resortが運営しているため、宿泊者はただで入れます。
営業時間は朝8時から夜9時まで。結構いいかげんで、朝6時くらいに行ったら入れてくれました。しかもすでにプールに入っている先客が4,5名いました。

料金体系は複雑すぎてよくわかりません。いろいろセット料金になっています。
入場料に加え、各種プールごとに追加料金を支払う仕組みのようで、やはり追加料金なしで入れる場所が特に混んでいます。

金曜の朝6:00
おなじく金曜の朝6:00

一番すいているのは、当然ですが追加料金60,000ルピアの個室風呂。宿泊客でも追加料金が必要です。

日本人であれば高くても個室風呂に入るのがいいと思います。
温泉は入れたてだし、温度も42度と高いです。プールの方は38度とのこと。

チアトル温泉全体の印象として、温泉愛を感じない町と人々なのですが、ここの個室風呂の係員だけはこだわりを持って働いている感じです。日本でいう湯守(ゆもり)ですね。

実は、源泉をみてみたいと頼んだら快諾して案内してくれたのが、湯守でした。

このような個室風呂専用の建物が他にも2つある。
60,000ルピア。赤い買い物かごにバスタオルと石鹸を入れて渡してくれる。
一回ごとにお湯を入れ替えます。

泉質は表示がなく不明なものの、なめた感じの酸っぱさは強酸性泉なのは間違いないです。顔を洗うと目にお湯がしみて痛いレベルですので、PH2前半の強酸性です。
お湯には湯の華が浮いており、硫黄成分も入っているのだと思います。ただし硫化水素臭はしません。
Graciaホテルのプールと同じで外のプールは緑色、個室風呂は太陽光が当たらないためか無色でした。

■ 泊ったホテル

サリアテルホテル(Sari Atel Hotel & Resort)に泊まりました。
一番安いスタンダードルームで、1泊朝食付で70万ルピア(6500円くらい)税込み。バスタブなしシャワーのみの部屋です。
インドネシアは消費税10%、サービス料11%で21%くらいの税金がつきます。
アゴダでとったのですが、アゴダの表示料金は税前なので、実際は表示価格よりもかなり高くなります。ご注意ください。

チアトルのホテルではGraciaが一番良いと言われており、2番手グループがSari Ater Hotelです。チパナス温泉郷に続き2番手を選んでしまった。

1番手はブランド力もあるし安売りしてはいけないという業界トップの気概があるので、歯を食いしばって値引きをこらえるのですが、2番手は値引きしがちなんですよね。
1番手が安易に値引きしていまうと、ドミノ式にみんな値崩れしていきますので、どの国のどの産業もそうですが、1番手は率先して値上げし、価格競争が起きないようにする義務があるんです。
というわけで、意外にコスパがいいのは2番手グループというケースがよくあり、ケチなわたしは無意識の内に2番手グループを選ぶのだと分析しています。
本当は志あるトップ企業を応援しないといけないんですけどね。

このホテルはとにかく敷地が広く、この温泉街をレジャーランドとして開拓してきたホテルです。
キャンプ場はもちろんのこと、泥道をバギーやオフロードカーで走るコース、戦争ごっこ(すいません言葉がわかりません)をする施設など多彩です。

敷地内にはバンガローがたくさん立っており、ちょっと高いですが家族連れで来るには本当によいと思います。
バルコニーからは小川が流れる様子を眺められ、ここで朝コーヒーを飲むのは最高でしょう。

朝広々としたバンガローエリアを散策すると、さわやかな高原特有の空気が気持ちよく、小鳥のさえずりや、小川のせせらぎの音が聞こえ、細胞レベルで浄化されていく感覚がありました。とてもリラックスできます。

バンドンの寮だと、朝5時くらいは近隣モスクから目覚めるほどの大音量でアザーンが流れるのに、このホテルは遠くからかすかに聞こえるくらいなのがさらに素晴らしいところです。
これだけでも泊る価値があると思いました。

朝食はバンガローエリアにあるレストラン(プール併設)でいただきます。ちなみにバンガローエリアには3つほどプールがあり宿泊客はこっちも入れます。わたしは入りませんでした。

朝食は雰囲気は最高で、オムレツや揚げ物をその場で作るスタッフもいて高級な部類に入ります。もう少しスンダ料理やインドネシア料理のレパートリーを増やすとなおよいですね。

英語をしゃべる子供たちがたくさんいたので、引率らしい外国人に聞いたらジャカルタのインターナショナルスクールの生徒たちが旅行に来たようでした。お金持ちの子供たちですね。

個人的に温泉街としてはいまいちで好きになれませんが、インドネシアでこれだけのレベルの温泉に入れるだけでもありがたい話ですので、ジャカルタやバンドンにお住まいの方々はぜひ足をお運びになられてはいかがでしょうか。

ご家族、ご友人とバンガローに泊まられると、きっと満足されること間違いなしです。

それではまた。

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