インドネシアの温泉100か所訪問記念 日本との違い&ベスト10温泉
200か所になったらもう一度やると思いますが、節目なのでまとめておこうと思います。
1.インドネシアと日本の温泉の違い
おなじ温泉でも温泉文化が違うのと、気候も違うので、いろいろな違いがあります。
日本よりもいいところ、悪いところに分けて説明します。
(1)まずはいいところ
泉質はインドネシアの方が圧倒的に上
日本は限定的な温泉資源に対し需要が多すぎるのでしょう。
源泉かけ流しがすべてとはいいませんが、日本では貴重な存在になっています。
ところが、インドネシアでは源泉かけ流し以外存在しないといってもいいくらいです。熱すぎるので水を混ぜて冷やすのはたまにあります。
しかも、タンクにいれてしばらく寝かすとかありません。湯冷ましに多少おいておく程度で、基本流れてきたものをそのまま流します。新鮮そのものなんです。
それだけではありません。日本では全部で30ほどしかないと言われている、足元湧出泉がそこら中にあります。
足元湧出とは、温泉が湧き出るまさにその場所に湯壺がありそこに入るもので、お湯が新鮮そのものであることから、大変貴重な存在として温泉マニア垂涎の的となっています。
わたしも御多分にもれず足元湧出泉は好んで入りに行くタイプですが、インドネシアで入った足元湧出泉の数が、すでに日本で入った足元湧出泉の数を超えています。
最近では当たり前すぎて感動さえしなくなり、自分でも完全に麻痺していると感じます。
入浴料が圧倒的に安い
ジャワ島の都市部周辺の温泉は別にして、100円、200円の世界です。
バンドンの周辺だと個室風呂の別料金で1000円とかもありますが、例外です。
インドネシアの場合、温泉の施設維持にあまりお金がかからないのでこれで成り立つのだろうと思います。
沸かしたり、循環させたりしていないので、塩素を投入する必要もありませんし、燃料費もかかりません。自然そのものだから安いんですね。
個室風呂が普通にある
日本だと家族風呂と言われ、九州でよく見ます。大分県、熊本県あたりですね。
毎回新しいお湯を入れなおすので、なんて贅沢なんだと思っていましたが、インドネシアは実は個室風呂がかなり多く見られます。
湯量が豊富なインドネシアならではのメリットと思います。
日本人にとって水着を着ずに風呂に入れるのと、プールの喧騒から離れ心静かに温泉を楽しめるのはメリットです。
時間制限があり、20分までとか結構短めなのが困るところです。
(2)よくないところ
お湯をきれいに使おうという意識がとても低い。ゴミを散らかす。
洗い場がないので、石鹸がついたまま、シャンプーがついたまま、お湯に入ってすすいでしまう。
歯磨きをして湯口のお湯をつかって口をすすぐなどは日常茶飯事。
さらには、小分けのシャンプーを使い、使ったあとの袋をその場に捨てる。そのため風呂場の周辺はゴミだらけになっている。
洗濯もしたがり、かつ洗剤も使うので、同じように小分けの洗剤袋が散乱するほか、浴槽ですすぐのでお湯が汚れる。
温泉につかりながらタバコを吸うのが当たりまえ。
場所によっては、浴槽の湯が流れ出る下流でなるべく体を洗おうという人もいるし、洗濯用に別のブースを設けているところもある。
温泉を静かに楽しむ場所ではなく、エンターテイメントと思っている。
温泉を使った温水プールがもっとも人気のある施設になる。
温泉に滑り台があるのは当たり前、浮き輪を持ち込むのも当たり前になっている。
当然とても騒がしく、落ち着かない。
温泉はつかるものではなく浴びるもの。
パンチュラン(滝の意味)といって、打たせ湯がずらっと並んでいる温泉が好まれる。そこは浸かる場所はなく、ただお湯を浴びるだけになる。
熱い湯につかるという習慣がないインドネシア人が多く、またその方が管理がしやすいのだろう。パンチュランはお湯をためないので、シャンプーしようが、石鹸で洗おうが自由だ。
景色を重視しておらず、日が当たらないことの方を重視
自然の中の温泉でも、プールでも、木や人口の屋根を使って日陰を作り出そうとする。その分だけ景色が悪くなるのだが、日陰を優先する。写真を撮るときに、この木が邪魔だとか、この人工物が興ざめだというようなことがよくある。
屋外にある温泉プールは当然昼はすいていて、夕方以降に一気に混む傾向がある。それは海水浴でも同じ傾向があり、日焼けすることをとても嫌うためと思われる。
なので平日の昼間を狙って温泉に行くと、すいている可能性が高まるのでお勧め。
泉質が分からない。
表示してある温泉はとても少なく(片手で足りる)、あったとしても成分量についてまで言及しているところはなかった。
温泉の由来がわからない。
興味がないんでしょう。歴史に興味がなく、価値を見出していない。
教育の問題といえる。
2.日本とインドネシアの同じところ
湯治の概念がある
インドネシアの場合は場所にもよりますが、治療目的(テラピという言い方をする)で温泉が使われています。
効能が書いてある温泉もわずかですが存在し、共同浴場があるような温泉街では、言い伝えで効能が伝わっています。
温泉を併設しているホテルがある。
温泉プールの場合が多いが、温泉であることに変わりはなく、好きな時に好きな時間楽しむことができる。
3.勝手にベストテン
順位はつけられなかったので順不同で10カ所書かせていただきます。
温泉地だけでなく、施設にまで絞り込むようにしました。
選んだ基準を説明すると、泉質、温泉のインパクト、温泉以外の楽しみを考慮しています。アクセスの良しあしは考慮していません。
(1)ナラヒア温泉(ヌサラウット島 南マルク州)
海沿いにわいている温泉で、日本でいうと式根島や屋久島の温泉と似ている。
お湯の鮮度はもちろんのこと、景色もすばらしく、最高の体験ができる温泉となっている。
問題はちょっと行きにくい場所にあること。アンボン島から船に乗ってサパルア島へ入り、そこから別の船に乗っていかなければいけないWifiもない島。
この島には他にも2か所温泉があるので、そちらも楽しめる。
この何もない島で温泉に入り、海を見て、ビールを飲むという究極の贅沢を提案してみたい。
(2)洞窟温泉 Cave and Hot Spring Goa Ergendang Deli serdang Sumatra Utara(メダン 北スマトラ州)
洞窟に湧く温泉にそのまま入るわけではないが、その源泉を使って洞窟で入る温泉になっている。
外光が頼りのうす暗い洞窟のなかに、薄水色の美しい温泉が天井からの水滴の波紋を広げながらたたずんでいる。まずはこのお湯を心静かに楽しむことをおススメする。
次に別の大きな穴の中にある温泉で、尋常ではない量の滝湯を頭や肩にたたきつけられながら、白濁した新鮮な硫黄泉を楽しんでいただくのがよい。
ここの温泉はメダンから少し距離があるが、近隣にはいくつか温泉があるので、合わせて楽しむこともできる。
(3)アラムシバヤッ温泉(ブラスタギ 北スマトラ州)
ブラスタギにたくさんある温泉のなかで、ここが一番。敷地内に豊富に湧く温泉を贅沢に流しいれた鮮度抜群の温泉につかりながら、噴煙をあげるシバヤッ山を眺めるという絶景温泉の代表格だ。
お湯は白濁しかつ薄い水色が美しい、万座温泉のような濃い硫黄泉。これぞ温泉という日本人も多いのではないだろうか。
岩を組んだ露天風呂でないことが残念ではあるが、そういう露天風呂に入っている気持ちで豪快な眺めを楽しんでいるうち、プールに入っていることなどどうでもよくなっていることだろう。
ここには個室風呂もあるので、プールが混み合い始めたり、騒がしくなれば個室の方に移動し、心静かに温泉を楽しむのもまた良い。
(4)Rico温泉(パングルンアン 北スマトラ州)
日本に数多ある地獄景観を想像してみてほしい。草木が生えない岩だらけの景観の中に温泉が湧いている。ここまではよくある話だ。大抵熱すぎて入れないことが多いが、そもそも散策する場所なので、入らないだろう。浴場の建物を用意することはある。恐山とか。
ここは、日本でいう川原毛大湯滝だ。湯量はそこまでないが、強酸性のお湯がそのまま滝となって落ちてくる場所に入る。
それだけでも十分にすごいところに、ここはトバ湖の絶景まで付いてくる。急斜面に張り付くように温泉があるのだ。
振り向けば地獄、正面を向けば天国という絶景の組み合わせに、湧き出てきたばかりの温泉の滝を浴びるという贅沢なひとときを是非お楽しみください。
山小屋のような宿に宿泊することも可能。
(5)Edelweis温泉 Kolam renang Edelweise Sipoholon(シポホロン 北スマトラ州)
石灰華ドームというものをご存知だろうか。
日本では岩手県の夏油温泉にある天狗の岩が有名で、国の特別天然記念物に指定されている。温泉が造り上げた見事な景観だが、当然入ることはできない。
ところが、ここはドームから流れ落ちる温泉をドームの真横で、なんならドームを触りながら楽しめる。
学術的に貴重なものを大事に扱わないインドネシアだからこそ可能な、素晴らしい体験を是非一度していただければと思う。
まるで雪のように底に降り積もった石灰の泥を踏みしめながら、ドームを直接削って作られた湯口に向かう。
泥パックならぬ石灰パックをしてみるのも、美肌効果は不明ながら楽しい。
(6)ソーダ温泉 Soda Spring Parbubu(タルトゥン 北スマトラ州)
ありえないレベルの炭酸泉。
炭酸泉が底から無限に湧き出しているまさにその場所にいるのだから、炭酸が揮発する瞬間を逃さないわけだ。おまけに温度は低めと来ている。
経過時間と高温という、炭酸泉にとって2大ダメージを極限まで抑えた稀に見る幸運に恵まれた炭酸泉と言える。
本物の炭酸泉を味わいたい方は、時間をかけてでも入りにくる価値がある温泉といえよう。
温度が低めなのになぜかぽかぽかと温まる不思議な感覚が味わえる。
(7)レンガニス温泉 Cibuni Rengganis Crater(バンドン 西ジャワ州)
泥湯が楽しめる温泉。
ジャワ島がイスラム化する前のヒンドゥー教時代に聖地とされた地に湧く温泉で、そこら中から硫化水素が噴き出す地獄景観にある。
ここには幸いなことにインドネシア人の好むプールはない。ただの池のような浴槽がいくつかあるだけだ。そのため景観を楽しみにやってきている観光客の方が多い。
近くにある滑り台付きのプール温泉の方にみんな行ってしまうので、混みがちなバンドン近郊の温泉としては穴場的なところがよい。
泉質はもちろん抜群で強酸性+硫黄泉。
泥をおばちゃんに塗ってもらい、記念撮影すると良い。
ここに行くまでに周り一面360度お茶畑の見事な景観を楽しむことができる。
イチゴで有名なチウィデイを通るのでイチゴジュースを飲むこともお忘れなく。みやげにイチゴを買うのもおススメ。
(8)マンゲルダ温泉 Mangeruda Hot Spring(バジャワ 東ヌサトゥンガラ州)
足もと湧出泉の概念を根底から覆すほどのインパクトのある温泉。
例えれば、玉川温泉の大噴(おおぶけ)に入れるとしたらどう思いますか?という話だ。
小さな泡がぷくぷくっと静かに湧き出ているのを見て湧いているのが分かる、というのが普通の足元湧出泉である。
ここは全く違う。あまりに勢いよくお湯が噴出するため、水面が目玉のように盛り上がるほどで、身体のバランスをくずして危ないからといって、わざわざ噴出している場所に大きな石を置いて水流を弱めなければならないほどの温泉だ。
温度も若干ぬるめの丁度良い温度で湧き出ている。
自然のままの池に入りながら、太古の昔から変わらぬ温泉の営みを感じていただきたい。
ここに行く人にはもう一つ、地図には出ていない幻の温泉もあるので、立ち寄ることをおススメする。ここは足元というよりは岩から大量のお湯が噴出し岩を削り温泉の川をなすほどの源泉で、そこに入るという温泉だ。
ここは、まったくの自然そのものの温泉で、まさに野湯そのもの。
この温泉に行く人は、ついでにもう一つの川の温泉(Malanage Hot Spring)にも行ってほしい。ランキングに入れるかぎりぎりまで迷った温泉だ。
これらの温泉があるバジャワはインドネシアでは珍しいクリスチャンが多数を占める町。インドネシアの多様性も体験できるだろう。
わたしは一緒にクリスマスを祝ったが、とても貴重な経験だった。
(9)チパチン温泉 Cipanas Cipacing(タシクマラヤ 西ジャワ州)
わたしの足元湧出泉の概念をすっかり壊してしまった温泉その2。
10以上ある個室すべてが、それぞれ別々の源泉かつ足元湧出という、前代未聞の温泉施設になる。
入った温泉の数を、源泉別に数えている方がいらっしゃるが、ここにくれば一気に12、しかもすべて足元湧出泉カウントで増える。
源泉が違うので、温度が部屋ごとに変わるし、泉質も若干だが変わっている気がする。
ここがすごいのはその濃さで、古くから湯治効果で知られ、今も遠くから治療に通う人がいるほどの効能を誇る。青森の古遠部温泉、島根の小屋原、千原温泉レベルの温泉とわたしは思っている。
(10)トゥティ温泉 Tuti Hot Spring (アロール島 東ヌサトゥンガラ州)
アロール島というティモール島のクーパン経由で行く島にある温泉。
ここは入る温泉としては熱すぎで入れず、かろうじて入れる場所を探して入る野湯だが、日本で特別天然記念物に指定されている噴泉塔から高温の温泉が噴き出す様子を見たり、その蒸気を浴びたりする楽しみがある。
また、この島ではジュゴンに会える。行きにくい場所ではあるが、きれいな海とジュゴンに会いにぜひ行っていただきたい。
きれいな海と美味しい魚も有名。
4.日本からの短期旅行者向けのおススメ温泉3か所
いい温泉は分かったけど、もっと行きやすい温泉はないのか?というリクエストにお答えして3つご紹介します。
バリは除きます。行っていないのと、書いている人が多いためです。バリは手ごろでいいんじゃないでしょうか。
主要な空港あるいは都市からアクセスしやすいところ、ホテルに温泉が併設されている場所、個室で水着なしで入れるオプションのある温泉を選んでいます。
(1)チアトル(Ciater)
スカルノハッタ国際空港について、そのままタクシーに乗ってチアトルまで行くのもグループならありだが、個人旅行者はいったんバンドンに入るのが良いと思う。
バンドンで一泊したら翌朝早々にタクシーで1時間かからずチアトルに到着するだろう(土日祝日は大渋滞なので除く)。
温泉とセットのホテルといえば2か所。Sari Ater Hot spring、あるいはちょっと高いがGracia Spaもおススメ。
チアトルの温泉は強酸性泉で、日本だと草津温泉が酸性泉で有名。源泉かけ流しの新鮮な温泉が楽しめるほか、インドネシアならではのプール型温泉と、追加料金を払えば個室風呂も楽しめる。
わたしの訪問記事もつけておく。
(2)チパナス(Cipanas)
スカルノハッタ国際空港から直接タクシーで行くのは遠すぎるので、やはり一回バンドンに入って一泊してから移動することをおススメする。
温泉街はガルッ(Garut)という街の近くあり、ガルッの中心部から4キロほど離れている。
この温泉はインドネシアの温泉街はどんな感じなのかを経験してもらうのにちょうどよい。
チアトルも温泉街といえば温泉街だが、チパナスの方がコンパクトに集中しているところがよく、また地元民専用の共同浴場もある。そこで現地の方々との交流も楽しめるのが、多少不便にもかかわらずおススメする理由だ。
足を延ばす価値は十分にある。
ここの温泉街でおススメするホテルは2つ。Tirtagangga Hot Spring ResortとKampung Sumber Alam Resort。
山から数キロ引湯しているが源泉かけ流し100%で、泉質はマグネシウム硫酸塩泉(旧泉質名:正苦味泉)。いずれのホテルにも温泉があるが、Tirtaganggaの方が泉温が高いと言われている(特に小さな露天風呂の方)。
共同浴場巡りが好きな方には特におすすめしたい。
わたしの訪問記事もつけておく。
(3)ブラスタギ(Berastagi)
ベスト10の方にも書いているので、ここでは簡単に行き方とホテルのご案内だけしておく。
日本からメダンへの直行はないので、マレーシアのクアラルンプール経由か、ジャカルタ経由でメダンに到着する方が多いと思う。
飛行機の到着時間にもよるが、その日はいったんメダンでゆっくりし、翌朝ブラスタギに出発するのがよいと思う。メダンからブラスタギは車で1時間ほどかかる。
温泉がある場所はさらにブラスタギから10キロほど離れているので、メダンからタクシーでそのまま行くのもよし、バスでブラスタギに入ってからグラブ等で温泉街に行くのでもよい。
ホテルはPariban Hotelが日本人のイメージするホテルに近いと思う。プールサイドに面したホテル棟と、普通のホテルがある。
安ホテルでも全くかまわないという人には、他にもたくさん選択肢は出てくるが、そういう旅慣れた人はわたしがいちいちご紹介しなくても、勝手に調べると思うので、あえてホテル名は言わないでおく。
数は多いので、現地についてから探しても見つかるはずだ。
わたしは体調の問題で行かなかったが、噴煙を吹き上げるシバヤッ山に登るのが定番の観光となっている。
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以上駆け足となりましたが、インドネシアの温泉をまとめてみました。
ぜひインドネシアの豊かな温泉を体験下さい。
だいたいの場所を地図で示します