インドネシアの温泉その1 【チパナス温泉郷 2023年10月】
インドネシアに来たら温泉に行きまくってやろうと思いながら1ヶ月半が経過し、ようやく温泉に行くことができました。
この間情報収集は欠かさず行なっており、バンドン周辺の温泉地はほぼリスト化できました。
この中で最初の温泉に選んだのは、Cipanas(チパナス)温泉郷です。
Ci:スンダ語で水、 Panas:インドネシア語で熱いという意味ですので、熱い水=温泉。スンダ語圏の西ジャワ地方には、ここ以外にもCipanasという名前の温泉が数多くあり、紛らわしいです。
なぜここにしたのかというと、評判がいいからです。インドネシア人の温泉通からも、日本人のブログ情報でも、高評価でした。地球の歩き方にも軽くですが触れられてます。
来てみての感想ですが、日本の温泉と遜色ないレベルにあると思いました。
自信を持っておすすめします。
それでは参ります。
■ チパナス温泉郷の概要
バンドンの東50キロメートルほどのところに位置するGarut(ガルッ)の近郊にある温泉街で、温泉プールを持つホテルや宿が集積している他、公共の温泉プール(1回20,000ルピア:180円)もあります。
とにかくホテルだらけなので予約しないできても大丈夫だと思います。インドネシア語でPenginapangと看板が出ていれば宿泊できます。Kosongと看板が出ていれば、空室ありのサインです。
どこか鄙びた感じがする街並みです。
泉源は温泉地から北西約4.5キロメートルにあるグントゥル山(Mt. Guntur)にあり、遠路引湯しているようです。
かなりの数のホテルやプールをじゃぶじゃぶに満たしているわけなので、湯量は相当あると思います。
この山は登れる山のようで、売店のおじちゃんに聞いたら登れるよといって写真を見せてくれました。活火山のようですが、噴火口から硫化水素や噴気が出ている系ではなく、若干岩だらけ系の普通の山です。
街のはずれ(300mほど)に登山口があると言っていました。温泉で出会った地元住民には、うちの子供に案内させようかとも誘われました。登山口から山頂まで6時間かかるそうです。途中に景色のよい食堂や売店もあるとのこと。
日本の温泉地で例えるとどうでしょうね、泉質は別にして、景色や地形が九重、わいたあたりを彷彿とさせる感じが個人的にはしました。グントゥル山の形や、大きな池がある感じは、ポテンシャル的に頑張れば由布院になれると思います。
まずは掃除からですね。ごみが多すぎる。
■ チパナス温泉郷への行き方
バンドンからバスでGarutまで行き、そこからGrabのバイクタクシーを呼んでホテルまで行きました。
直線距離で50km、走行距離で90kmくらいです。
バンドンから出るバス:Baltosという古めのショッピングモールの地下というか1階にバス会社のカウンターがあり、切符売り場の目の前から出発します。Garut行きのバスをだしているのはKpm Transという会社です。他にもバス会社があるので注意して看板を探してください。
10人くらい乗ります。
時間と料金:
4時間の予定でしたが2時間ちょっとで着きました。8:00発12:00到着予定が10:15頃到着です。戻りは土曜日だったので渋滞に巻き込まれて3時間かかりました。高速を降りてから1時間もかかってしまった。
料金は片道65,000ルピア(約600円)、往復チケットは売っていませんでした。
インドネシア方式で客が降りたい場所で降ろして行きます。
Garutのバス乗り場:
Ramayanaモールの裏手にあります。ここに到着し、出発も同じ場所です。ホテルのチェックアウトが12:00なので13:00発で帰りのチケットを買っておきました。
ここからGrabを呼んだらすぐに来ました。
運転手に「この町はGrabは普通に呼べるのか」と聞いたら、「たくさんいるからすぐに来る」といっていました。バンドンほどは目につきませんが、確かにちょこちょこは見ます。
バス乗り場からホテルは5キロ。料金は14,500ルピアでした。帰りのホテルからバス停までは、下り道のためか14,000ルピアでした。
■ 今回入った温泉(入った順)
1.Pemandian Air Panas Cikuda(チクダ温泉)
ここは公共の温泉です。筑田(ちくだ)温泉と当て字を考えてみました。
浴槽はなく、流れ出てくる温泉を浴びるスタイルで、3か所から勢いよく40度前後の温泉が出ています。
全裸で入るスタイルです。
非常に綺麗なタイル張りの空間で、地元の人々から大切にされていることが見て取れます。
泉質は記載がないので感覚的になりますが、ナトリウム硫酸塩泉じゃないかと思いました。
男女別に分かれています。
野沢温泉のようにお金を入れる黒い金属の箱があったので500ルピア入れておきました。お金が落ちた時にチャリンというはずが、紙かなんかの上に落ちた音がしました。みんな紙幣を入れているのか?
2.Pemandian Air Panas Ciengang(チエンガン温泉)
ここも公共の温泉です。地縁願温泉(わたしの考えた当て字です)
ここはかなり気に入り、結局滞在中3回も入ってしまいました。
浴槽がある部屋と、流れ出る温泉を浴びる部屋に別れています。わたしはまずは浴槽じゃない方に入りました。
ここも全裸で入るスタイル。(ホテルに戻ってから掲示してある注意書きを訳したら、あなたの大事なところを隠すことをオススメする、とありました。)
温度は40℃以上あります。熱いお湯をためている場所があり、こっちは48℃あります。草津温泉でわたしがギリギリ我慢して入れる温度なのでわかります。
口に含んだ感じ、泉質がさっきの温泉と違う気がします。気のせいかもしれません。ここの温泉は日本でも飲んだことがある味です。歯がギシギシする感じでミネラル多めです。記憶力が悪いので、どの温泉だったか思い出せません。
床が若干ぬるぬる感がありますので、アルカリかナトリウム炭酸水素塩泉(旧泉質で言う重曹泉)の可能性もあるなとこの時は思いました。
が、後でホテルの温泉プールに長時間浸かっても、肌のヌメリは感じなかったので、どっちでもないことは確かです。
翌日の早朝5時、午前11時ころの2回、浴槽のある方の部屋を訪れました。
浴槽はかなり大きく、3m四方はあります。深さもへそ下まであるので、若干中腰にならないと頭まで沈んでしまう深さです。
温度は42~43度くらいあり、結構あついと思いました(住人に聞いたら45度あると言っていましたが、さすがに45度はないです)。
午前5時は5人くらいつかっている状態で混んでいます。たばこを吸いながら入っているおじさん、石鹸がよくすすげていない状態で入ってしまう若者、歯磨きして湯口で口を漱いでしまう子供ら、といった潔癖症の方だとちょっと受け付けないかもしれないカオス状態です。
わたしも若干どうかなと思いながらつかっておりました。湯量が豊富なので、1時間もすればお湯は入れ替わると思い、またあとで来るぞと早々にあがりました。
午前11時にリベンジで来てみると、予想通りわたし一人です。
最高のお湯です。浴槽の床のタイルが一部はがれ、砂地と岩がむき出しになっており、もしや足元湧出か?と期待したのですが、ただ荒れ果てているだけでした。
Vシネマ俳優の竹内力をいくぶんか若くした感じのおじさんが、温泉を出たところのベンチにいます。45歳。バンダナと銀髪が似合うイケオジです。ジーパンを腰履きしていてパンツが半分見えているくらいです。
風呂のごみを片付けたり、床が汚れたらお湯で流してきれいにしたりしています。
また、わたしがあまりの気持ちよさに長湯していたら、心配になって見に来てくれました。「あまり長く入ってはいけない、10分までにしろ」とアドバイスしてくれました。親切で人懐っこいインドネシア人です。
このおじさんや、自称47歳ですが20歳はサバよんでんだろというおばあさん、若者たち(16歳から22歳)がいて、湯上りに会話しました。みなフレンドリーです。
- 24時間営業でお湯がじゃぶじゃぶに出しっぱなしになっている。
- 飲泉はよくやる。中にはペットボトルを持って来て詰めて帰る人もいる。
- この温泉は飲むと胃腸に効く。あと風邪を引いて咳が出る時に飲むといいと言われている。
- 浴槽の方は45度ある。子供たちも熱いのによく入れるねと言ったら、「この辺りの子らは赤ん坊のときから入っているので、慣れているんだ」とのこと。
(泊まっているホテルを聞かれたので、Tirtagangga Hotelだと教えたら)同じ温泉を引いている。ここから先に流れていったところがホテルの温泉。
「こんにちは!」と日本語で元気に挨拶してくれた男の子がいたので、「日本語いいね。Selamat siang!」と返したら、恥ずかしそうにうつむいてしまいました。インドネシア人の子供たちは本当に可愛いです。
竹内力に「いい体してんな。筋トレしてんの?」と褒められました。彼もガタイがいいです。Vシネマ系ですからね。
浴室には注意書が掲示してあります。
面白いので訳をつけます。誰かが教えたのかと思うほど日本と同じで、風呂の入り方って万国共通なんだなと驚きました。
浴槽に入る前に体を洗いましょうと、水分を摂取しましょうが抜けているくらいです。
3.Tirtagangga Hotelの温水プールと露天風呂
ティルタガンガホテルと読みます。当て字は難しいからなし。「チパナスうたせ大浴場」と勝手に命名しました。
このホテルは日本人の間でお湯がちゃんと熱いと評価されていたので泊まりました。ケチって一番安い部屋(税込64万ルピア、6000円弱)にしたため、バスタブなしです。
温泉プールの温度は38度くらいに感じました。露天風呂の方は40℃は軽くあり、41℃あるかもしれません。
露天風呂は水着を着ているだけの違いで、他は全く日本と同じです。打たせ湯もあり、ずらっと並んだところは、屋内と屋外の違いこそあれ、まさに筋湯温泉のうたせ大浴場(すいません。若干誇張気味です)。
露天風呂の湯口は噴水のようなところから出てくるので、情緒に欠けます。
内湯であれば、昭和レトロな温泉銭湯の湯口にありそうな感じです。
泉質は地縁願(チエンガン)温泉と同じ、口に含むと歯がギシギシする系です。
ここで泉質がわかりました。露天風呂の看板にマグネシウムという文字とSul-Fat(おそらくSulfate:硫酸イオン)という文字があり濃度が高いとありました。
マグネシウム硫酸塩泉(旧泉質名:正苦味泉)だったのです。
効能も書いてあり、リウマチ、発作、神経痛、骨折に効くようです。
濃度が知りたいですが、口に含んだ感じは結構濃いんじゃないかなとは思います。
プールは昼はガラガラで、やっぱり他のプールの倍(普通20,000ルピアなのにここは40,000ルピア)もするからなと思っていたら、夕方からむちゃくちゃ混み始めました。
すいてから入ろうと思い20時過ぎに行ったら、営業時間は終わりお湯を抜き始めていて清掃時間でした。仕方なく部屋で温泉シャワーを浴びました。
朝は5時くらいからお湯を貯めはじめ、6時営業開始です。
待ちきれない温泉好きのおじさんたちが、お湯がたまり切っていないプールの浅瀬でトド寝してます(トド寝:温泉用語で、浴槽のふちに頭をのせ、オーバーフローするお湯に体を浸しながら浴室の床でうたたねする様子)。
6時になり、プールの方は続々と宿泊している親子連れで賑わい始めますが、露天風呂の方は熱いので、利用者はわたしくらいですいています。
やっぱり入れたては新鮮でいいですね。一番風呂というやつです。
「うわっ熱いね:Wadu panas ya!」と言いながら入って来たおじさんはジャカルタから来た人で、高速が空いていれば3時間半で来れるからよく来るんだそうです。温泉好きですね。
オススメの温泉を教えてもらいました。すでにリストアップ済みのところです。
次に入ってきたおじさんはバンドンの人。ITBの留学生寮に住んでいるといったら通りの名前まで知っていて家ばれしました。このおじさんもかなりの温泉好きです。2人とも日本に行ったことはないと言ってました。
温泉につかりながら交友を深めるのは万国共通だなと実感しました。水着は来てますが裸の付き合いというやつです。
4.Pemadian Air Panas Kip CIKATEL(チカテル温泉)
チパナスに3軒ある最後の共同温泉です。近照温泉(わたしの考えた当て字です。別府明礬温泉の照湯から一字いただきました)。
他にも共同沐浴場を3つみましたが、公共にはしていないようです。
ここは混んでいたので入らず外観の写真だけになります。
内部の様子は湯口が3つで、一番狭いですが、綺麗に使われている印象です。皆さんお尻丸出しでしゃがみ込んでいらっしゃるんで、あまりジロジロ見るわけにもいかず、あくまでもチラ見程度です。
今回の3軒の共同浴場だけで結論づけるのは危険ですが、わたしが見出した特徴は以下の4点です
① モスクが併設されている。日本も温泉神社とセットの温泉や、寺湯がありますね。
② 町内会が自治運営している。野沢温泉の野沢組のようなものでしょうか。
③ 無人運営されており、善意でお金を払う仕組みになっている。無人とはいえ、キヨスクのような小さな売店はある(3つ中2つ)。
④ 全員素っ裸で入っている。服を着て入るというのは嘘だなと思いました。
"モスクと共同浴場の関係“とか”地域自治における温泉の位置づけ“とかインドネシア人が論文やジャーナルへの記事を書いているんじゃないかと探しましたが、英語ではまだ見つかっていません。
自分の地区の温泉にしか入らないんだろうなというのは、共同浴場の場所を聞いてもみんな知らないんです。数百メートルの距離ですよ。チカテルとかチエンガンとか地区名をいうと、あっちの方と教えてくれます。
3つともCi(チ)から始まるのはおそらく水に関係した地名なんでしょうね。バンドン近郊のCimahi(チマヒ)は、水がたくさんあるという意味だと聞いたことがあります。水を大量に必要とするポリエステルの織布工場、染色加工場がCimahiにたくさんあるのは、産業用水を求めてのことと思います。
■ 良さそうなホテル
1.Tirtagangga Hotel
わたしが泊まったホテルで、泉温が一番高いと日本人の間では言われているようです。
あと老舗ですね。1971年にホテルが完工してます。いつからこの温泉地があるのか、この温泉に限らずですが、歴史らしいものがどこにもなく、不明です。
ちゃんとしたホテルなのに安めなのがいいです。朝食のビュッフェはよかったです。15万ルピアは取ってもいいくらいのレベルです。
ウェルカムドリンクもついていたので、初日にプールサイドでアイスミルクコーヒーをいただきました。
温泉狙いならここがいいんじゃないでしょうか。
2.Kampung Alam Sumber
ここはインドネシア人の温泉通からCipanasでベストと勧められました。
昼ご飯をここで食べたついでに中の様子を見たら素晴らしいです。一泊80万ルピア+Tax/サービス料21%なのでざっくり100万ルピア(9000円くらい)ですね。2人分の料金で朝食も2人分つきます。
次はここにしてもいいなと思いました。
3.Sabuda Alam Glamping Villa
ここはもともと巨大なプール施設として有名な場所でしたが、1年前に始めたグランピングがあたり、大人気になってます。
インドネシアはグランピングブームが来ていて、火付け役はバンドン工科大学の学生がバンドンの南にあるCiwideyで始めたのがきっかけです。週末は1年先まで予約が埋まっています。10年近く鳴かず飛ばずで苦労してようやく花開いたという講演会のサマリーを大学ニュースで読みました。
グランピングビジネスに興味があったので、受付にいた賢そうな若者にいろいろ話を聞いて案内してもらいました。満室なので中は見れず、外だけです。わたしはキャンプ派でグランピング未経験ですので比較ができず残念ですが、見た感じ結構良さそうでした。
拡張工事中で、見たらロッジ風の建物を作っていました。グランピングじゃないの?と聞いたら、ちゃんとした建物で寝たいというニーズが結構あるかららしいです。
個人的には湖や池に面した建物の方が見栄えがするんじゃないかと思い聞いてみたら、インドネシア語がうまく通じなかったのか、反応がよくなかったです。
グランピングはどんな安い部屋でも1万円以上します。大人数で泊まってシェアすると一人当たり60万ルピア(5000円強)になるような設定にしているんだと思います。
■ 温泉街の地図
地図だとみんな同じ太さの道に見えますが、共同浴場へ行く道はかなりの細道です。
共同浴場は地域の方々によって運営されていますので、利用する場合は感謝の気持ちをもって、利用料を集金箱に入れてください。
寮に戻ってから知ったのですが、地縁願(チエンガン)温泉は地元民でない人は1回1万ルピア(90円くらい)払う決まりになっているらしいです。寮のマネージャーから「チエンガン行った?」と聞かれて話しているうちに分かったものです。
こんな身近に温泉好きがいたとは驚きです。まさか地縁願を知っているとは。
わたしは1回あたり1000ルピア(10円)入れて奮発したつもりでいました。お恥ずかしい限りです。
また、桶などはございませんので、ホテルの部屋のおけを借りてくることをお勧めします。
インドネシア方式で、大便をした後おけでお尻を流したい人のために、部屋のトイレに手桶が置いてあると思います。
それでは、また。