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一人では決して出来ない事も、誰かと一緒ならばリスト取りだって出来る。

タイ旅!
#7, ラプラーオ②

【前回までのあらすじ】バンコクで毎日屋台飯食べてます!

MRTラプラーオ駅から地下鉄に乗り込み、BTSで乗り換え、終点のバンワー駅までぶらり電車に揺られながら向かう。

今日は、タイ旅!の協力者の一人であるナベちゃんの家まで、打ち合わせに行くのだ。


ナベちゃんは、バンコクでフリーの翻訳業をしている友だちで、
バンコクだけでなく、フィリピンや台湾など、色々な国を旅しながら翻訳をして生計を立てている、いわゆる本物のノマド族だ。


また、ナベちゃんとは中学校時代からの親友なので、色々と相談もしやすい。


さて、今日はどんな事を打ち合わせようか。
期待に胸を膨らませながら、車窓に映るチャオプラヤー川の流れを眺める。


朝のポカポカとした日差しが車内にコントラストを作っている。
お客さんでいっぱいの朝の通勤電車も、終点のバンワー駅に着く頃にはガラガラだ。

電車を降り、人気のない改札口をウロウロしていると、向こうからナベちゃんがやって来た。


ほっそりとした顔立ちと、無造作に伸びた髪、人の良さそうな細長の瞳が特徴的なナベちゃん。
こんがり焼けた肌と、Tシャツ短パン、サンダルのラフな格好がタイ生活の長さを物語っている。


異国の地での友人との再会に、がっちりと握手を交わす。

ナベちゃんの住むマンションは、バンワー駅のすぐそばにある月1万4千バーツ(5万3千200円)の高層マンションで、
14階の見晴らしの良いベランダからは街が一望出来て、備え付けのプールやジムもある。

実に羨ましい暮らしである。


そんな素敵なマンションの一室で、早速、タイ旅!の打ち合わせを始めた。


左ナベちゃん、右まえだちゃん

「ナベちゃん、俺、タイで絵本出版して、子どもたちに絵本を配りたいんだけれども。どうすればいいかな」

「えっと、本(絵本)はもう出来てるの?」


「もう出来てる。タイ語に翻訳した絵本2作。
 これは出版社に持ち込んだり出来る」


「じゃあ、もう持ち込んだら?何か待つ意味あるの?」


 
「いや…、えっと、最初に持ち込み行くか。
 それとも、先に子どもたちに絵本を配って、
 実績作ってから持ち込み行くか考えてる。
 実績作ってからの方が、出版社に話しやすいかなと思って…」


「いや別に、
 子どもたちに絵本配ったから出版します。とはならないでしょ。
 出版するかしないかは、絵本のクオリティーの問題でしょ?
 それとも、絵本配りしたら絵本のクオリティー上がるの?」


↑持ち込み用に準備した絵本2作


沈着冷静なナベちゃんの指摘に、たじたじな私。



「えっと…、じゃあ、つまり、まず持ち込みに行くと…」

「同時進行でやればいいんじゃない?
 絵本配りと、出版社持ち込み」



「じゃあ、じゃあさ、絵本配りはどうよ?
 子どもたちに絵本を配るにはどうすればいいと思う?」


「いや…、これに関しては、出版とあまり関係ないというか…、ぶっちゃけ前田ちゃんの自己満足でしょ?」


なかなか痛い所を突いてくるナベちゃん。



「いや…あのね、絵本配りに関してはね…。
 例え出版が決まっても決まらなくても、
 子どもたちに絵本は配りたいなと…。

 子どもたちに絵本の読み聞かせしたり、絵本配ったりして…。

 

 …ええ、そうですよ!自己満足ですよ!


 所詮、僕ってすごいよね!っていうのをアピールしたいだけの
 自己満なんだけどさ!

 だけど、多少はさ…、
 良い事をしたよね。っていうのをタイで残したいじゃない!
 分かる?この気持ち?」



「笑、いや、分かるよ。
 まぁ、つまりは子どもを喜ばせる必要があるって事だよね」


「そうそう!子どもを喜ばせる必要がある!」

「じゃあ、まずは保育園とか幼稚園をホームページで調べてリストを作ったら良いんじゃない?」



「えっと…、出版社もリスト作る?」

「もちろん、出版社もリスト作り。
 だって皆に褒めて欲しいんでしょ?」



「褒めてほしい!出版決めて、子どもたちに絵本配って、
 前田ちゃんすげー。って言ってほしい!」

「笑、じゃあとにかくリスト作って、連絡しないとね。
 ただ、先方は皆タイ人だから、タイ語でメッセージ書かないとね」



「それは大丈夫!日本に居るタイ人の友達に書いてもらう!」

「よし、そしたらリスト作りと、連絡。
 とりあえず、これをひたすらやって行こう」




さすが長年の友、ナベちゃん。
打ち合わせ開始から十分足らずで、やる事が決まってしまった。

カオニャオマムアンをつつきながら、打ち合わせは続く。


「今日、はるばるナベちゃん家までやって来たのはね。
 かれこれ20年以上の付き合いとなるナベちゃんに、
 一生のお願いをしたいなと。
 つまりは、このタイ旅!を手伝って貰いたいな。
 という事なんだけれども」


「何を手伝って欲しいの?」



「いや…、分からない。
 ナベちゃん、どういった手伝い出来そう?」


「いや、俺も分からないよ!笑
 前田ちゃんの目的は、タイで出版する事と、絵本を配る事なんでしょ?
 俺は、タイ語喋れないし、ツテもコネも無いから。
 まぁ、せいぜい頑張れ!って言うぐらいしかないよ笑」



「ま、まぁそうだよね…。
 じゃあ、頑張れ!って言って貰おうかな笑」


「いや、だから、(前田ちゃんが)何して欲しいのか分からないから」



「…(出版社の)リストアップ、手伝って貰ったりとか出来る?
 面倒臭いかな?」

「いや、それは面倒臭いな笑
 大体、それ自分で出来るでしょ?
 リストアップ面倒臭いから、手伝ってくれない?って事?」



「ナベちゃん、一生のお願い!」

「笑」



そうして打ち合わせは無事に終わった。



「とにかく、すぐに行動した方がいい」
というナベちゃんのアドバイスを受けて、そのままリビングで、出版社のリスト取り(20社)と、幼稚園、保育園のリスト取り(58園)を終え、

日本にいるタイ人の友だちにもLINEで手伝って貰って、出版社に送る文章をタイ語に翻訳した。

今日一日だけでものすごい前進である。


一人では決して出来ない事も、誰かと一緒ならばリスト取りだって出来る。

そんな事を深く実感した。


タイにやって来て12日目。
未来はなかなか明るそうである。

 


→ラプラーオ③に続く



【タイ旅!】#8,ラプラーオ③はこちら!


【タイ旅!】#6,ラプラーオ①はこちら!



絵本作家まえだゆうきがタイで絵本を出版するまでの、100%リアルなドキュメンタリー紀行文。

タイ旅!
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