I LOVE♡日本の公園(テントで生活してみた)
【チベット・インド旅行記】
#3京都
「はぁ〜チベットね〜。そりゃまだまだ先だな〜。じゃあにいちゃん、この辺でいいかな?頑張ってね〜」
「はいっ!ありがとうございます!」
JR京都駅そばの大通り。
ヒッチハイクした車が去っていくのを、深々と頭を下げ見送った後、重いリュックをヨイショと背負い歩き出す。
「さてと、今夜の寝床を探すとするか」
日本国内で旅をする時は、大抵、街外れの公園にテントを張り、寝床とするのが便利だ。
着替えやら鍋やら、不要な物は全部テントにぶち込んで、軽装で街を散策する事も出来るし、水場もあるし、晴れていればテントから出て、芝生でそのまま寝るのも気持ちいい。
洗濯も歯磨きも行水も、全部公園の水道で出来るし、湯を沸かして食事も作れる。
素晴らしき日本の公園。
アイラブ、日本の公園。
今夜も、ロジャース2で買った2,000円の安物ガスコンロで湯を沸かし、スパゲティーを茹でる。
最近、市販のコーンポタージュスープの粉をパスタに絡めて食べると美味な事に気付いてしまい、ヘビロテ中。
夜は夜で、寝袋敷いて、CDプレイヤーのスピーカーから聴こえるフィッシュマンズのライブアルバム聴きながら、旅の行く末を想う。
やっぱり京都はいいな〜。何かいい事ありそうな気がするよな〜。
万が一、京都弁のお姉さんにピックアップされちゃったらどうしようかな〜。
えへへ。
きゃ〜!
全くもって脳内お花畑な、19の頃の私。
日中は日中で、特に観光に興味の無い私は、洗った洗濯物干しつつ、ギターの練習したり、曲作りしたり。
ギターに飽きたら、近くのブックオフで漫画の立ち読み。
「わはは、やっぱ、うすた恭介はおもしれーな〜。やべ!今日、ジャンプの日じゃん!帰りにコンビニも寄らなきゃ」
月曜日はジャンプとヤンマガとスピリッツ。水曜日はサンデーとマガジン。木曜日はヤンジャンとモーニング。
メジャー漫画誌は欠かさず立ち読みする。
もはや旅というより、旅という名の引きこもり。
それでも日が落ちて夕暮れが近づくと、いそいそと荷物をまとめて繁華街へと繰り出す。
夕暮れ時の丸太橋の路上は人通りが多い。
路上にギターケースを広げ、小銭を入れる。
スケッチブックには、デカデカとマジックで、
「ヒッチハイクで旅してます!」の文字。
貧乏旅行のせめてもの足しに、路上ライブで歌うべし、歌うべし。
通りを足早に通り過ぎる、サラリーマン。
学校帰りの女子高生。
若いにーちゃん。
「え?やば、ヒッチハイクだって〜」
「チベットって書いてあるよ〜」
「おにーさん、頑張って〜」
2度見して去っていく人、遠くで立ち止まって聴いている人。
チャリーンと小銭を入れてくれる人。
なかなか幸先は良さそうだ。
大してレパートリーは無いので、ブルーハーツ歌ったり、イースタンユース歌ったり、ゆらゆら帝国歌ったり。
いつも聴いてるJ -ROCKばかり歌う。
誰か俺の歌を聞いてくれ〜!
ていうか、そこの女の子聞いてくれ〜!
ちょっとちょっと、そこの大人な20代のお姉さん、俺の歌を聞いてくれ〜!
そして俺の事をピックアップしてくれ〜っ!
起き抜けに熱々のブラックコーヒーと、焼き立てのトーストをかじらせてくれ〜っ!
という淡い期待を、張りさけんばかりに歌に込めてみるものの。
大抵、時間を持て余したホームレスのおっちゃんが集まってきて、聴いてるんだか、聴いてないんだか、ウンウンずっと唸っていたり。
酔っ払いのおじちゃんが、
「お〜い、そこのニイちゃん!長渕やってくれ!永ちゃんでもいいぞ〜!」
と絡んできて。
「ちょっと俺にも貸してみろ!」と、剛田武ばりにギターをひったくり、あ〜お〜え〜と、ベロンベロンになってギターをかき鳴らす。
そんな姿を、なす術も無く見守ったり。
いつもそんなんばっか。
それでも、数時間も歌っていると、大抵1000〜3000円。
多い時は1万円近くの収入になるから侮れない。
今日は2000円ほど稼いだので、公園に戻ってご褒美のスイーツ買って食べる。
明日こそは、かわゆいお姉さんに出会いたいなぁ…。
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翌日、毎日毎日スパゲティーばかり茹でているのも飽きたので、学食食べに京都精華大学にこっそり潜入。
大学の学食は安くて美味い。
旅の裏技の一つである。
しれっと食券買って、並んで、ニラレバ定食大盛りガツガツ食べる。
やっぱ米はうめ〜な〜。と、至福のひと時を味わいながら周りを見渡すと。
どこもかしこも、学生、学生、学生。
心なしか、みんなキャピキャピ輝いて見える。
いいなぁ…、大学生。
キャンパスライフにサークル活動。
授業に行事に、彼氏に彼女、楽しんでるんだろうな〜。
自分も大学行っていれば、今頃2年生である。
なんだか急に、公園でテント張って、パンツ干している自分がみすぼらしく思えてきた。
毎日学校通って、授業に出ている皆と違って、ただフラフラしているだけの私…。
いかんいかん!と気持ちを切り替えて、夕方の路上に向かった。
今日は、少し歌って5000円ほど稼いだので、早々と撤収。
たまにはパーッと気分転換しようと、
京都丸太橋横にある、クラブMETROにライブを観に行く事にした。
プログラムを見ると、ラテンミュージックイベントとの事。
レゲエやらスカやら、ノリの良いバンドが入れ替わり立ち替わり演奏するのを聴きながら、テキーラ飲んでへべれけに踊る。
明け方、
空が白み始める頃、道端に大の字に寝転がって青息吐息の私。
「うぅ…頭痛い…」
「…というか、なんだか虚しい…」
どこに行っても、何をしていても、心のどこかが何か物足りない。
なぜか、一歩離れた所から景色を傍観しているような気持ちが、いつもどこかにある。
それが旅というものの宿命なのかもしれない。
結局、京都弁のお姉さんにも出会えなかったな…。
仕方がない、次の街に行くとするか…。
一路西へ、旅はつづく。
(つづく)
【少年の心は遥かチベットへ】
心に染み入る空想絵本。想像する事の大切さをギュッと詰め込みました。
絵本を読んで、一足先にチベットへいこう!!
【チベット・インド旅行記】#2長野編はこちら!
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