【極秘潜入ルポ】チベット最大の僧院ラルンガルゴンパ
チベット・インド旅行記
#12,ラルンガル・ゴンパ①
ルーフォーの町を出発し走る事数時間。
乗合バスは止まり、真っ赤な朱色の袈裟(けさ)を着た20人ぐらいの少年僧と、引率のおじさん僧侶がぞくぞくと乗り込んできた。
ガラガラだったバスは途端に一杯になる。
ブオーンと排気ガスを吐き出してトロトロと山道を登るバス。
同じモンゴロイド系のせいか、チベット人の顔立ちは日本人とそっくりだ。
高地焼けで真っ黒に日焼けした肌の少年たち。
これで野球のユニフォームでも着せたら、地元の草野球チームに見えなくもない。
和気あいあいとお喋りする少年僧侶たちを微笑ましく眺める。
すると、少年僧の一人が後部座席の私に気付いた。
見れば、でっかいリュックを背負って、ギターを抱えている怪しい旅人がでーんと後ろに座っているではないか。
声を掛けたいけれども、どうしていいか分からずに、ヒソヒソ話をしてはチラチラとこっちを見ている。
よーし、そういう事ならばと、期待にお応えするのが私。
ギターケースからギターを取り出し、じゃらんと弾いた。
ふゆ〜におぼ〜えた〜♫
う〜た〜をわ〜すれた〜♪
歌を聴いて緊張の壁が取れたのか、歓声をあげて少年僧たちが集まってきた。
「どこから来たの?」
「何してるの?」
「もっかい歌って」
などなど、口々に言っているのだろうが、残念ながらチベット語は分からない。
愛想笑いしながら「タシデレ〜(こんにちは)」「トゥジェチェ〜(ありがとう)」と返す。
それでも話を聞いていると、すぐそばに僧侶たちの僧院があるという事が分かってきた。
少年僧は「僕たちと一緒においでよ」と手招きしている。
せっかくだからと、お言葉に甘えることにした。
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丘の麓でバスは止まり、僧侶たちはぞくぞくと降りていく。
岩だらけの丘陵のずっと向こうを少年僧は指差した。
「あの丘の向こうだよ。ラルンガル・ゴンパっていうんだ。」
それから小1時間、急な斜面の丘を息を切らしながら歩いた。
列になって黙々と歩き続ける僧侶たちと、後を必死で付いていく私。
日が暮れていく。
あたりには町も村も何もない。真っ暗な荒野の丘を、ひたすらに登っていく。
一体いつまで歩けばいいんだい?と声かけようと思った矢先、少年僧が振り返って言った。
「この丘を越えたらゴンパ(寺)だよ、登っておいで!」
やっとの思いで丘の頂上へ立ち、あたりを見渡し息をのんだ。
眼下には何百、何千という数の僧坊が谷の合間を埋め尽くすように、びっしりと並んでいる。
おそらくガスも電気も通っていないのだろう。
見渡す限りの真っ暗な地平線の中、バターランプの明かりが、まるでホタルの灯りのようにぼんやりと谷全体を包み込んでいる。
夕餉(ゆうげ)の支度の煙が、何本も何本も糸のように立ち昇り、その遥か上の、満点の天の川銀河に吸い込まれていく。
この地球上で人が営んでいる。
そんな光景に心を奪われ、しばらく立ち尽くした。
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丘を下り、ラルンガルの集落に入った。
谷の斜面に、だんだん畑のように僧坊が並び、軒下には家畜のヤクが繋がれている。
土で出来た僧坊の壁には、おせんべいのように丸く伸ばしたヤクの糞が、ぺたんぺたんと貼り付けてある。
ヤクの糞は乾燥すると燃料になるのだ。
くねくねと細い道を通り、ひときわ大きな宿坊に案内された。
扉をギイと開けると、小さな土間にムシロが敷いてあるだけの質素な部屋がある。
今日はここで寝る事になるらしい。
寝袋を広げて横になっていると、トントンとドアをノックする音。
開けるとカタコトの英語を喋れる尼僧が、ヌードルの入った鍋を持ってきてくれた。
尼僧の名はフォアといい、ラルンガルにいる間、私のガイドをしてくれるらしい。
「明日は朝4時から読経と授業があるから参加するように。」と言い残してフォアは去っていった。
ありがとうと礼を言い、白湯で茹でただけの質素な麺を食べて、その日は眠りに落ちた。
ラルンガルゴンパ②へ続く
【チベット・インド旅行記】#11,ルーフォー 編はこちら!
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