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つくり手であること 05*納豆

好ききらいが分かれやすい食材、納豆。
結論からいうと、私は実母にまで「納豆で大きくなった」といわれる納豆人間で、今日は手づくり納豆について書きます。
もしも、目にすることもできないほど納豆が無理!という方は、今回のコラムをスキップしていただく方がいいかもしれません...苦手と感じるものを無理に摂るほど体にわるいことはないと思うのです。

ただもしもあなたが、今は苦手なんだけどでも納豆の魅力は理解したい..!と心の奥底に秘めているようでしたら、ぜひとも今日もお付き合いください。

またもしも、三度の飯にも納豆ドンと来い!というハードコアな納豆好きでしたら、読み終えた後にぜひ、納豆にまつわることを聞かせてもらえたら嬉しいです。

自家製、する?しない?

日本で暮らす限り、わりとどこでも手に入りやすい納豆。私も市販の納豆を買うことは多いです。大好きなメーカーに多めにオーダーして、冷凍しながら大事にいただいたりもしますし、出先などで初めて見かける銘柄があればバッグのスペースを考えることなく買ったりします。

プロの納豆を買うのと同じくらい自家製の納豆が好きな理由は、単純にとてもおいしいからで、もしも手づくりしたことない人がいたら1度はオススメしたいほど。それにこのコラムは「つくる」ことが軸となる企画ですので、今日は「手づくり納豆」をトピックとさせてください。

まずは基本的理解から

ご存知の方も多いと思いますが、大豆が納豆菌で発酵したものが納豆です。潔くて気持ちがいいほどにシンプルな食ですよね。

たまに「え、納豆ってつくれるの!?」と驚かれることがありますが、そういう人はもっと難しいものをつくっていたりするので面白いな、と思います。

ただシンプルなだけに、ちゃんと抑えることでちゃんとおいしい納豆に仕上がるポイント、みたいのがあるのも事実。私が思うに、納豆を手づくりする時のポイントは大きく3つです。

1.  大豆の準備
2. どこから納豆菌を取るか
3. 保温(発酵)

では、順番に説明していきましょう。

1.  大豆の準備

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【吸水】
少し前に「乾燥豆の扱いはハードルが高い」という意見を聞いたのですが、乾燥豆の便利さは慣れると感謝しかありません。ぜひ、興味あるかたは挑戦されてみてください。(たぶん、あまり難しく考えず、お米と同じようなもの、と思えばいいかも)

乾燥大豆をつかうときは、一晩ほど水に浸けてから使います。この時ちゃんと豆の芯まで吸水されることで火の通りが良くなり、柔らかくなった豆には納豆菌もまわりやすくなって、最終的においしい納豆になります。めんどくさ、と思ってもおいしい納豆のためです。しっかり吸水させてください。

【豆選び】
基本的には「好きな大豆を選んでOK」なのですが、やはりおいしい大豆でつくった納豆はおいしいことに間違いはありません。もしも値段が2つあったら少しくらい高い方を買ってもその価値はあるかな、と。

あと、一晩吸水することで乾燥の状態に比べて3倍のサイズに膨らみますので、一般的な丸大豆でつくると超大粒の納豆ができます。それはそれでめちゃくちゃおいしくて私は大好きなのですが、上の写真の右側ように納豆向きの小粒大豆を使えば、日頃から見慣れたサイズ感の納豆が仕上がります。

また、豆の種類も、丸大豆のほかに、黒豆、青大豆、赤っぽい紅大豆などを使うとカラフルな納豆に仕上がってかわいいです。
以前、表参道にあった「たまな食堂」というお店の定食についてくる色んなお豆の納豆小鉢が大好きだったので、私はいまだに自宅でオマージュしたりもしています。

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【火入れ】
十分に吸水した豆は、煮る、もしくは、蒸して柔らかくします。個人的には納豆の時は蒸す方が多いです(味噌なら煮ます)

2. どこから納豆菌を取るか

ふたつめのポイントは、火入れして柔らかくした豆には付着させる納豆菌をどこからもってくるか?です。

食品メーカーであれば専用の、培養された納豆菌を購入するわけですが、家庭用の場合それほどリソースを掛けなくてもいいかな、と思いますし、実際いろんな方法があります。
伝統的には、稲穂に多く付いている納豆菌を活かして、藁に豆を包んだりしますね。包むまでしなくても、保温時に藁を数本、豆と一緒に入れても十分、納豆ができます。

また、実は稲じゃなくても空中に存在している納豆菌が十分に働くため、あえて野草をつかって納豆にする人もいますね。

それから、食べ終わった市販の納豆のパックを再利用する、という人もいます。

わたしも実験は大好きなので、自分自身が満たされるまで一通りいろんなところの菌で試してみて、今は一番簡単に、好きな市販の納豆を数十粒使って納豆菌の培養液をつくる、ということをしています(理由は簡単で失敗がないから)

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やり方は、数十粒の納豆に大さじ1くらいの熱湯を掛けてぐるぐると10回くらいかき混ぜるだけ。さっきまでただのお湯だったものが、液状の納豆菌に変わります。使う時はこれ丸ごと使って大丈夫です。簡単。

3. 保温(発酵)手段

続いて最後、ポイントの3つめは発酵させる方法について。これも単純にいうと「45度くらいで24〜30時間」の保温ができれば、どんな方法でもOKです。

人によっては本格的な保温機をお持ちかもしれませんし、発泡スチロールの箱に湯たんぽを入れて保温する人や、電気毛布を活かす人、鍋ごと布団で包むという人もいますね。
あとは保温力の高い水筒やポットを使って、途中くらいまでお湯を張り、ジップロック袋に入れた煮豆を水面くらいまで入れ(中に沈まないように袋は輪ゴムなどで止めておく)半日に1回お湯を入れ替えながら保温するのもあり。
いずれも慣れてしまうと見事に温度管理ができる人はいて、すごいなぁと思います。

私個人はもう何年も、時間と温度を設定すれば放置できるヨーグルトメーカーを使っています(これも理由は簡単で失敗がないから)
普段ヨーグルトは生はちみつでつくってるので「もはやこれは事実上ヨーグルトメーカーじゃなくて納豆メーカーだな」と毎回ひとり言を言ってる気がします。

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上の写真は保温し終わった直後、全量にして650gほどの納豆が完成した図です。
私がつくるときはだいたい、1回でこのくらいの量を仕込んでいます(仕込み前の乾燥大豆で300g位)
市販の納豆だと、白いパックが1つ 40g前後なので、15〜16個分になります。ずっしりと重みのある仕上がりを見ると、たくさん食べれる!!嬉しい!!って元気になると思いますよ(納豆が好きな人限定ですけど、私は毎回アガります)

以上が自家製納豆のポイントでしたが、ポイントとはいえマストでもないし、わりと作り手に色んな自由があることが伝わりましたでしょうか。
どうぞ好きな豆や方法で、あなたらしい納豆づくりに挑戦してみください。

より細かく、各プロセスの写真などを乗せた作りかたは、以前、発酵食品を楽しむメディア haccola(ハッコラ)で紹介したこちらの記事をどうぞ。

また、おいしい大豆、小粒納豆、カラフルなミックスのお豆がどこで買えるの?という方にオススメなのは、こちらの豆専門店、べにや長谷川さんです。

発酵食について語り始めると長くなるので控えますが、煮たお豆はすぐにお腹が張ってそれほどたくさんは食べられないのに対して、発酵させた納豆なら食べやすくなるってお気付きでしたか?
それこそ納豆好きなら40〜60g(1〜2パック)くらい飲むように食べられる人も多いと思うのですが、煮豆だったら同量を食べるのはけっこう大変なのです。

ということは、消化にも優しいということです。
栄養や酵素ももちろんですが、大豆をしっかり食べて体の一部にできると、大地に足が着けられたような安定感が得られると思っています。

厳しい猛暑も納豆を取りながら、健やかに過ごしましょう。

Enjoy your natto-life!

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