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アダム・スミスの道徳感情論

原題は、The Theory of Moral Sentiments。難しい内容でした。その難しさは翻訳のせいではなく、読解力不足もありますが、「国富論」を読んでいないことが理由だと思いました。

アダム・スミスは「人間がまず隣人の、次に自分自身の行為や特徴を、自然に判断する際の原動力を分析するための論考」という副題を第4版以降追記しています。訳者曰く、「読者がアダムスミスが意図してようには必ずしも理解していないことに気づき、本来の「主題と方法」に読者の注目を喚起しようとした可能性がある。第4版が出版された年はほぼ「国富論」が完成されていたので、「道徳感情論」と「国富論」との間の違いや関連性を副題によって読者に知らせたいという気持ちになった、という可能性もある、とします。

本書は、以下の構成になっています。
第一部が「行為の適合性」
第二部が「功績と欠点について、すなわち、報酬と罰の対象について」
第三部が「我々自身の感情と行為に関する我々の判断の基礎、および義務感について」
第四部が「是認という感情に対して効用がもつ効果について」
第五部が「道徳的な是認や否認という感情に対する慣習や流行の影響について
第六部が「美徳の特徴について」
第七部が「道徳哲学の体系について」

全体を通じて「適合性」がキーワードになっており、訳者の後書きでは、人間は目にする他者の行為が共に生活する人間の行為として『適合的』であるか否か、周囲の人々の感情や気分を害さないかどうかを『自然に』判断する。
そこから「適合性」の基準を満たした社会的規範が確立され、適合的な行為が是認され、そうでない行為が否認される。
そして、一般的な行為の規則が確立し、どのような行為が美徳であり、どのような行為が悪徳になるかが、誰の目に明らかになる。
それが「正義の規則」の根本である。

当たり前のようなことですが、「国富論」が書かれた当時の世相を反映しているのではないかと思います。

「国富論」といえば「神の見えざる手」ですが、実際に読んだことがなく、キンドルで購入して読み始めました。「道徳感情論」の理解に役立てばと思っています。

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