フェルメール展 廃墟から復興したドレスデンを想う
上野の東京都美術館で開催されている「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」に行きました。今のウクライナ情勢から、収蔵作品がよくぞ第二次世界大戦のドレスデン爆撃から逃れることができたものだ、と作品鑑賞とは別のことに思い耽ってしまいました。
展示物についてはいろいろな方が記事にされていますので書きませんが、最近は海外旅行について出不精な気分になっていたものの、やっぱり海外のいろいろな美術館に行って、思う存分鑑賞したくなりました。
さて、ドレスデンはドイツのザクセン州の州都で町中をエルベ川が流れ、北のフィレンツェと言われた商業と芸術の都市でした。
そのドレスデンが第二次世界大戦で連合国軍に爆撃されたのは1945年の2月、3月のことです。この爆撃により市街の85%が破壊され多数の市民が犠牲になりました。
ドレスデンには2回行きましたが、歴史的建造物は当時のままに忠実に復元されています。ドイツの他の都市、例えば中世にタイムスリップした感じがするローテンブルクも戦争中に破壊され戦後に復元されていますが、どこの都市にいっても、よく復元できたものだと驚嘆してしまいます。
ドレスデン国立古典絵画館も破壊されましたが、収蔵品は事前に疎開されていたようです。いつ、どこに、どうやって作品群を避難させたのか、調べ切れていませんが、ヨーロッパの歴史は戦争の歴史であり、幾度の戦禍があったため、作品を後世に残すという矜持と英知があったのでしょう。
夏に行くと青空がエルベ川に映えり、水面も青色になり、歴史的な街が青色で挟まれた感じがします。
この付近も戦後に復元されたものです。
「君主の行列」です。ヨーロッパ最古の武芸競技場の外壁にマイセン焼きのタイルで施された作品で、幅102メートル、高さ10.5メートルあります。タイルには歴代のザクセンの君主や芸術家が描かれています。よくぞ戦禍から残ったものです。
マイセンに一泊してからドレスデンに入りましたので、あそこで制作したタイルなのか、と感嘆してしまいました。
煤けたような感じですが、爆撃後の瓦礫をそのまま使っている箇所もあるそうです。
歴史的建造物は中心部に固まっており、歩いて見るにはちょうど良い範囲にあります。
中心部からちょっと離れると現代の建築物と商業施設があります。
ヨーロッパの都市は戦禍による破壊から復元して美しさを取り戻していますが、各地に戦争の記念碑や墓地、博物館が身近なところにあり、ヨーロッパの永年の「戦いの歴史」を終わらせようという強い意思を感じていました。
そのためロシアがウクライナに本当に侵攻するとは思っていませんでしたが、ヨーロッパの人々の英知でウクライナ情勢を終息させてほしいものです。
ヨーロッパの指導者の戦争観はチャーチルの著書で分かります。