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2021年3月の記事一覧
掌編「my pillow」
「呼吸禁止」
枕にした腹がふわふわ動くのが気に入らないから、というようなことを篠宮は言った。
ついに片付け終えた部屋の隅で、二日前に入り込んだ桜の花びらが茶色くしなびていた。ベランダには昨日の雨が水溜まりで残っている。開け放した窓から入ってくる風は、まだ少し寒かった。
私は思いっきり息を吸い込んで、お腹を膨らませた。篠宮の頭がそれに合わせて、ゆっくりともたげる。彼女は横目で私を睨んでいた。
掌編 お題「鍵のかからない部屋」
その部屋は鍵がかからなかった。祖父だか曽祖父の代に鍵を亡くしたのが原因で、以来、その部屋はだれのものでもなく、物置にするにも頼りない奇妙な空間になっている。
私が子どもの頃、そこは私の遊び場だった。家族にとっても、大切なものの何も置いてないその場所は、こうるさいがきんちょを隔離しておくにはちょうどいい部屋だっただろう。大人たちは私がその部屋を使うのに、だれも文句を言わなかった。私は子ども部屋か