【BL二次小説(R18)】 恋する王子様⑨
『停まりなさい!スピード超過です!』
パトカーに追いかけられる二人。
「や、靖友……」
不安になり荒北にぎゅっと掴まる新開。
「へッ!オレが……」
ギャウン!!
「捕まるかよ!!」
ギャウウゥゥーーーン!!
荒北は更にスピードを上げた。
『停まり……逃げる気かゴラァ!』
怒るパトカー。
「靖友!」
「振り落とされんなよ新開ィ!」
ギャアアァーーーーン!!
みるみるパトカーを引き離していく。
『チクショーーっ!』
パトカーを完全に振り切る荒北。
「ギャハハハハ!」
「あははははは!」
ハヤブサは二人を乗せて闇の中へ消えて行った ──。
見知らぬ山の中腹に着き、バイクを降りる二人。
ヘルメットを草むらに脱ぎ捨てる。
「あーー!楽しかった!」
新開はまだ興奮している。
荒北は自販機でベプシを2本買って持ってきた。
「ここはどこだい?だいぶ遠くまで来ちゃったな」
ベプシを受け取り、飲みながら夜景を見下ろす新開。
眼下に太い川が横切っている。
川の向こうに街の明かりが灯っていた。
「国境だ」
「!!」
新開は驚いて荒北を振り返った。
「国境……!」
荒北は川の対岸を指差して説明する。
「その川を境にして、向こう側が隣国のビアンキ王国だ」
「隣国……ビアンキ王国……!」
新開は目を見開いて川の向こうを凝視した。
「ビアンキ王国は、このサーヴェロ王国と比べて遥かに小さい。だが、平和で素朴なとても良い国だ。人々も温厚で、まァ良い意味で田舎だ」
「……」
対岸から目を逸らさず、全身をブルブルと震わせる新開。
次第に瞳から涙がこぼれ、頬をつたう。
「国境……。国の果て……」
「そうだ」
「川の向こうに……隣国が……」
「ああ」
「隣国の……街の明かりが見えるよ靖友……。あそこに……人々が……確かに住んでいるんだね」
「ああ、そうだよ新開」
涙が滝のように溢れ落ちるが、それを拭おうともせず、隣国の明かりを目に焼き付けている新開。
「しっかり見ておけ。ここまでが限界だが、オメーが肉眼で見る事の出来る、外国だ」
荒北は手を伸ばし、新開の肩をそっと抱く。
「靖友……ありがとう靖友……」
新開は肩を震わせて泣いた。
「靖友……」
「ン?」
新開は荒北の方をゆっくり見遣ると、
頬に触れ、
唇にキスをした。
「!!」
ボトッ。
驚いて飲みかけのベプシのボトルを足元に落とす荒北。
「……靖友」
唇を離した新開は、自分も飲みかけのベプシを草むらに放った。
「し、新開……」
荒北は真っ赤になって目をパチクリさせている。
新開は荒北の頬を両手で包み込み、切なそうに何度も何度もチュッチュッと唇を軽く重ねる。
「ッ……」
動転し、頭が真っ白になっている荒北。
「靖友……。どうしよう。オレ……こんな気持ちになったの初めてだ……。おめさんにキスしたくてキスしたくてたまらない……」
新開はそう言うと、荒北の唇に激しく吸い付き、舌を挿入した。
「ン……!!」