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【BL二次小説(R18)】 恋する王子様⑬


数日後。



ギャウン!


夜中に新開をハヤブサに乗せ、荒北は城下町を走らせていた。



「今夜はどこへ連れてってくれるんだい?この前とは違う国境?」

新開はワクワクして尋ねる。


「今日は近場だ」

「近場?」



程なく、だだっ広い空き地へ着いた。


真ん中にポツンと小さな一軒家が建っている。

白い壁に、赤い屋根、赤い煙突。
白い柵に囲まれた、可愛らしい家だ。



バイクから降りた二人は、その家へ向かう。


「メルヘンな家だね。まさか靖友んち?」

「違げーよ。オレんちは普通のマンションだ」

「じゃあ誰んち?」

「……」


荒北は答えず、黙って玄関の鍵を開ける。


「ごめんくださーい……」


新開は恐る恐る挨拶をするが、荒北はずんずんと中へ入って行く。



リビングキッチンに、バスルームに、ベッドルームがひとつ。
家具も必要最低限な物しか置いていない。


「……なんだい?ここは」


部屋の中を見渡して尋ねる新開に、荒北は答えた。


「オレ達の家だ」


「……え?」

目を丸くして驚く新開。


荒北は顔を赤らめながら説明した。

「オメーがっ!毎回毎回学習室でズコバコしてくるからァ!落ち着かねェだろーがあんな場所でェ!だからァ!借りたンだヨ!この家をォ!」


「靖友……!」


「オレんち使うワケにゃいかねェかんな。誰に見られっかわからねェ。だからなるべく人目に付かねェ物件を……ムグッ!」


新開は荒北に抱き付いて唇を奪った。


「嬉しい!嬉しいよ靖友!オレ達の愛の巣だな!」

「愛の巣って言うとなンか淫靡だナ」


「じゃあ早速営もう!」

新開は興奮して荒北をその場に押し倒す。



「だからァ!なんでキッチンなのォ!ちゃんとベッドルームあるでしょオ!」



それから二人は週に2、3回程の頻度で夜に城を抜け出して愛の巣で過ごし、軽く仮眠をとった後、夜明けまでに城に帰る。
という生活リズムになった。

誰がいつ入ってくるかわからない学習室ではもう二度と営まないと決めた。





ある日。


新開兄弟が夕食をとっていると、給仕をしている執事が報告を始めた。


「隼人王子、悠人王子、今週末は公式行事が入りました」


「えー」
「走りに行きたかったのにー」

ブーイングする二人。


「隣国のビアンキ王国からマリア王女が初めて来訪されます。晩餐会も開かれます」


「ビアンキ王国……」


荒北に連れて行ってもらった国境の先にあった国だ。


「ふーん。マリア王女か。可愛いかな」

悠人が無邪気に反応する。


「おめさんはそればっかりだな悠人」

「隼人くんは興味湧かないの?」


「オレは……特に……」

新開は口ごもった。


「?」





そして週末。


予定通りビアンキ王国のマリア王女が訪れ、晩餐会も滞りなく終えた。



その後、新開は王の居室に呼ばれた。


「気疲れしただろう、隼人」


「ちょっとね。けど、このぐらい平気だよ父さん」


王族とはいえ、家族だけなら砕けた口調で会話する新開親子だ。



「どうだった?マリア王女は」


「え?……まぁ、おとなしくて可愛い素敵なお姫様だったよ。悠人がかなり気に入ってた。どストライクだってさ。ははっ」


「そうか……」

王はそれを聞いてソファに深く座り直した。


「隼人」

「なんだい?」



「マリア王女と結婚しろ」



「……え」




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