【BL二次小説(R18)】 恋する王子様⑦
約束の休日。
城門の外で待ち合わせた3人。
「靖友くん!初めまして!」
悠人が弾ける笑顔で挨拶する。
「初めまして、悠人王子。荒北靖友と申します。隼人王子の講師を務めさせて頂いております」
荒北は悠人の前にひざまずき、頭を下げた。
「違うよ靖友くん!立って!オレにもタメ口して!悠人って呼び捨てして!」
悠人は荒北の手を取って立ち上がらせながら言った。
「いや、それは……」
ためらう荒北。
「隼人くんから全部聞いたんだ!」
「しかし……」
荒北は新開をジロッと睨む。
新開はサッと目を逸らす。
悠人は両手を腰にあてて言った。
「これは、命令だよ!」
「!」
「プーーーーっ!」
吹き出す新開。
荒北はワナワナと震えながら、
「……この……クソ兄弟がァ!」
と吐き捨てた。
「クソ兄弟!!すげぇ!!」
「あーっはっはっはっはっ!」
大喜びする悠人。
手を叩いて大爆笑する新開。
「新開テメェ!オレをキワモノ扱いしやがって!」
「あはははははは!」
「うわーい!もっと言って!もっとなんか言って靖友くん!」
「芸人じゃねンだよ!!」
「あっははははは!」
「すげー!最高!靖友くん最高!」
賑やかな自己紹介を終え、3人は街外れの丘へロードで向かう。
「ねーねー靖友くん」
「ンだよ」
「彼女いる?」
「ませたこと聞いてンじゃねェ。居ねーよ」
「じゃあDT?」
ガシャーーン!!
荒北は派手にすっ転んだ。
「大丈夫か?靖友」
自転車を停めて手を差し伸べる新開。
「地雷だった?」
「っせ!ませガキ!」
パコッ!
悠人の頭をはたく荒北。
悠人は頭を押さえながら言った。
「……頭叩かれた!生まれて初めて頭叩かれた!」
感動している。
「痛かったか?悠人」
質問する新開。
「痛くなかった!隼人くん!叩かれたのに痛くなかった!すげー!」
悠人は興奮している。
「変なトコで感動しやがって」
ドッと疲れる荒北。
3人は再び走り出す。
「靖友くん」
「ア?」
「気にすることないよDTだからって」
「まだその話続いてンのォ!?」
泣けてくる荒北。
「そうだよ靖友。気にすんな。オレだってDTだ」
「オレも仲間だよ!気にしないで!」
「気にしてなかったのに!全然気にしてなかったのにィ!!」
ホントに涙が出てきた。
「まぁ、オレ達兄弟がDTなのは当然なんだけどね」
「エ?」
新開の言葉に驚く荒北。
「下手に火遊びでもしてどっかに子供なんか作っちまったら、後々王位継承権で揉めて大事だからな」
「結婚するまでキレイな身体なんだよ!」
「あっソウ……」
「オレももう結婚出来る歳だから!早く結婚したいな!オレの夢はね!可愛いお姫様と結婚することなんだ!」
「早くヤりてェだけじゃねェの?」
「それもある!」
「正直だナ。ホントませガキ」
荒北は呆れながら、新開の方を向いて尋ねた。
「新開、オメーの夢は?」
「オレ?……オレの夢は……」
そう言って新開は遠い目をした。
「隼人くんの夢は、叶わないんだ」
「エ?」
悠人が口を挟む。
「国の外へ出ることだからね」
「……あ」
先日、確かに新開はそう言っていた。
国の外へ出て本当の世界を見たい、と。
一般人なら好きな時に自由に行き来出来るのに、王子という身分のせいでそれが不可能なのだ。
「……」
寂しげな目をして苦笑している新開の横顔を、荒北はしばらく見つめていた ──。
丘へ着いた。
広がる草原。
高台から遠く街を見渡せる。
柔らかな風が頬を撫でる。
「なかなかイイ所じゃナァイ」
「でしょ?オレ達この丘が大好きなんだ!」
「……」
新開はまた地平線に見入り、一人の世界に入り込んでいる。
「……」
その姿を少し離れた所から眺める荒北。
「ね、靖友くん」
「ン?」
新開を見つめている荒北に悠人が声をかける。
「隼人くんって、カッコいいでしょ」
「エ」
ドキッとした。
「オレね、隼人くんが大好きなんだ。隼人くんが目標なんだよ。隼人くんみたいになりたいな」
「悠人……」
「隼人くんはね、すっごく優しいんだ。勉強するの嫌がってるけどね、ホントはすごく頭いいんだよ。好奇心旺盛でね、いつもいろんなこと考えてる。隼人くんが王様になったら、この国はもっともっと平和で豊かになるよ。隼人くんは誰よりもこの国を愛してる。国民みんなが幸せになれるよう常に考えてるんだ」
「……」
「オレ、隼人くんの力になりたいっていつも思ってるんだ。隼人くんが幸せになれるよう手助けしたいって。隼人くんに何でも協力したいって」
「……ああ。そうだナ」
「靖友くんも、隼人くんの力になってあげてくれる?」
澄んだ瞳で荒北を真っ直ぐ見る悠人。
荒北はその眼差しに応えるように、力強く言った。
「もちろんだ、悠人」
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