【BL二次小説(R18)】 恋する王子様⑯
翌朝。
新開は朝食の場に出て来ず、自室で寝込んでいる。
悠人が心配して様子を見に来た。
「隼人くん……。ちゃんと食べないと死んじゃうよ」
「うっ、うっ……」
新開は枕に顔を埋めてずっと泣いている。
「そんなにマリア王女が嫌なの?」
悠人の疑問に首を横に振る新開。
「彼女は何も悪くない。オレがただ、結婚したくないだけなんだ」
「どうして結婚がそんなに嫌なの?」
「……」
新開は答えない。
「何かオレに出来ること、ない?」
「何もないよ……ありがとう悠人……」
「……」
悠人は項垂れて、部屋を出て行く。
ドアを閉めようとした時。
「……靖友……」
「……!」
新開の呻きが微かに聞こえた。
廊下で立ち尽くす悠人。
まさか……隼人くん……靖友くんのことを……?
第二学習室。
悠人は早速荒北に言った。
「隼人くんきっと、靖友くんのこと、好きなんだ」
「!」
ギョッとする荒北。
「靖友くんはどうなの?隼人くんのこと、どう思ってるの?」
荒北にすがるように尋ねる悠人。
「……オレが新開をどう思っていようが、今回の件の解決に繋がるわけじゃねェ。普通のお見合いとはワケが違うんだ」
「そりゃそうだけど……」
悠人は荒北の腕を掴む。
「あんな辛そうな隼人くん見るの初めてなんだ。なんとかならないの?」
「……」
「何か……解決法は。隼人くんが結婚を回避出来る方法は無いのかな。そう、それこそ……プランB」
「!!」
悠人の発言にピクッと反応する荒北。
「うん、プランBだよ。以前靖友くんが授業で言ってた。何か別の、第二候補の解決策……」
「プランBなんかねェ!!」
「!」
荒北が突然叫んだ。
驚く悠人。
「本件は、新開とマリア王女が結婚する、その道しかねェんだ!それがベストなんだ!プランBは存在しねェ!プランBなんて、オレが絶対許さねェ!!」
悠人の手を振りほどいて大声をあげる荒北。
「靖友くん……?」
困惑する悠人。
「ハッ!」
我に返る荒北。
「……どういうこと?靖友くんは、何か知ってるの?」
悠人は怪訝な顔をする。
「い、いや……。ちょっと混乱しただけだ。……悪りィ」
「……」
「……昨夜、公園で待ってた」
学習室で新開が言う。
机に突っ伏したままグッタリしている。
「行かねェって言っただろオレ」
傍に立って新開を見下ろしながら言う荒北。
「今夜も……待ってる」
「待ってても無駄だ。もう行かねェ」
「来てくれるまで……毎晩待ってる……」
「……」
その晩。
裏の公園で荒北を待っている新開。
しかし、来てくれないのはわかっている。
ベンチに腰を降ろす。
「……」
溜め息をつき、力無く項垂れる新開。
もう、何をする気力も湧かない。
その時。
ギャウン!
「!!」
顔を上げると、目の前にハヤブサに跨がった荒北の姿があった ──。
ギシッ、ギシッ、ギシッ。
「靖友……!愛してる!愛してる!」
愛の巣で荒北を抱く新開。
「新開……もっと……あァもっとォ!」
ギシギシとベッドが壊れそうな勢いで二人は何度も何度も激しく求め合う。
互いに、逢瀬はもうこれが最後なのだと確信していた。
しかしそれは口に出さず、現実逃避するかのように身体を重ねた ──。
「……○○……」
「△△……」
「……ん?」
うとうととしていた新開は、話し声で目を覚ました。
窓の外で誰かが会話している。
まさか……!城の者が?
新開はベッドから飛び起きた。
部屋の中を見渡すが、荒北の姿はない。
ベッドから降りるとそっと窓辺へ近付き、聞き耳を立てる。
「……なんスかこのメルヘンな家。荒北さんらしくない。隠れ家ならもっと地味な……」
「うるせェほっとけ。それより、ここへは来るなと言っといただろ黒田」
……荒北の知り合いのようだ。
城の者でなくて新開はホッとした。
「だって荒北さん全然連絡寄越さないから。みんな心配してんスよ」
「余計なことすンな。オレぁ大丈夫だ」
「プランAが無理そうなら、早くプランB……隼人王子の暗殺に移行して下さい」
「……あァ、わかってる……」
……!!
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