【BL二次小説(R18)】 恋する王子様⑭
「いいなぁ隼人くん」
翌日、悠人の授業。
悠人は新開とマリア王女が結婚することを、早速荒北に話した。
まだ正式に婚約したわけではないので、この話は内輪しか知らない。
「……」
荒北は黙っている。
「バッチリ好みだったんだけどなー。オレと同い年だしー」
悠人は悔しそうだ。
「でもまぁ仕方ないか。相手が隼人くんなら諦めるよ。オレはまた別のお姫様を紹介してもらおっと」
「新開は……どうしてる?」
荒北が尋ねる。
「それがさ、今朝、食欲無いって。あの食いしん坊な隼人くんが!どうしちゃったんだろ。マリッジブルーってやつ?」
「……」
その後、新開との授業の時間。
「……死人みてェなツラだな」
真っ青な顔をしている新開に荒北は言った。
「靖友……」
思い詰めた表情で目が泳いでいる新開。
「いい縁談だと思うぜ。ビアンキ王国は友好国だ。姉妹国となり同盟を結んで領土も広がる。このサーヴェロ王国はさらに大国となる」
「……本気で言ってるのか?」
「マリア王女は美しくしとやかで国民からも愛されている。何が不満だ」
ガタッ!
新開は椅子から立ち上がって叫んだ。
「何が不満かだって?ああ不満だらけだよ!わからないのかい?靖友!オレは!おめさんを愛してるんだ!」
グッ!
「!」
荒北は新開の胸ぐらを掴んだ。
「オメーは王子だ。個人の意見なんか通らねェんだよ。これは、国と国との結婚だ。第一王子として重要な仕事なんだ」
「政略結婚に使われるなんてごめんだ!」
「王子として生まれた瞬間から、オメーに個なんて存在しねェんだよ!」
「そんな馬鹿な話があるか!」
新開は荒北の手を振りほどいて声を荒らげる。
「我が儘言うんじゃねェ。不本意なのはマリア王女だって同じだ」
「……!」
「彼女だって誰か好きな人がいるかもしれねェ。だが、自国のために身売りするんだ。小国の姫サンが大国に嫁ぐ。大昔から世界中で行われている、小国が生き残る手段だ。オメーよりずっと辛い立場だぜ」
「靖友……なんで……」
新開は、信じられないという表情で荒北を見る。
「なんで……そんな他人事なんだ……。おめさんは、ショックじゃないのか?」
荒北は冷静な口調で答える。
「オメーは王子。オレぁ一般人。しかも、野郎同士。最初っからハッピーエンドなんてあり得ねェって解ってることだろ」
「靖友……。だけど、オレはおめさんに惚れてんだ。初めて好きになった相手なんだ」
「初恋が実らねェのはこの世の常だぜ」
「今後、おめさん以外の人を好きになるなんてあり得ない。おめさん以外愛せないよ!」
「じゃあ……。結婚した後、オレを愛人にすればいい」
「!」
新開は青冷める。
「愛人なんて……。おめさんにそんな……残酷なこと……させられるわけないだろ」
それを聞いて、荒北は悲しそうに笑った。
「……オメーからそのセリフが聞けただけで、オレぁ充分幸せだ……」
荒北は学習室の扉に手を掛ける。
「靖友!」
「ちょっと早いが今日の講義は終わりだ。また明日ナ」
パタン。
荒北は出て行った。
「……クッソ!!」
バサバサッ!
城門の花壇の花を蹴り上げて散らす荒北。
目撃した門番がビックリしているが、荒北は構わず足を踏み鳴らしながら城門を後にした ──。