三日坊主日記 vol.215 『「恋する梅干し(仮題)」のこと』
過日、無添加調味料を研究している知人のことを書いた。
その延長として今度は梅干しの話を聞かせて貰った。ほんの少しだけだけど。そして、塩だけで漬けた酸っぱい梅干しを、久しぶりに食べさせて貰った。
僕だけではなく昭和の人間の多くがそうだと思うが、梅干しはおばあちゃんが家で漬けていた。そして、顔を歪めないととても食べられないほど酸っぱい食べものだった。梅の実に含まれるクエン酸の成分が酸っぱさの素なんだけど、そのクエン酸が抗酸化や疲労回復などに効果があるらしい。
子供の頃はその酸っぱさ故にあまり好きな食べ物ではなかったし、なんなら何かの罰ゲームのような気分で食べさせられていたようなところがある。ただ、お弁当のご飯の上には必ずと言っていいほど入っていたその梅干しを最後に食べた時、酸っぱさと同時にあと口の良さを子供ながらに感じていたような気もする。嫌な酸っぱさでは決してなかったのだ。
もう随分前から、その酸っぱい梅干しが売り場で見当たらない。百貨店の食品売り場などに行くとさまざまな梅干しを取り扱っているが、みな食べ易かったり、デザートのように甘かったりする。いくら酸っぱそうなものを選んでも、全然酸っぱくない。妻は、酸っぱくない方がいいと言ってスーパーで普通に買ってくるが、僕はそれが不味くて(気持ち悪くて)食べることができない。
年に一度行くか行かないかではあるが、和歌山方面に用がある時に道の駅へ寄ると、酸っぱい梅干しに出会うことがある。生産者の顔が見える、おばあちゃんの梅干し。パッケージを裏返して成分表示を見ると、ただひとつ「塩」とだけ書いてあって潔い。これが本来の梅干し。古から受け継がれる日本の文化であり、健康食品なのだ。
試しに、お宅の冷蔵庫にある梅干しのパッケージを裏返して成分表示を見て欲しい。あれこれとたくさん書いてあるその成分は、本当に必要なものなんだろうか。もしかしたら、クエン酸の酸っぱさを消すために入れたもので、クエン酸の酸っぱさと同時に消してしまった抗酸化作用を補うために入れた、防腐剤だったりしないのだろうか。
僕は、改めて、本気で酸っぱい梅干しを毎日食べたいと思った。そして、僕がなぜそう思うのか。なぜスーパーで売ってる梅干しを不味く感じたり、気持ち悪く感じたりするのかを知りたいと思った。という訳で、これから梅干しの勉強を始めることにする。その結果として一年、あるいはそれ以上掛かってしまうのかも知れないが、梅干しを主役にした短編映画を作れないかと考えている。今はまだ完全に自分ひとりで作る自主制作だけど、既になんだか少しワクワクしている。
まずは、お盆の頃にもう一度無添加調味料の研究をしている知人に会って詳しい話を聞く予定。僕はこのプロジェクトに『恋する梅干し』という仮題をつけることにした。