三日坊主日記 vol.91 『ガラス工芸作家 西中千人』
西中千人さんというガラス造形作家がいる。
京都高島屋で個展を開催中で、今日は在廊しているというので会いに行ってきた。
自ら作ったガラス器を叩き壊し、その破片をガラスで再び繋ぐ「ガラスの呼継」という作品を作っている。これは金継や呼継の技法をガラスに応用したもので、彼のユニークなチャレンジだ。
更には、リサイクルガラス瓶を使ったオブジェを日本古来の庭園に配し、ガラスの枯山水を作った「つながる」など、命の煌めきや再生をテーマにして、精力的に作品を作っている。
この人と出会ったのは2019年。京都鹿ヶ谷にある法然院の参道に前述のガラスの枯山水を作るので、そのコンセプトムービーを作って欲しいというものだった。海外の人に日本の心と西中千人の作品を伝えたい。というオーダーだったので、ナレーションは入れないということだけを最初に決めてスタートした覚えがある。
思いはとても強い人なんだけどなかなかそれを言葉にすることができないようで、最初は何を求めているのか分かりづらかった。無理もない。思いをガラスで伝えるのがこの人のアート。言葉でうまく伝えられるなら詩人か小説家になっているんだろう。
非常に抽象的で熱い思いから、少しづつ少しづつ上澄みを掬って映像の言葉に置き換えていく作業。普段なかなかこういう仕事の進め方をしないので、最初はちょっと戸惑ったが、彼の発するヒントから少しづつ朧げな輪郭を掴んでいく作業はなかなか楽しいものだった。
完成した作品を西中さんは大変気に入ってくれて、世界中のいろんなところで使用してくれている。発注者に喜んで貰えることほど嬉しいものはない。今回の個展会場でもその映像が流れていた。
この映像作品は、ドイツで毎年開催されるWorldMediaFestivals Hamburg 2020で[GOLD Award]を受賞するというおまけまでついた。彼は授賞式に行く気満々だったが、コロナ禍で中止になってとても残念がっていた。
久しぶりに会った西中千人は、相変わらずユニークでチャーミングな人だった。また一緒に作品を作って、今度こそ授賞式に参加できるといいな。
それにしても京都は観光客でごった返している。中心部は何処もかしこもまるで満員電車のようだ。