ビジネス資料頻出グラフ4選と”伝わるグラフ”に欠かせない3要素
グラフ作成にはデザイン的センスが必要だと思う方もいらっしゃるかもしれません。「私はセンスがないから…」という声も聞こえてきそうですが、基本的なルールさえおさえておけば、見違えるほど見やすいグラフ資料を作成することができます。そもそも、見やすいグラフとは、「読み手に伝わるグラフ」である、ということです。
マクロミルのデータ可視化の専門チームによる当連載の第2話では、ビジネス資料で良く使われる基本的なグラフの解説と、「読み手に伝わるグラフ」に欠かせないポイントついてご紹介していきます。
ビジネス資料でよく使われるグラフ4選
「グラフ」とネット検索すると、棒グラフ、折れ線グラフ、帯グラフ…と、様々な種類がヒットすると思います。どれを使うべきか…と、迷ったことがある人もいるのではないでしょうか。グラフは用途に応じた使い分けが必要で、グラフごとに用途や使うシーン、特長が異なります。
そこで今回は、ビジネス資料でよく使われる、代表的な4つのグラフをメインにご紹介します。下記の図の通り、よく登場するのが、棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、帯グラフの4種類です。
では、この4つのグラフについて詳しく見ていきましょう。
1.棒グラフとは?
棒グラフは、値の大・小を表現するのに適したグラフです。縦棒グラフの場合は「高さ」、横棒グラフの場合は「長さ」を比べることで、項目毎の値の大・小を視覚的につかむことができます。
また、下図のようにスコアの大きな項目から順に並び変えると、項目のランキングとして見せることができます。ただし、意味のある順番で並んでいる連続性のあるデータ(例えば、2020年・2021年・2022年といった時系列推移など)を並び変えてしまうと、逆にメッセージが伝わり難いグラフになってしまうため、内容によって並び変えをするかしないか判断すると良いでしょう。
縦棒グラフと横棒グラフ、違いはあるの?
結論、いずれも同じ棒グラフです。
しかし、作成する資料のレイアウトによって使い分けると便利です。以下を参考に縦棒・横棒のどちらが良いかを検討してみてください。また、縦棒グラフは縦長のグラフに、横棒グラフは横長のグラフに作成すると、大小の差が強調できるため、メリハリのあるグラフ資料を作成できます。
横棒グラフ
項目の文字量が多い場合に収まりが良くなります。
縦棒グラフ
レイアウトに合わせて、項目の文字の向きを横書き/縦書きにすることで、収まりが良くなります。
2.折れ線グラフとは?
折れ線グラフは、「連続性のあるデータ」の可視化に適したグラフです。二点を結んだ線の傾きから、視覚的に変化をつかむことができます。連続性のあるデータとは、例えば「時系列での売上推移」や「若年層からシニア層にかけた各年代ごとの消費量」など、横軸方向に変化を読み取るケースを指します。
折れ線グラフが力を発揮するシーンは、こちらの2つのシーンです。
(1)複数の項目を比較
推移や項目間(折れ線同士)の差を見たい時は、縦棒グラフよりも折れ線グラフが適しています。
(2)長期間のデータを時系列比較
長期間にわたるデータ(為替レートなど)は縦棒グラフでも表現できますが、棒の本数が多いため、レイアウトによってはグラフ1本1本が細くなってしまい読み取りにくいことがあります。そのため、傾きからデータを読み取ることができる折れ線グラフの方が適しています。
とは言っても、商品の売上推移などが縦棒グラフで表現されているのを、テレビCMや広告などで見かけたことがある人も多いと思います。折れ線グラフではなく、縦棒グラフで表現した作成者の意図は、おそらく見た目のインパクトや、比較する年数が少ないために縦棒グラフでも十分に表現できるだろう、といったことだと思います。
このように、どちらのグラフを使うべきかといった正解はありません。どちらがより読み手に伝わりやすいか、理解してもらいやすいか、という視点で選択すると良いと思います。
3.円グラフとは?
円グラフは、円を100%とし、各要素の構成比(内訳)を見ることができるグラフです。見た目がシンプルで分かりやすいですが、項目数が多くなると全体に占める割合が分かりにくくなってしまうことがあり、その場合は別の種類のグラフに変更することをオススメします。
また、円グラフを使う場合には、以下の2つの注意点があります。
4.帯グラフとは?
帯グラフは、100%積み上げグラフとも言い、帯全体を100%として各項目の構成比(内訳)を長方形の面積で示したグラフです。用途は円グラフと同じですが、複数のグラフを並べて比較する場合に適しています。
ただし、円グラフと同様に、項目数が多いと視認性が低下してしまいます。そういった場合は、比較的重要度の低い(スコアが小さい等)項目同士を足し上げて、全体の項目数を減らすといった工夫ができます。そのグラフの中で伝えたい項目が埋もれずに、強調すべきデータを視覚的に見やすくすることができます。
5. その他のグラフ
(1)積み上げ棒グラフ
一見帯グラフに見えますが、スコアの合計が100%ではありません。「棒グラフの親戚」というイメージが分かりやすいかもしれません。
下図のある商品の販売数の推移を例に解説します。
左図は販売数の全体値のみが示されています。一方、右図は、全体値とその内訳を表現しており、販売数の伸長をけん引している商品は何か?などの情報を視覚的に読み取ることができます。これを積み上げ棒グラフを言います。
(2)数表
グラフは、データを分かりやすく可視化する表現方法ですが、膨大なデータを1つのグラフに収めようとすると、逆に伝えたいことが上手く伝わらなくなってしまうケースがあります。その場合、「数表」という手法を使って、着目したいデータに色付けをするなどで、グラフよりも分かりやすく表現できる場合があります。
7つのブランドイメージを下記グラフで解説します。
上の図は、縦棒の数が多く、ブランドとイメージ項目を照らし合わせながら結果を読み解くのが大変だと思います。
同じデータを数表で表現したものが下の図です。各イメージ項目にあてはまるブランドを1~3位で色付けしており、視覚的に読み解きやすいのではないかと思います。
「読み手に伝わるグラフ」に欠かせない3つの要素
読み手に伝わるグラフを作る上で、絶対に忘れてはいけない3つの要素があります。
1.単位
グラフの値が、割合(%)なのか人数なのか、単位を明記します。単位がないと、ミスリードにつながる原因になるので要注意!
2.凡例(はんれい)
グラフの項目が2つ以上ある場合は、何色の棒・線が、それぞれ何を示しているのか、凡例を明記します。数表の場合も同じで、どのような基準で色分けをしているのか、読み手が理解できるようにします。
3.サンプルサイズ
何人のデータをグラフ化しているのか等、サンプルサイズ(標本の数)を明記する必要があります。理由は、サンプルサイズが小さすぎる場合、大きな誤差が生じるため(※以下に詳しく解説しています)、しっかりと十分なサンプルサイズであることを明記します。
せっかくキレイで見やすいグラフや数表を作成しても、読み手が正しくデータを読み解けなければ台無しになってしまいます。グラフ資料を作成した後に、各グラフがもつ特徴をおさえ、目的に適したグラフ種類を選択できているか、グラフに欠かせない3要素が抜けていないか、読み手がミスリードしそうな内容、解釈できない内容になっていないか、改めて読み手の視点になって読み返してみましょう。
次回は、読み手に伝わるグラフを作成するに当たっての、ちょっとした工夫やポイントを解説します。次回もぜひご覧ください!