ON THE ROAD
ジャック・ケルアック(1922-69)が書いた
その代表作「路上(ON THE ROAD)」に
「スクロール版」があるという
スクロールってナニ?
パソコンの画面で
マウスをクルクル スクロールするっていうのは知ってる
でも
ケルアックの時代にパソコンはない
辞書をひいた
スクロール=巻き物の意だという
ケルアックは
タイプライターにはさむ用紙を
1枚ずつではなく
テープではりつけて
巻き物状態にし
それにタイプで文字を打ち込んだという
なるほど
長いながい紙に
湧きあがる 言葉
それを書き記すのが追いつかないくらい
次々に出てきて
1枚ずつ 紙を替える暇もない
だから 長いながい巻紙にして
タイプライターにはさみ
思いつくままの言葉を延々と打ち続けた
そこには湧きあがる感情のスピードに
気持ちを文字に 言語化するのが追いつかなかったのだろう
ぼくも そんなことができるだろうか――
………………………
ラーメン屋に入った
東京・飯田橋
駅前の ラーメン屋
店ののれんには
「中華そば」とある
はい 前は支那そばなどといった
今は ラーメン屋である
ここには 20年以上前に来たろうか
久々に見かけ 今もあるんだ――と
入ってみた
今もあるということは
客が入り続ける
名店 なんだろう きっと
狭いせまい店である
カウンターだけ
8席ほど
昼過ぎ 午後12時12分に入った
幸い 列はなく すぐに座れた
無言の店主がひとり
その母親だろうか
老いた女がひとり
女がいう
「荷物はカウンター下に」
「他のお客さんの邪魔になるから上着はかけてください」
「あ 写真は他のお客さん写らないようにね」
などと いう
ごもっとも ごもっとも
ただ 言い方がロボットのようで
感情がこもっていない
無言で亭主はラーメンを作る
よくよく見ると
女は 亭主の母親というほどの年齢ではなく
ひょっとして 夫婦――か
そう考えるほうが自然
60半ばはそれぞれ超えている印象
ワンタン入りラーメン
1100円――
うまいです おいしいです
たぶん20年ぶりくらいで食べたと思う
店には15分もいたか いなかったか
この価格は本来 「高い」と言いたいけれど
今の時代 この価格でこの味 都心立地――
そうそう ないだろう
行ったことない 食べたことない人には
一度行くことをすすめたい
だが しかし
ホール担当(店狭すぎ…)のおばはんは
いただけない――かな
でも それを上回るラーメンの人気が
彼女をぞんざいにさせるのか…
これはきょうのできごと
きょうの昼 ランチの話――
そんなこと
ラーメン好きな人間以外は
何の関心も持たないだろう
ラーメン屋の名前は?
そんなの 飯田橋 ワンタンメンで検索してみろ
一発でわかるよ
……………
ウスバカゲロウ
漢字で書くと
薄羽蜉蝣――なんだとか
薄らバカのカゲロウだとばかり思っていたが
幼虫はアリジゴクなのである
わかるか アリジゴク
自分は 子供のころに見たことがあるぞ
すり鉢状の アリジゴクの巣
そこに虫が落ちると
下に待っているのが アリジゴクという虫
細かな 白い粉のような砂
そこに落ちてゆく虫
底で待つアリジゴク
血? 体液を吸って ポイッである
そんなの 何かの映像で見たのだろうか
幼いころ どこかの家の軒下 アリジゴクの巣
そのものを見たことは確か――
記憶は リアルな記憶と
見たり 聞いたり
よそから与えられたものが自分の実際のものと
混じり合い 置き換わることも多々あり――
だが
本当のことなど わからないのだ
本当のことなど わからないのだ
本当のことなど わからないのだ
本当のことなど わからないのだ
本当のことなど わからないのだ
本当のことなど わからないのだ
本当のことなど わからないのだ
本当のことなど わからないのだ
この目で 見たのか 見なかったのか
そんなことは わからない
記憶なんて みんなそうだ
本当に見たのか 聞いたのか
触れたのか 触れられたのか
食べたのか 食べられたのか
臭ったのか 臭いをかいだのか――
痛いのか 痛みを与えたのか
痛みは 痛みを与えるのは
相手を傷つけたのか
それは ぼくが意図したことなのか
………………………
「人が嫌がることはしてはいけません!」
ピシャリと 新宿駅西口の京王デパートの前で
ぼくに言った女がいたっけ――
嫌がることを そのとき ぼくはしたのだろう
確かにしているのです
…お尻を触ったかな 手を握ったかな――
やせた女だったから おっぱいではない
ああ 腰に手を回したかな
その先に期待したのだろうな
あさはか――だったね
………………………
東京で暮らすのは大変だよ
もちろん カネさえあれば
さほどの苦労もないだろうけど
戸建てだろうが マンションだろうが
駅近の好立地になんて
普通は … 無理だろ 住むのは
バブルのころ もう30年ほども前?
そのころが
正確にいつだったかも
ぼくは忘れてしまっている
都内に戸建てはもちろん
マンションすら買うのは
ムリだと思っていた
それが
前世紀末から今世紀初めにかけての
数年間は
可能になるときが 実際にあったのだ
高給取りや
DINKS・ディンクス(死語)や
今の言葉でいえば
パワーカップルでなくとも
それができた時代が 少し続いた
たまたま そのはざまにいたので
駅近のマンションを手に入れた
もう20年以上たつのに 少し残債はある…
自分はラッキーだった
そう 正直に思う――
マンションでなければ
20坪に満たない狭小住宅
駐車スペースもありやなしや…
なんていう物件でも 悪くはなかったけれど
東京23区――
都心3区――千代田中央港
さらに
文京新宿澁谷 以上都心6区
加えての 目黒品川豊島台東荒川中野杉並
――あたりまでは厳しいかな
それらを除いた東京23区に
やっとこさっとこ
住んでいる人びと その中のひとり ぼくという人間
そんなところの狭小住宅(戸建て)に住んだ日には
たとえ 車をとめられたりして
窓を開ければすぐお隣――
息がつまりそうな…住環境 それが東京
幸い 車も持たず
駅近 しかも始発駅というアドバンテージありの
マンションライフ――
今世紀初めから ああもう22年…
気づけば
還暦をとっくにすぎ
再雇用嘱託も 契約満了雇い止め
今は 無職無給の日々が淡々とすぎ――
夢の中で
「東京に住む」「東京で家を持つ」
そのことの 思いが反芻される
仕方ないよね
田舎者が 東京に出てきて
家を構えることの 難しさ――
わかる人にはわかればよいことさ
………………………
ぼくの姉は 美しい人で
写真家であった――
織作峰子 ご存じだろうか
そんな感じ
美しい姉 いいね
やさしい姉 いいね
甘えさせてくれる姉 いいね
姉は ぼくにとって
もうひとりの 母親
そんなことは言ったことはない
でも 心の中でそう思っている
夢の中の姉は そのとおりで
織作峰子似の美人の写真家――
そんなことは現実を超えた話でしかないけれど
ぼくの息子が 写真学校に行き
今通う学校を辞めてそちらに行きたい
などと 言い出した
写真学校に行くと
卒業までに 5千万円かかるという
まさか まさか
私立の医学部でも そこまでかかるまい
ああ 夢の話だから ご勘弁
母親(ぼくの妻)も承知している話だと
息子は説明する
え ほんとか ほんとか
せっかく ちゃんとした大学
国立の工学部に入ったんじゃなかったか――
いや そこには
やりたいことがないのだ
と 息子はいう――
みなさん 世の中のお父さん お母さん
それって 受け入れられますか
子がやりたい――
そう言うならば
かなえてやりたい――おかゆをすすっても…
そう思うのは親心
同感ではあります
でも せっかく入っている国立大学を辞め
写真学校に行くか!? あり得ない!
ま 夢の中の話だ
息子は母親に話して理解もしてもらった
なーんていうもんだから
ぼくは反対できない
5千万円―― 現実にそこまでかかるわけがない――
その金 母親の実家が出してくれる…なんていう
ぼくは ひたすら無言 言い返すこともなく
受容するのである
…………………
長いながいサラリーマン生活を送ったよ
大学を出て働いた1年
転職してからの37年弱
合わせれば38年――
立派じゃないの
最初の勤め(銀行)はともかく
次の――
やりたかったマスコミ――新聞社
そこでそんなに長く働いたんだもん
立派 ごりっぱ
二親亡きあと 姉は
「長続きしないあんたがよく勤めきった」
と ほめてくれたじゃないか――
…………………
働くっていうのは
ひとつの修行
スキルを身に着けるだけでない
修業ではないのよ
修行というのは
そこに精神性のアウフヘーベンが必要なのよ
どんな人 どんな仕事でも
修行とあれば もう一段階上の何かがある
…………………
もう5カ月近く 勤めに出ていない
ぼくは しばらく修行してない
見てごらん 世の中には
電車の中だよ 朝の――
みんな修行してるよ
幼い子 生まれて何カ月っていう子を抱え
三十路のママたち
昔の感覚なら もう若くはない
彼女らが 子を抱っこし 電車に乗る
保育園に預けるため 電車に乗り
その後 働きに出ている たぶん――
これって修行以外のなにものでもないんじゃない?
そう思うの ぼくだけ?
今 21世紀の日本で
子育てとフルタイムの仕事
そのうえ たぶん帰宅後も家事をする
それ以上の 修行ってあるかね?
彼女たちに 高僧も及びはしない
……………………
ぼくは
詩を書くという
ヒマつぶしをやっている
暇つぶしは悪いことかな
才能がなく それが芽をふくこともなく
正直
やめたくもなる
だがしかし
生きている間は
全力投球なんてしない!
それが ぼくのモットー
生きていて 呼吸していて
外に出て ものを考え
それを書き記し続ける
それは 残りの人生の暇つぶし
書くのをやめたら
あかん 書くのを――
……………………
ペットボトルの底に
ひとしずくの コーヒーが残る
フタをひねり
そのひとしずくを 口に入れてみる
確かに コーヒーである
渇きをいやすわけはなく
ほんの一滴が 口腔に入る
その感覚を確かめたい…だけ
そんなことを何度もなんども繰り返している
ひとしずくを 残さず
飲もうとせよ
それが 生きている証明
…………………………………………
DXだとか GXだとか
何を言っているの あなたは――
ほんの数年前まで
誰も口にしなかったような
言葉ことばことばことば
こ・と・ば
デジタルですよ ITですよ
わかりますか?
ITはInformation Technology =情報技術のことですよ
わかってる?
DX GX――調べておいてください
IT関連 コンピューター関連の言葉はほとんどが英語だよ
それだけの英語力 みなさんお有りか?
ないだろ ないよね?
中級レベル以上(TOEIC815点)の英語力を持つぼくでも
分からない 何だっけ?
そんな単語が IT用語として頻繁に使われているのです
ITパスポートという
情報処理系の一番下の国家資格試験があるのだけれど
それには 7歳の小学校1年生でも合格してるんだとか
小学生で何人もが合格している その試験
彼ら彼女らは
英語の用語も その意味 言い回しも
たぶん丸暗記し 試験対応だけのテクニックを磨き
受かっているんでしょう
試験なんてそんなもの
小学1年でも確かに英検1級合格はしているからね
それと同じ
とはいえ
IT DXの知識は持っていたほうがいいYO!
現役世代の20~30代のあんたたちだよ
もうちょい下 10代の君らは
戦争にだって行く 行かされるかも…の時勢だよ
それを忘れるなよ
鉄砲持って撃つ練習や
手榴弾投げたりすることは
――ないかもしれんが
ITの知識はあったほうがいいいんじゃねぇの?
それを理解できる英語力も
ああ
でも その世界は英語ができるとできない
英語を知る知らないでは
大きな差があるぜ
日本はとっくの昔からだけど
かなわないのよ
アメリカさんにはとにかく
か・な・わ・な・い――
それだけ おぼえておきなっ!!
…………
武器に替わるのが
言葉じゃなかったのかな
言葉は爆弾だったのじゃないのかな
そんなことを信じている人も
いたとか いないとか――
言葉には
そこまでの威力はないのよ
そう思いませんか
殺す
愛す
などと 言葉で文字で訴えたところで
効果は――ない
そうじゃないですか
みなさん
…………
紙はまだ ある
道は続く