「ネズミ男」
美しい女の立ち姿に見とれ
その記憶が消えないうちに
と
勤め先ビル入り口前
慌てて ノートにペンを走らせた
「何書いてんスか」
と
声をかけられた
ネズミ男だ
いや 何も…
と
僕は メモを途中でやめ バッグにしまいながら 言った
「ふーん、またエッチな詩でも書いてんじゃないスか」
(え!? 詩って お前が ネズミ男が なんで知ってるんだ それ言うか…)
ちょっと 思いついたこと
仕事のこと メモしただけだよ
「仕事って そんなにないじゃないスか」
そ、そんなことないよ
こうして会社にも来てるだろうよ
「座ってるだけじゃないスか」
そ、そんなことないよ
(お、お前に言われたかねぇよ!)
「もうすぐ フリーアドレス化されンでしょ」
そうそう そうだね
「すると ホントに席なくなるんじゃないスか」
そ そんなことは…
「毎日 会社来なくてもいいんじゃないスか」
(そりゃ 確かに…)
ああ 再雇用になるんだし 考えとくね
(お前の 20年後だよ 会社あれば…)