人生下り坂最高!
○にっぽん縦断こころ旅
俳優の火野正平さんがお亡くなりになりました。
75歳。
まだまだお若い年齢です。
NHK-BSの「にっぽん縦断こころ旅」では、視聴者からの手紙を元に、火野さんが自転車を走らせる心温まる番組でした。
途中、お弁当を食べたり、町の食堂に寄ったり、ふと気になる場所に立ち寄ったり、火野さんに気付いた人にファンサービスをしたり。
一人の視聴者として大ファンでしたが、火野さんはシャイな"人たらし"だとお見受けしておりました。
○人たらしなモテ男
若い頃はモテ男で浮き名を流し、一時期は日本中の女性の嫌われ者だったとか。
男性の敵でもあったのかもしれません。
うちの80歳を越えた父は、「カッコ良くもないのに何であんなにずっとモテるんだ」と昔から僻んでおりました。
でも実際にはお相手の女性たちは、みんな火野さんのメロメロだったそうで、悪口を言ったり、訴えたり、スキャンダルを売ったりする人はいなかったそうです。
これ、わかる気がします。
私の所感ですが、男女問わず「人たらし」と思わせる人には共通していることがあります。
リスト化してみました。
○人たらしの共通点
□かわいい笑顔、人懐っこい笑顔
□すごく優しい
□人の懐に入るのが上手く、迷惑かけられても憎めない
□目の前の私 / 今ここに、集中してくれている
□すべて、さらけ出してくれている様子(壁がない)
□しかし全部は見せてないみたいで、一部はミステリアス
□時々突拍子もないことを言ったり、やったりする
火野さんもそんな人だったんだろうなぁと。
あくまで予想ですが、人たらしな魅力でいっぱいでした。
○人生下り坂最高
にっぽん縦断こころ旅では、火野さんが下り坂を自転車で下りながら「人生下り坂最高〜!」と言うのが、いつの間にか定番となりました。
そう言っても「言ってください」というお決まりを必ず守るような人ではないので、言わない時もありました。
心で感じたことしか言わない人。
(そんな姿にも学びがありました)
自分を大きく見せようともしておらす、そのまま、ありのまま。飾らず気さくで正直者。
だから、「人生下り坂最高〜!」と言う時は本当にそう思っているように見えました。
これ、ただの下り坂最高じゃなくて【人生】が付いているのが良いんですよね。
○上り坂のあとは必ず下り坂
坂道を下る。
その前には、そこに至るまでの上り坂が必ずあります。
番組内でも必ず下り坂の前に、上り坂がありました。
人生も長い上り坂のように、つらいことや大変なことが押し寄せます。
火野さんは、ゼーゼーハーハー言いながら、坂道を上りました。
このシーンを見ると、ベテラン視聴者なら「おっ!この後、下り坂くるぞ」と気付きます。
そして坂を上りきり、眼下に町並み。
視界が開けたその先に下り坂。
「人生下り坂最高〜!」
ペダルから足を外し、膝をピンと伸ばす。
スピードに任せて下っていく様は、毎回爽快感がありました。
大変なことを乗り越えた後は、楽が待ってる。
人生と重ね合わせて見ていました。
○下り坂の意味
ほとんどの視聴者がわかっていることなので、説明も野暮ですが、「人生下り坂最高」の「下り坂」とは、【老い】のことです。
若さは希望で満ちあふれ、
老いることには希望がない。
そんな風に思われがちです。
誰もが自分の老いを感じた瞬間、暗い気持ちになります。
その気配すら気付かないふりをしたり、老いを正面切って受け入れられなかったり。
そんな老いることを明るく前向きに捉えた言葉が「人生下り坂最高〜!」です。
○力を抜き、下り坂を楽しむ晩年を
若い頃のようでなくても。
できないことが、多くなっても。
昔より成長した今の自分がいる。
それがちょっと誇らしい。
老いることって、悪いことばかりじゃないよ。
そんな風に応援してくれている言葉。
「人生下り坂最高〜!」
いつも心から感動しました。
うん…下り坂最高ってそうだよね、
火野さん!
日本中のこころ旅ファンにそう思わせてくれて、元気を与えてくれました。
もっともっと自転車を走らせて、日本中を元気にしてほしかった…と思う方も多いでしょう。
私の亡くなった母が、こころ旅が好きだったので、特別な思いでこの訃報を捉えました。
人生下り坂最高!
そう言える人生を。
そう言うんだ!という決心で
歳を重ねていきたいと思います。