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演じることで開放される人生
映画「花束」を観てきました。
社会的養護がテーマとなっています。
(お恥ずかしながら「社会的養護」という言葉すら存じ上げていませんでした)
今、日本には、児童養護施設にいる子どもが42,000人もいるのだとか。
それぞれ、親の経済的な理由だったり、虐待だったり、死別だったり、事情があって、親と離れて暮らす子どもたち。
そこで育った方々にスポットを当てた作品でした。
※以下ネタバレありです
キャスト8人。施設出身の若者。
半分はそれぞれのインタビュー。壮絶なお話。
半分はドラマ。フィクションの映像。
驚いたのは、演技がたぶん初めてであろう8人が、
それぞれ与えられた役割を持ち、映画の中で役を演じていたことです。
こういうタイプの作品は初めてで戸惑いつつ拝見しました。
アフタートークがあり、サヘルローズ監督ご自身がこの作品への思いを語っておられました。
その中で、どうしても彼らには演じてもらいたかったと。
理由は、イラン出身で児童養護施設で育ったサヘルさんご自身が、サヘル・ローズという自分の人生が辛かった。嫌だったことから。
「お芝居で他の誰かを演じている時だけは、自分の人生を休んでいいんだと、それでとても楽になれた。」
「そして誰かを演じた時、自分がここまで経験してきた様々な感情を、演技を通じて引き出して、開放できた。それがとても心地よかった」
だから彼らにもそれを味わって欲しかった、絶対に演じて欲しかったと。
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この中で、サヘルさんの
【演じることによって自分の人生を一回休むことができて救われた】
という言葉にハッとさせられました。
そんな壮絶な人生って、どれだけ大変だったことでしょう。
自分の人生を休みたいと思うような過酷さ。
とはいえ、私も自分の人生が嫌で、幕を下ろしたい辛い時がありました。
そのとき俳優をやろうなんて選択肢はなかったけど「確かにそうかもしれない!」と。
他の誰かを演じることで、本来の自分から一回離れられる、って、ことですよね。
そして、その芝居中の自分が、苦しかった自分を思わぬ形で開放してくれるってことですよね。
今。
辛い中にいる人は、演技することも選択肢に入れてみてください。
それは、家族の前で大丈夫な役を演じろ、ということではありません。
ピエロになって人を笑わせろ、ということでもありません。
実際に役名がつき、セリフが与えられる作品に参加してみてほしい。
選択肢の一つとして。
きっと、サヘルローズさんが、演技自体が心のケア効果がある、だから広めて行きたいとおっしゃっていました。
感情を開放して、心地良い瞬間が訪れるかもしれません。
絶対ないない!と思う選択肢でも、頭の片隅に置いておいてください。
辛い過去を持つ人へ。
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