【苅込渉さんインタビュー】市民と手をつなぎ創る「流山」の新しいまちづくり
目次1:はじまりは市役所内での部署異動
苅込さんは、流山市役所の都市計画や景観にまつわる仕事をなさっていましたが、2021年江戸川台東口商店街を盛り上げる役割を担う課に異動になり、業務遂行が始まりました。
商店街の空間に賑わいを持たせる上で、市役所側が一方的に道路を作ったりするだけでは成功しないと考えた苅込さんは、まず市役所を飛び出し、商店街の各店舗に挨拶回りをすることから始めました。
しかし、プロジェクトとして事業を営む店舗や市民の方々と一緒に動き出すには、関係者の時間的都合を合わせにくい等、苦労は絶えませんでした。
それでも、根気強く活動をし続けた結果、社会実験※として『江戸川台EASTREETPROJECT』(イーストリートプロジェクト)を開催し、商店街通りを2週間歩行者専用道路にした上でマルシェやナイトカフェを出店しました。
最初こそ仕事として訪れている感覚が強かったかもしれませんが、そこで多くの方との人間関係が生まれ、苅込さんにとって江戸川台は愛着のある街となりました。そして、自分の居場所の一つになった江戸川台をもっと良くしたいという気持ちを抱くようにもなり、週末には子どもと一緒に足を運ぶことも出てきました。
目次2:開拓者に苦労はつきもの
盛況を収めた『江戸川台EASTREETPROJECT』は、第二弾として商店街で食べ歩き商品を開発したり、芝生を敷いたり、映画を見られる空間を創ったりしました。
その後、この社会実験から新たな取り組みに広がり、子どもがはじめてのおつかいをしたり、子どもにお化粧をしてランウェイを設置したりと、企画のバリエーションを増やしました。もともと予想していなかったことでしたが、高校生や大学生もメンバーに混ざるようになり、活動の発想が豊かになり活気がより一層増しています。
しかし、ここまで社会実験を進められた裏側は必ずしも順風満帆だった訳ではありません。市役所の規律も重んじる苅込さんは、職員としての職務を超えた活動をする際には時間休を取得し、さらに仕事の域におさまらず勤務外であったとしても街を良くする活動をしたいと考え、時には休日に娘を連れて江戸川台を訪れて活動する事もあったようです。しかしながら、このような働き方は市役所で前例が多くある訳がなく、良く見られない事の方が多くありました。
また、行政の立場で市民の公平性を欠くような判断は出来ません。偶発的に起こった素敵な出会いからワクワクする企画が生まれてくる訳ですが、プロジェクトとして進める上での意思決定でも苦慮することがありました。
そこで、苅込さんは市役所職員としての規律とご自身の想いを両輪で回せるよう、自ら発起人となり市職員で構成される『Nまちデザイン』という市民団体を立ち上げるに至りました。今でも、一緒に活動する職員のライフスタイルの変化・違いによる足並みの揃え方やご自身の家族との時間のとり方など、気がかりが無くなったわけではありませんが、『Nまちデザイン』の立場を上手く活用して今まで実現できていなかった事の具体化に取り組んでいかれます。
目次3:流山市を元気なまちに
立ち上げた『Nまちデザイン』での活動では、江戸川台東口商店街を飛び出し、おおたかの森駅北口都市広場でNorth Square Market(ノーススクエアマーケット)を開催しています。そこでは、流山市地元の店主が出店し、その人柄を知ってもらう事で「この人にまた会いたい」と思わせるような場を作りたいと想いを込めたマルシェを開いています。
『Nまちデザイン』としての活動も少しずつ形になってきた苅込さんに今後の目標を伺うと、「民間が自分の力で地域の活性や地元のエリア価値を上げられるような仕組みを作っていきたい」と語られています。
また、苅込さんご自身としては「人と繋がれることが楽しい、たとえ市役所内で異動があったとしても、その新しい人たちと別のチャレンジを生み出す事は続けていきたい」と想いを強くもたれています。
官民、社会人と学生、ものを売る人と買う人といった立場の違いは数知れずあります。しかし、そうした立場や年齢をこえて、地元が好きで関わりたいと思う人が行動して、地元を元気にさせる活動が苅込さんにとっての生き甲斐となっているようです。
苅込さんの周りに集まる地元の店主や・学生たちによって、これからもまち中で新しい企画が進められるのが楽しみです。
編集後記
インタビュー中、暮らし方と働き方が良い意味でカオスな状態にも思えながらお話を伺っていましたが、流山市職員と『Nまちデザイン』の立場をきちんと、そして上手く使い分けながら愛着のあるまちを自分の手で良くしていこうと活動されている苅込さんからは果てしない熱量とバランス修正力を感じます。
何より共感したのは、〝仕事や仕事の少し外で出会った人たちとのポジティブな繋がりって楽しいですよね!そして、そこからみんなが生活する場を変えていける活動は仕事でも仕事じゃなくても楽しいですよね!”という想いでした。
インタビュー後も話し込んでしまったのが楽しい思い出になりました。ありがとうございました!
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