#2 異端なスター
「非難の声恐れて 無難な生き方貫いて 自分らしさにさえ無関心になって」
Official髭男dismの『異端なスター』の歌詞の一部である。これを迷わず一番にここに紹介したいと思った。
この曲は、自分という存在を押し殺して、目立たず社会の一部にただ存在してしまっている人や、そんな自分を変えたいと思っている人へ向けている。
上述した歌詞は特に気に入っている部分で、自分らしさっていうものを出せてないという過去の自分の経験から、「…自分らしさにさえ無関心になって」の表現力に感動し、過去の自分を変えるきっかけにもなったのである。
また曲の始まりはこんな歌詞から始まっている
「ねぇ聞いて面白くなけりゃダメで 見た目が良くなけきゃダメで そうやって選ばれたスター人気者さ 僕らは後ろついて回って 照らすライトの一つとなって それが人生 醜いリアルさ」
私は男子高出身で、その男子校にも立派なスクールカーストが存在していた。面白い人、かっこいい人。それが上位を占める単純な学校だった。小学校、中学校と内部進学が可能なその高校は、その上の二つに加え、内部進学というレッテルも上位に入る要素として強かった。しかし、高校から入学した私にとっては無関係のことで、飛び切りかっこよくなければ、飛び切り面白いわけではない。ただ”いじられキャラ”を確立することができたため、ランクも中の中にはいたと思う。
そんなリアルな高校生活を過ごしてきた私は、いつしかランキング上位組に嫌われまいと、周りの目を気にして、自分らしさを押し殺して、気に入られるように振舞っていたのだ。今思うと”いじられキャラ”というのも諸刃の剣だったのかもしれない。
この高校生の私は上述した歌詞の後半部分のドンピシャで当てはまっている。
その高校は大学もついていて、いわゆるエスカレーターで進学したわけだ。それは楽なことではあったが、そのスクールカーストの香りは大学一年生当初少しだけ残っていた。俗に”大学デビュー”なんて言葉があるが、それを私は密かに狙っていた。自分を変えるチャンスだ。ただ、在籍生徒数が増え、知らない人だらけの中で、たまに遭遇するランキング上位組とのやり取りは私にとって足かせとなっていた。”いじられキャラ”というレッテルを大学には持ち込みたくないという気持ちと、ランキングを維持しなければいけないという気持ちの葛藤が当時の私にはあった。
そんな中、この曲と出会ったのはOfficial髭男dismの代表曲の一つ『Pretender』が流行ったまさにこの大学一年生の頃だった。Official髭男dismの曲をディグっている際に発見し、初めて聴いたときは感動した。この歌詞を改めて見返した記憶がある。一番に感じたのは、今の私の抱いている気持ちは私だけではないのかもしれない、同じ境遇の人がいるからこういう歌詞が作れるのかという味方できた気分だった。当時の抱いていたモヤモヤが歌詞によって整理整頓され、心に余裕ができた。ランキングなんてしょうもないのに縛られてたら勿体ない、と考え直すことができた。
そして曲の最後にはこんな歌詞がある。
「いい子になんてならないで 調子に乗ってでしゃばった 火をつけまわる異端なスター そんな汚名着せられてもいいから どうか叫んで歌って 何か変えたいなら どうか歌って」
自分らしさを押し殺す日々から、他人の目を気にせずやりたいように自信をもって挑戦できるようになったのも、この曲のおかげであり、存在は大きい。
そして私はそれからこう思うようにしている。
【好きなことをやっている私を嫌う人に好かれようとは思わない】
高校生の私は高校という小さなコミュニティに縛られていた。それは高校三年間を最低限楽しむために、無理な役柄を演じるのは仕方のないことなのかもしれない。しかし、いつまでも縛られていないで自分を発信することは価値のあることであると思う。
だから私は誓う。異端なスターでいつづけることを。
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