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食品スーパーのレジにて。2/2話

-第2話-(2019年 50歳)

※ちなみに第1話はこちら👇


 レジ袋が有料化になる前年の、とある午後。
1カ月に数回訪れるかどうかという、徒歩15分ほどの食品スーパーのサッカー台にてザクザク購入品を袋詰めしていると、おばさまが隣にレジかごを重たそうにガタリと置き、声をかけて来られた。

「あら~エコバッグ!偉いわね~!……それにしてもそんなに沢山、歩いて持って帰るの?」
「はい、そうです。車を持ってないので……」
ちょっとはにかんで答える。すると、あたらめて私の荷物量(おばさまの3倍くらい)をしげしげとご覧になったおばさま、
「へぇぇ!歩いてなんてすごいわねぇー!!私なんか、どうしても自転車使っちゃうのよね~。偉いわね~」
としみじみ褒めてくださった。

私は嬉しさでこそばゆくなった。……いや、自分としては毎度のことなので大したことでもない気がするが、こんなにも熱くお褒めいただけたなんて光栄至極。
なので、いつもヒイコラ持ち帰る重さをしれっと持ち上げ、よっこらよっこらマイペースに袋詰めをされているおばさまに笑顔でご挨拶をし、颯爽と店を出た。

道すがら思う。
「重さって、実は気分次第なのかもしれないなぁ……」
そしてニマニマが止まらぬ私は、帰宅後玄関にドサリと荷をおろし、偶然出会った褒め上手なおばさまに感謝したのだった。



余談、というか話の続き

だがしかし!
おろした荷をあらためてやれやれと眺めた時、私のニヤケ顔は凍り付く。
そう、サッカー台にトイレットペーパー(シングル12個入)を置き忘れて来てしまったのだ!

どうりで買い物中より荷物が軽く感じた訳だ。
褒められて浮かれた結果がこれである。

「ああ、もう全く私ったら!」
己に若干イラつきながら、速攻でお店に電話。
『ちゃんと残ってるかな……。と言うか、残っていても取りに行かなきゃいけないよ……。なかなか行けないのに!は~あ、どちらにせよ気が重い……』
内心ジリジリしながら、電話口の女性に必死でトイレットペーパーの安否を尋ねた。

そしたら返って来たのは、
「ありますよ~。いつでも大丈夫ですよ~。ウフフ♪」
と、まるでふわふわクッション、天使のような優しい波動のご回答。
それはそれは素晴らしい衝撃吸収力で、私の妙な緊迫は一瞬にして緩み、後日安心してお迎えに向かうことが出来たのだった。

サービスカウンターにてトイレットペーパーと無事再会を果たした私は、素直に喜んだ。
「ありがとうございますー!本当にお騒がせしました!」
「良かったですね~!ウフフフ~♪」
と、チャーミングに微笑む年配女性店員さん。(おそらく電話に出られた方?)
『なんというエイジレスなかわいさ!』
またしても心がほどけた私は、その日も楽しい気分で過ごすことが出来たのだった。

と言うことで、店員さんのおかげで最終的にはよき思い出となったが、『褒められても、感謝はすれど、平常心を忘れてはならぬ』が、教訓として私の脳にしっかりと刻み込まれたのであった。