ICUのオールジェンダートイレを使った感想

先日、政治思想学会の研究大会に参加するために、国際基督教大学(ICU)に行った。ICUは2020年にオールジェンダートイレを導入しており、おそらく日本の大学で最初だと思う(他に先に導入していた大学があったら教えて下さい、知りたいです)。

ICUに行くとなればぜひ利用したかった。とはいえオールジェンダートイレを利用するのは初めてだったので、ちょっとワクワクしつつ、緊張もしていた。

私はノンバイナリーとして生活していて、服装は(身体に対して)異性装的な感じで過ごしている。そのため、普通にトイレを使うとたいてい二度見されたり、確認しに出ていかれたり、私に「そっちのトイレじゃないですよ」と教えてくれたりする人がいる。ノンバイナリーなので、そっちもどっちもないのだが。

さてそんな私、オールジェンダートイレを初めて使った感想は「つっかかりがない……!」というものだった。
つっかかり、というのは心理的な話。普段のトイレ利用のときにこの「つっかかり」を意識したことはあまりなかったが、いざオールジェンダートイレを使ってみると、こんなにもスラっと入ってスラっと出ていけるのかと驚いた。私にとってずっと、トイレ利用でのつっかかりが意識下にあったんだなと思った。二度見されたり驚かれたりすることがまったくないので、この点でも気が楽だ。日常的なトイレ利用がいかにストレスになっているのかを認識した。

オールジェンダートイレは、ある意味で異質な空間だった。どんな人も同じ空間にいて、普段ならありえない組み合わせの人々がトイレという空間を共有する。それに対して当初は違和感があったが(トイレと性別の連合が強く形成されてるのだろう)、だんだん慣れてくる。

こんなトイレが他の大学や他の公共施設にも広がれば良いのに、と思った。
ICUのオールジェンダートイレは改修に伴って導入されたようなので、改修さえできれば概ねどんな建物でも導入できるはずだ。もちろん、それによって高まるリスクがあるかもしれない。ICUだからできたんだろ、という主張も理解はできる。
おそらく問題はもっと根深くて、オールジェンダートイレを導入するとリスクが上がるというこの社会の方に問題がある。ICUなどのある程度は閉鎖的であれるコミュニティでしかうまくいかない、という状況にしている社会に問題があるはずなのだ。
でもこの問題が解決しそうな見込みを私は見いだせないので、絶望しつつ、でも抵抗して生きていこうと思う。


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