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台所から暮らしと社会が見える「世界の台所探検」

本(世界の台所探検)

世界中を旅しながら、各国の台所事情を綴った本です。実際にそれぞれの台所に入って調理をしながら、ホームステイした家族との交流や台所の特徴を筆者の視点で書いています。

こうした旅行と食べ物(食べる方も作る方も)がコラボした本や映画などは、個人的には特に好きで、新聞の書評欄で小さく紹介されていましたが、目ざとく見つけて本屋さんに行っても在庫がなかったので、注文して買って読んでみました。

筆者の台所探検家である岡根谷実里さんは、東大の大学院で土木工学を専攻、将来は技術者として海外でのインフラ整備を希望していましたが、留学中に行ったアフリカでの道路建設に伴う住民の強制的な立ち退きの現実を見て疑問が生じ、海外での家庭料理に興味を持ったことをきっかけに卒業後、クックパッドに入社しました。

旅先はアジアから始まって、ヨーロッパ、中南米、アフリカ、中東とほぼ世界を一周しており、訪れた国の多くが先進国ではなく発展途上国で、それだけグローバルではない地元固有の料理が登場します。こうした国々の国力が脆弱で国民も貧困層が多いので、自ずと食事も質素なものとなります。主食は米やパンの他にも、雑穀を使った練り粥など様々な工夫がなされ、主菜も安価な鶏肉や魚の他に、野菜中心のものもあります。

その土地ならではの料理を家族と一緒に作りながら、日本でもできるように材料や調味料などをアレンジしたレシピも紹介しています。

それぞれの国の代表的な家庭料理が並んでいますが、いくつか挙げてみると
インドネシアのココナッツミルクとそれを煮た副産物のタイミニャを使ったピリ辛ソースのサンバル、キューバの国民食と言われる豆のスープをご飯にかけたフリホーレス、スーダンの赤いシチューのバミヤ、イスラエルのパクチーを大量に使った魚料理のモロッカンフィッシュ、パレスチナの炊込みご飯のマクルーバ、ヨルダンの混ぜご飯にヨーグルトソースをかけて食べるマンサフなどが紹介されています。

各国の台所の形状なども写真入りで紹介されており、決して広くはない空間や十分な厨房設備がないながらも、その使い勝手や動線などを工夫しながら、手際よく料理を作る姿が描かれています。
訪れた国や地域の料理を、その家庭の台所で一緒に作ることは、その国や地域の「食」を知ることであり、それは食文化に留まらない生活全体を理解することになります。あとがきにある「台所は社会を知る窓だ」という筆者の思いが伝わってくるようでした。

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