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読後寸評

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読んだ本で感じたことを綴っています。 好きな作家はラディゲですが、最近よく読むのはジェンダー論。A4用紙1枚程度で、800〜1000字程の感想文です。
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2023年8月の記事一覧

話題の本‼️「検証ナチスは「良いこと」もしたのか?」

話題の本‼️「検証ナチスは「良いこと」もしたのか?」

本(検証ナチスは「良いこと」もしたのか?)(長文失礼します)

第二次世界大戦やホロコーストを引き起こしたナチスが、逆に「良いこと」もしたのかについて検証した本です。この本、話題になっていると新聞記事で読み、早速買って読んでみました。共同筆者の小野寺拓也さんは東京外国語大学准教授で、田野大輔さんは甲南大学教授で、長年ナチスの研究を続けている歴史学者です。

この本を書くきっかけになったのは、予備校

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2023年下期芥川賞を読んで「ハンチバック」

2023年下期芥川賞を読んで「ハンチバック」

本(ハンチバック)

2023年下期芥川賞を受賞した話題の作品です。作者の市川沙央さんは身体障害者であり、主人公も同様の障害者として描かれています。
筆者には同様の障害を抱えた姉がおり、当初の作品は姉を当事者として書いていたが、今回の作品は自分自身が当事者として書いたと、受賞インタビュー記事で述べていました。

よってこの作品は作者自身のほぼ実体験を基に描いたものであり、同じ芥川賞受賞作品では「苦

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建築(建物)と都市(街)を繋ぐ1階の重要性を説いた本「1階革命」

建築(建物)と都市(街)を繋ぐ1階の重要性を説いた本「1階革命」

本(1階革命)

建物における1階の重要性を解説した本です。筆者の田中元子さんは株式会社グランドレベルの代表取締役で、「1階づくりはまちづくり」をモットーに、都市空間や建築のコンサルティングやプロデュースを行っています。

筆者が最初に建築に関わるようになったのは、建築メディアの仕事に従事したことですが、そのことがベースとなり、建築と都市(街)をつなぐ存在としての1階部分に注目し、建物と同時に街の

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実の父親がネトウヨになったルポライターの力作「ネット右翼になった父」

実の父親がネトウヨになったルポライターの力作「ネット右翼になった父」

本(ネット右翼になった父)(長文失礼します)

実の父が、ネット右翼(ネトウヨ)となった原因と経過を克明に記録した本です。筆者の鈴木大介さんは、貧困問題などをテーマに取材しているライターで、自身の左翼的立場と相いれない父親の変貌に当惑しながらも、なぜそのようになったのか、その取材力を活用して実態に迫っていきます。

筆者が最初に指摘するのは、家族の右傾化と分断は、現代の普遍的な現象であり、ネトウヨ

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