和服最低工賃って知ってますか?
※令和6年7月6日加筆修正し、創作大賞に応募したので、無料設定にしました。
最低工賃に意味があるの?
和服裁縫業ついて下記道県は、最低工賃が定められています。
他の県はおそらく、廃止されていると思います。
職人数が少ないと、廃止されたり
最低工賃が何年も据置のままになります。
下記道県の最低工賃も、古いものだと平成13年
新しいもので平成25年でした。
※令和6年、廃止になった県や、10年ぶり改正された県があります。
【北海道】
令和6年北海道和服裁縫業最低工賃(平成14年から変わらず)
https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/content/contents/001159754.pdf
北海道和服裁縫業最低工賃の推移
https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/content/contents/000797081.pdf
【青森】
令和6年青森和服裁縫業最低工賃(平成15年から変わらず)
https://www.city.aomori.aomori.jp/keizai-seisaku/sangyo-koyou/syuurou-roudou/documents/wahuku.pdf
【鳥取】
10年ぶりに改正(令和6年8月から効力発生)
https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/content/contents/001858785.pdf
平成26年和服裁縫業最低工賃
https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/library/tottori-roudoukyoku/pdf/wa_kochin2605.pdf
平成24年和服裁縫業最低工賃
https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/content/contents/wa_kochin24.pdf
【広島】
令和6年広島県和服裁縫業最低工賃(平成14年から変わらず)
【山口】
令和6年山口県和服裁縫業最低工賃廃止
令和5年山口和服裁縫業最低工賃(見れなくなりました)
https://jsite.mhlw.go.jp/yamaguchi-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/chingin/saiteikouchin1.html
【長崎】
令和6年長崎県和服裁縫業最低工賃廃止
https://www.jil.go.jp/kokunai/mm/hourei/houkoku/20240424.html
令和5年長崎県和服縫製業最低工賃(見れなくなりました)
https://jsite.mhlw.go.jp/nagasaki-roudoukyoku/content/contents/kotin-17092705-20191121.pdf
【熊本】
令和6年熊本県和服裁縫業最低工賃(平成13年から変わらず)
さすがに、これより、低い工賃で縫わされている方はいないと思いますが
(独自調査によると、いた!)
個人で仕事を受けている職人さんの中のは
これくらいの値段で受けている方がいるかも知れません。
呉服屋さんの中には、この最低工賃表を大事に保管していて
この最低工賃を払っているところもあります。
この最低工賃しか払っていないのか…と、言いたいですけどね。
私は、今現在、頑張っている和裁士さんや和裁技能士さんに
真っ当な対価が支払われるためには
最低仕立て代のような基準があればと思っていたのです。
ところが、調べてみたら、労働基準監督署でさえ、この低い工賃設定です。
愕然としたのはいうまでもありません。
もしかしたら、この最低工賃が
かえって職人を苦しめているのでは?
こんな設定なら、廃止された方が良いかもと思うようになりました。
(令和6年廃止された県が2つありました。)
せめて、時給にした時に、
最低賃金と同じレベルにすることはできないのか…
どんなに頑張っても、家内労働者扱いだと、内職とみなされ
この工賃程度にしかならないのが、現実のようです。
そもそも、時給換算ではおかしいのですよ。
仕立てる時には、電気代も道具代もかかっているし
収入から、各種保険料も払わないといけないし…
和裁士・和裁技能士は減っている!
下の表が、平成15年度から令和4年までの受験者数です。
平成15年に1142人だった受験数が
令和4年度には206人になっています。
合格率は6割弱だと思います。
ちなみに、試験時間内に縫い終わらないと、採点すらされないので
その自信のない生徒は、そもそも受験しません。
受験者数が少ないからなのか
合格率が落ちてきたからなのかわかりませんが
試験内容が以前よりも緩くなりました。
分母が少ないということは
高い技術の衰退にもつながりかねません。
実際に、仕立ての検品をしている方の話を聞くと
かなり技術は落ちているそうです。
令和4年は、二級・一級合わせて116名の和裁技能士が誕生しました。
まだ、それだけの人数がいるのか、よかったと思うべきなのか
それだけしかいないのか、と危機感を覚えるのか
どう感じますか?
この30年、学ぶ学校もどんどん閉校していきました。
学びたいと思っても
自分に合った学び先を選ぶことすらできない可能性があります。
これからの和裁士・和裁技能士を育てるためにも
技術の高い職人さんを育てるためにも
工賃が低いという状況を変えていかなければならないということは
今踏ん張っている和裁士・和裁技能士、みんなが思っていることだと思います。
国家検定に合格しているにもかかわらず
自立して生活できない工賃、内職程度にしか扱われない工賃では
和裁士・和裁技能士っていいよと、おすすめできません。
とはいえ、今、生徒を集めている学校でも
和裁士・和裁技能士を女性の内職としか思っていないような扱いなのが
残念なところです。
ご主人の扶養の範囲で働きたいから
安い工賃でも良いという考え方がいるかもしれませんが
それは、間違ってませんか?
1枚仕立てて、これまでの2枚〜3枚分の工賃がいただけたら
月に仕立てる枚数を減らしても、収入は変わらず
自分の自由な時間が増えます。
その方が、ずっと良い気がします。
技術の格差ある!
正直なところ、技術の格差はあると思います。
同じ一級和裁技能士でも、ずっと仕事をしていた人と
しばらく休んでいた人とで違うでしょう。
のんびりやっていた一級和裁技能士よりも
向上心の高い二級和裁技能士の方が、技術が上のこともあるでしょう。
技能検定を受けていないけど、技術が高い方もいるでしょう。
なので、工賃を一律にというのは難しいし
価格競争があって当たり前の世の中なので
全国共通工賃を決めるのも難しい。
最低工賃とは、着物の形になっていれば良いと思っている呉服屋さんが
その程度の仕事をしている人に支払う金額という考え方なのか?
う〜ん…難しいですよね。
参考価格、最低価格、全国平均価格…
何か目安になる価格表のようなものがあれば良いのにね。
昔の人はどうだったのか
昭和のはじめ頃までは、自分や家族が着る浴衣や普段着物は
お母さんや、おばあちゃんが縫っていたと思います。
そして、高級なものは、プロにお任せしていたのでしょう。
今では、浴衣や普段着物を縫えない人がほとんどです。
でも、普段着物に、高い仕立て代は払いたくないし
払えないというのもわかります。
振袖や留袖、訪問着など、海外縫製が盛んで
これからは、ますます海外縫製が増えて、普段着物は海外縫製へ。
高級呉服は、技術の高い国内の職人へ。
そういう風に差別化され、別れていくのかもしれません。
と思っていた数年前から状況が変わり
円安が進み、海外縫製ではコストがかかって儲けがない…
ということになっているようです。
円安の今、仕立てが国内回帰している話も聞きます。
技術の高い和裁士・和裁技能士をしっかりと育てていかなければならないし
生き残りをかけて、技術を磨く努力が必要…とはいうけれど
仕立ての良し悪しが見分けられない呉服店員やお客様が少なくない。
高い技術を身につけても
その技術で仕立てて欲しいと言ってくれる方は少ない。
地方だと、なおのことで、独立して食べていくのは厳しい。
ちなみに、海外縫製のお仕立て代としてお客様がお店に払っている金額と
国内の職人さんが、お店からいただいている工賃とは
実はそれほど変わらないとのではないかと思います。
お店が国内縫製の仕立て代として提示している金額には
手数料が入っているので、海外縫製より高く感じるだけです。
以下の表は、私が独自に職人に直接聞いて調査した金額です。
黒字が、呉服屋さんや、悉皆屋さん、仕立て所から頂いている金額です。
ピンク字が、某店の海外縫製金額です。
これをみてどう感じますか?
海外縫製よりも下の金額で仕事をしている職人が多い現実…
しかも、技能五輪やコンクールなどで、上位を収めた子たちでさえ
低い工賃で仕事をしている話も耳にしました。
最低工賃よりも低い金額で仕立てている職人もいます。
この業界は、本当に、闇が深すぎる。
こんな状況なのに、学校は和裁技能士を胸張って育てられますか?
育てる組織も、お店も、現役の職人も、士会も協会も
これからのことを考えて、それぞれの立場で頑張っていかねばなりません。
協力できることは協力していかないと。
この30年、いったい何をやってきたんだか!!(私も含め)
個々で仕事をしている職人さんの中には
真っ当な対価の工賃をHPに公表して仕事を受けていますね。
職人も、無駄に歳をとっていくだけではダメで
下に続く職人のためにも
毎年工賃を上げていく努力(お店と交渉)をしないといけません。
私には、そういうところが欠けていると反省しています…
個人で仕事をしているのですから
自由に価格設定できる立場にあります。
たとえ、自分に仕事が来なくなったとしても
先をいく者が、上げていかないでどうするんだよ!
そう、自分自身に言い聞かせています。
そして、強く思うのは、技術の高い職人さんに対して
真っ当な対価を払う呉服屋さんがいてくれなければ困るということです。
でも、呉服屋さんが技術の高い職人を探しているというのを
聞いたことがありません。
残念なことに、技術が高くて安い仕立て代の職人を探している
というのは聞きます。
この後に及んで、工賃値下げの要求をするお店もあります。
職人は、断る勇気を持ちましょう。
お店と職人は、対等と考えます。
どちらも互いにリスペクトがなければ、仕事は続けられません。
いやいややる仕事は、仕立てに現れます。
お客様に対して失礼です。
この仕立て代では、仕事ができないと思ったら、断る!
もしくは、工賃に見合った仕事をする。(ここ大事!)
低い工賃なのに、不当な要求をするお店もあるのが現実なので
そういうところとは縁を切りましょう。
毎年開催されている東京キモノショーでの、和裁職人大賞は
本当に腕の良い職人さんに正当な対価が流れる仕組みを作りたいという思いで
企画されたものだと聞いています。
選ばれた中でも、三つ星、二つ星、一つ星というふうに評価されます。
こういう企画も、多くの方、職人に知ってもらいたいです。
私も、初年度に三つ星をいただきましたが生活はさほど変わっていません。
でも、少しの自信が持てたことと、
私という個人の仕立て屋を多くの方に知っていただけたことは
何よりありがたいことです。
そして、多くの仲間と知り合うことができました。
その仲間がいなければ
今も、悶々とした気持ちのまま仕事を続けていたのだろうと
容易に想像がつきます。
小さな声ですが、最低工賃おかしいでしょ!
不当に安い工賃おかしいでしょ!って叫び続けます。
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