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水彩画歴1年と少し、個展をやってみた話【準備編】
水彩画歴1年7ヶ月で個展をやってみました。前回の記事では、個展開催を決心するまでのお話でしたが、今回は個展を企画・開催したことがないド素人が、どんな風に準備をしたのかをご紹介します。
▼前回の記事
企画の出発点は、自分の望みと妄想
さて、とりあえず日付と会場は決まった。・・・ん?そもそも、個展ってどうやって準備するんだっけ。美大出身でもない”個展素人”の私は、何をどうしたらいいか・・さっぱり分からなかった。いきなり個展のハウツーに手を出そうとしている私を見て、くまさんが「待った」をかけた。
わたし:
個展のコンセプトは湧いてきたんですが、面白い個展になるのか不安で・・あーーーどうしようーーー!個展の極意、ググろうかな・・
くまさん:
1つ言っておくと、「他者にウケるかどうか」じゃなくて「自分が何をしたいか」が大事だからね。あなたはプロとして、誰かから依頼されてこの個展を企画しているわけじゃないんだから、人から評価される必要はない。あくまで自分のためにやればいいんだよ。個展で何を見せたいの?
わたし:
うーん、そうですねー。水彩画って絵の制作過程が楽しいんで、その作る過程ですかね。あと、この1年ちょっとの私の上達とか見せる個展にしたいです。
くまさん:
いいじゃんいいじゃん。その調子。一般に広く受けようとすると、企画が丸くなっちゃうから。大事なのは、あなた自身の心が震えるかどうか、それを突き詰めること。
あと、いきなり準備に入る前に、まずは妄想を膨らませてみるといいよ。
わたし:
妄想ですか??
くまさん:
うん。例えば、誰とどんな雰囲気で準備したいか。当日、誰に来てほしくて、そこでどんな会話をしたいか。その時、自分はどんな気持ちになっていたいか、とかね。
わたし:
それだったらできそうです!
くまさん:
他にも、どんな空間にしたくて、どんな飾り付けにしたいか、とかも妄想するといいよ。もし、イメージがわかなかったら、展覧会に行ってみたり、ネットでビジュアル検索するのもいいよ。そうだ、来てくれた人へのお土産とかもこだわってみたら?
わたし:
え!そこまでやるんですか・・?『素人なのに、なに凝ってるの』とか言われそうで、恥ずかしいです。
くまさん:
あのねぇ、さっきも言った通り、あなたはプロじゃないから、他者のニーズは気にしてなくてもいいんだよ。だけど、自分自身の望みに対してはプロレベルでこだわること。たとえ技量はなくても、こだわる意識だけはプロ並みに持つ。ほら、自分を好きになって、幸せに生きるためにやっているんでしょ、この個展。あなたがワクワクしないと意味ないじゃん。
わたし:
そうでしたね・・つい他の人の目が気になっちゃって。。わざわざ来てくれているのに、お粗末な個展だったら申し訳ないなぁ、って思っちゃうんです。
くまさん:
心配しなくても、あなた自身が楽しめば、周囲も楽しくなるから。
こうして、自分が何を望むのかを妄想するところからスタートした。これまで「お客様の望みに応える」ことに全力で邁進してきた私にとって、いわゆる”顧客からの要件定義書”が存在しない企画は未知の経験だった。
自分の望みだけに従って何かを企画するのはいつぶりだろうか。頭の中の”望み思考回路”があまりにも錆びついており、最初は何も浮かばなかった。そこで、手始めにPinterestでビジュアル検索をしながら、個展の妄想を膨らませることにした。
ビジュアル検索とイメージボードづくりで妄想を拡げる
Pinterestで「#個展」「#展示」などのキーワード検索をしたところ、素敵な写真がたくさんヒットした。大量の写真を眺めていると、自分の好きな展示方法や配色、雰囲気といった”パターン”が見えてきた。言語化できないけど、「なんかこの感じがいい」という写真をピンどめしておいた。
それをパワーポイントに貼り付けて、ビジュアルボードを作ってみた。
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貼りだして、その周りに「制作中の心の声」の吹き出しを入れる予定だった。
パワポを使っているところが、いかにも素人感満載。しかし、イラレもフォトショも持っていない私は、「パワポ職人をナメんといてー!」と謎に開き直っていた。(誰にケンカを売っていたのだか・・)
作品の制作過程を披露する案(上記)のほかに、1年7ヶ月の成長を知ってもらうために、絵を時系列に展示する案も妄想した。以下のビジュアルボードは、「花」の表現が1年でどれくらい変化したかを紹介しようとしたものだ。左下2枚が水彩画を習い始めたころの絵で、右上2枚がその1年後の絵である。
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「あじさいとバラ」ゾーンと名付けてみたが、最終的にタイトルはボツに。
絵の周りの吹き出しは、フリー素材の吹き出し。絵を描いているときの心の声を表現しようとしている。(最終的にこれもボツとなった)
こんなふうに、ビジュアル検索 ⇔ 好きなイメージを見つける ⇔ イメージボートを作る、を行ったり来たりしながら妄想を広げていった。
コンセプトは「the making」
妄想を広げていくうちに、コンセプトも自然と固まっていった。
私にとってこの個展は「自分を好きになり、自信を持つこと」「やりたいことをやって幸せに生きること」へのリハビリであった。新しいことや慣れていないことを始めることは怖い。失敗したり、傷ついたりしたくないから、つい自分のコンフォートゾーンから踏み出せずにいる。そんな自分自身が一歩踏み出したら、何が起きるのだろうか。傷つくのだろうか。それとも、人の温かさに触れるのか。それを確かめるプロセスであった。
そして私と同じように、周囲の評価を気にするあまり、自分が本来やりたいことにフタをしている人に、少しだけ勇気をおすそ分けできるといいな、とも思った。
こうした思いから、コンセプトを「the making」にした。
・作品の制作過程、そしてアーティストとしての学びと成長、
2つのmakingを恥ずかしげもなく見せる
・いくつからでも、挑戦し、学び、成長することができる
・いくつになっても、「将来の夢」をもってもいい
まだ完成していない途中段階の絵を見せるのは、けっこう恥ずかしい。そして、自分で下手だと思っている絵を披露するのはもっと恥ずかしい。(パンツを脱ぐような思い)けれど、あえて恥ずかしい部分もひっくるめて、”いい歳した大人”のmakingを披露することで、誰かの第一歩につながると嬉しい。そんな思いを込めてみた。
ひつじちゃん参戦。さらに前進!
ここまで秘密裏に個展の企画を進めていたが、告知用のフライヤーづくりだけは、さすがの自称「パワポ職人」でも音を上げそうになった。そこで、会社の後輩で、美大出身のひつじちゃん(※羊には似ていません)に声をかけた。
ひつじちゃんは一つ返事で快く引き受けてくれた。フライヤーづくりの一環として、お手製の「パワポ版ビジュアルボード」を見せるときは、とっても恥ずかしかった。美大出身のひつじちゃんに笑われないだろうか・・・。もちろんそんなことはなく、『絵の制作過程を見せるアイデア、とても面白いと思いますっ』とニコニコしながら朗らかに言ってくれた。ひつじちゃん・・温かい・・(涙)
この一言がどれだけ励みになったか。何気ない一言だが、応援される側にまわると、小さな声かけや励ましの温かさが、想像以上のパワーになる。そうだ、いいと思ったことは、ちゃんと相手に伝えよう。そんなことも考えた。
フライヤー完成!ようやく小さな手ごたえ。
そんなこんなしているうちに、フライヤーが完成した。ありがとう、ひつじちゃん(涙)。正直、個展を始めようと決めたものの、常に失敗や笑われることへの不安があった。けれど、こうして何かが形になることは、気持ちを持ちこたえる手掛かりになった。
小さくても形にすること、そしてイイネ!と応援し、協力してくれる仲間がいること。こうしたことが”コトを前に進める”上で強力な推進力になることを知った。
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(※名前の部分だけ伏せております)
こうして個展当日に向けた準備は加速していく・・・と言いたいところだが、仕事の繁忙期により準備は一時中断。このあと、開催2週間前まで、塩漬けにするのでした(笑)
次回はいよいよ、最後の追い込みと当日の様子をご紹介します!