水彩画歴1年と少し、個展をやってみた話【余韻編】
水彩画歴1年7ヶ月、初心者が個展をやってみました。【決心編】【準備編】【駆け込み編】【開催編】と続き、ようやく【余韻編】です。今回は、当日の様子や感じたことを綴ってまいります。
非効率もぜんぜんアリ!バタバタ会場設営
個展初日は会場設営からスタートだった。棚を組み立て、絵をワイヤーから吊るし、飾りを並べる。途中、棚の配置と絵の枚数が合わないことに気づき、全ての棚を解体することになった。ついでに、ワイヤーを固定した後に絵の位置を調整したくなり、ワイヤー取り外すことにもなった。
もはや準備なのか、片付けなのか、どっちやねん!とツッコみたくなる段取りの悪さもあり、準備時間は予定より1時間が過ぎた。クライアント仕事だと怒られるだろうが(というか、自分自身のプロ意識が許さないだろう)、趣味でやっていることだから、なんでもありだ。むしろ準備メンバーで「やっちゃったね・笑」と苦笑いしながら解体するひと時は、まるで学生時代の文化祭のようだった。
余談だが、私の大好きなドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」で、大学生が3つのショートケーキを4等分に切り分けようとしているシーンがある。(※このあとネタバレなので、知りたくない方は次のタイトルへジャンプしてください!)
その様子をみた主人公のとわ子が「切り分け方を教えたらどうですか?」と数学好きの友人にコソっと声をかけたところ、「いいんですよ、むしろあの方が思い出になるでしょ」と返した。
なんて素敵な発想なんだ・・!と感動したものだが、この会場設営もまさにそう。効率は悪かったかもしれないけど、大の大人がバタバタしている時間は、やはりいい思い出になった。
「はじめて」が放つ、圧倒的なワクワク感
バタバタな会場設営から一息ついたところで、最初の来場者がやってきた。鎌倉散策に来ている女性だった。まさか知り合いではない人が立ち寄ってくれるとは想像しておらず、「え、え、え!知らない人が入ってきた!」と嬉しさ半分、驚き半分。心の準備が追い付かず、お得意の人見知りが発動したこともあり、準備メンバーが声をかけてくれた。
どうやら、京都から旅行で遊びに来ていたようで、看板を見て立ち寄ってくださったとのこと。そんなことあるー?!しかも京都のお方ー?!入ってきてくれてありがとうー!ついでに、看板を作ってくれたひつじちゃん、ありがとうー!といちいち感激した。
それにしても、「はじめて」ってなんでこんなにワクワクするんだろう。はじめての個展、はじめての来場者。子どもの頃よりも「はじめて」が少なくなったのか?もしくは「はじめて」に気づく感度が下がったのか?
いや、むしろ「はじめて」を避けていたのかもしれない。「はじめて」な経験は何が起こるか分からないし、失敗するかもしれないから、怖い。恥をかくかもしれない。大人の私にとってはリスキーすぎる。だから、「はじめて」な経験を避け、自分のホームから出ようとしなかったのかもしれない。ただ、一度「はじめてへの恐れ」を乗り越えたら、圧倒的な感激やワクワク、刺激が待っている。大人になってからも「はじめて」もなかなかいいものだ。そして意外に失うものは少ない。
とにかく、人の「存在」と「温かさ」を感じる機会だった
学生時代の友人や会社の同僚なども来てくれた。「来てくれた」という事実だけでも、めっちゃ嬉しかった。なんだなんだ、この感覚は。普段は「感謝!」「Happy!」とか言う陽気キャラではないはずだが、個展期間中はとにかく感謝感激スイッチが発動しまくっていた。
ウェルビーイング領域の研究によると、「感謝」や「つながり」を感じている人の方が、幸せだと感じやすいらしい。せやな、ほんまそれよ。わたし、いまめっちゃ幸せやで。
ちなみに、私は長い間「友達がいない、少ない」が口癖だった。いやいや、いるやん。師走で忙しい時期に、個展に来てくれるあったかい友達、めっちゃいるやん。結局、自分が「いない」って勝手に思い込んでいただけだったんだと、思い知らされた。(みんなごめんね!)
で、個展は盛況だったのか?
「個展、盛況だった?」と聞かれると、なんと答えたらよいのか分からない。3日間のうち、2日目と3日目の午前中は来場者が1-2人程度だったり、30秒見て帰る人もいた。なので、けっこう暇な時間もあった。
普通は、来場者数を基準に「盛況か否か」を決めるのかもしれない。私自身、最初の方はどれくらいの人が来るのか、ちょっぴり気になっていた。が、途中からあまり気にならなくなった。結局、たくさんの人に来てもらうことよりも、「この人に見てほしい」「この人に会いたい」という人に来てもらった方が、ずっと嬉しかったからだ。
そもそも「普通」という外部の価値基準に合わせるなんて必要なかったのだ。自分が何を「嬉しい」と感じるのか。それが大事だということが分かった。
やりたいことが分からない時、とりあえずやってから考える
ちなみに、暇な時間はどう過ごしていたのかというと、会場の奥にあるハイチェアから、ただ個展会場を眺めてうっとりしていた。自分の好きな空間で、好きな音楽を聴き、絵を眺めながら、コーヒーをすする。「これ、めっちゃ幸せやん~!」といったノリで、たそがれていた。
なお、こう書くとキラキラ感があるが、見た目は【防寒着だるま】だった。入り口を開け放っていた都合上、会場内が寒く、暖房の下でコーヒーカップをもってガタガタ震えている、という状態だった。なので、幸せな光景はあくまで心の中の話。
個展会場を眺めることに飽きたら、感じたことや、次にやりたいことをメモをした。というのも、個展会場を眺めていると、やりたいことが次々と湧き上がってきたため、忘れないうちに書き留めていた。
メンタリングを始めた当初、くまさんに「何をやりたいの?」と聞かれたことがあった。しかし、いくら考えても、やりたいことが何も浮かばなかった。(そして私はダメ人間だぁ・・と反省するループに入る)そんな状態だったが、今ではやりたいことやアイデアが勝手に湧いてくる。多分それは、個展でとりあえず色々やってみたから初めて「次」が具体的にイメージできるようになったのだと思う。
だからもし、「自分が何をやりたいのか分からない」のなら、ほんの少しだけ興味のあることを、一旦やってみる。そうすると、勝手にやりたいことが見えてくる、そういうことなのもしれない。
「美」「好き」のモノサシは人それぞれ
準備の時から「絵は売らないの?」と何人かに聞かれたが、そのたびに「いやいやいや、誰がこんな下手な絵を・・」と激しく遠慮していた。自分の中では、「売る」という選択肢さえ浮かんでいなかった。
が、売れたのだ。しかも4枚も。同じ人に。(※家族ではありません!笑)しかも売れた作品のうちの1枚は、自分の中での「へたくそ1位」のもので、成長を見せるための比較対象として会場に飾っていたものだった。何かの間違いかと思い、買っていただいた方に「本当にこの絵でよいのか?」「タイトルカードにも書いてある通り、自分の中ではいますぐ抹殺したい1枚だけど・・」とお伝えしたが、「自分がいつもランニングしているコースなので、いいなぁって思って。味があるじゃないですか」と、言ってくださった。え、え、え、どういうこと?!と驚きの中、4枚の絵が売れていった。後日、くまさんにこのことを話すと、ちょっぴり諭された。
つまり、「美」や「好き」のモノサシは、人それぞれだということだ。だから、「上手い下手」ということに、いちいち執着しなくていい。世界でたった一人かもしれないけど、自分の絵を「いい」と思ってくれる人がいる。価値を感じてくれる人がいる。それで十分。
こうした言葉にすると、当たり前のように聞こえるが、自分が当事者になると、なかなか素直にそう思えないのが厄介だ。きっと心から思えるようになると、毎日がさらに幸せになるんだろな、そう思った。
旅行に行くよりも全然いい経験だった
ぶっちゃけ、個展開催にいくらかかったのか。トータルで14万円弱だった。個展経験がないのでこれが高いのか、安いのか分からないが、自分が第三者として聞いたら「たかっ!!」って思うだろう。小旅行にいけちゃうような額だ。
じゃあ「これだけお金をかけたことに、後悔してるか?」と聞かれたら、胸を張って「まったく後悔していない。むしろ安い!」と、今では答えられる。
少し前の記事にも書いたが、私にとってこの個展は「自分を好きになり、自信を持つこと」「やりたいことをやって幸せに生きること」へのリハビリであった。結果はどうだったか?
個展を開催することができた。友人や同僚とのつながりを感じた。大好きな空間に3日間もいられた。やりたいことが次々と浮かんできた。ついでに絵も売れた。「やればできる!!」というポジティブな気持ちをつかんだ。
自分の人生において、想像も、期待もしていなかった景色が、現実になったんだから、とっくに14万を超える価値のある経験だった。
ここまで、人生初の個展について5回シリーズでご紹介してきました。人生におけるモノサシや価値を考え、自分と向き合うことで、小さな幸せを掴めた気がします。
個展開催まで応援してくださった全ての方に感謝しつつ、誰かのトライにつながることを願って、筆を置くことにします。
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