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"リーン・スタートアップ"を読んだ

『リーン・スタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす』

本書は自分にとって個人開発をしてみたいと思うきっかけになった一冊。しかし、個人開発をはじめてみたものの、なかなか進まず苦しんでいるので、足元を確認する意味でもう一度読み直してみた。

気になったポイント

1. 「まずやってみよう」ではなく、起業に伴うチャンスを現実のものとするマネジメント原則が必要
2. できるかぎり早く、作るべきモノ──顧客が欲しがり、お金を払ってくれるモノ──を突きとめること
3. スタートアップにおける価値とはモノを作ることではなく、検証を通じて「持続可能な事業の構築方法を学ぶ」こと

フィードバックループ

1. 構築─計測─学習(Build-Measure-Learn) というフィードバックループをハンドルとして継続的に調整を行う
2. このフィードバックループの一周に要する トータル の 時間を最小にすることが大事
3. 学びの中間目標(コンバージョンレートやサインアップ率等、売上等ではなくもっと手前のメトリクス)で測る

学び

  • 旧来の総括マネジメント手法では現状に対処できないと気づいたアントレプレナーや投資家の一部に、方法論をあきらめて「とにかくやってみよう」と言いだした人々が存在することだ。マネジメントに問題があるのなら無秩序にすればいい、というわけだ。しかし、これでうまくいかないことも、私は経験から断言できる。

  • スタートアップのように革新的で破壊的、混沌とした組織が管理できる、いや、それを管理 し なけれ ば なら ない というのは、直感的におかしく思えるかもしれない。仕組み作りやマネジメントは退屈でつまらない、逆にスタートアップは活力にあふれておもしろいと思われることが多い。しかし、スタートアップの肝は、成功し、世界を変えていくところにある。そのために人々がつぎ込む情熱やエネルギー、ビジョンを無駄にするのはもったいない。我々はもっと上手にスタートアップをマネジメントができるし、そうしなければならないのだ。

  • スタートアップの目標は、できるかぎり早く、作るべきモノ──顧客が欲しがり、お金を払ってくれるモノ──を突きとめることだ。

  • つまりリーン・スタートアップとは、サイクルタイムの短縮と顧客に対する洞察、大いなるビジョン、大望とさまざまなポイントに等しく気を配りながら、「検証による学び」を通して画期的な新製品を開発する方法なのである。

  • ごく小規模のスタートアップでも、既存顧客をサポートしつつイノベーションを生みだす努力をしなければならない。

  • リーン・スタートアップでは、検証による学び(validated learning)という概念で学びをとらなおす

  • スタートアップの場合、価値の定義自体を見直す必要がある。つまり、何が顧客にとっての価値を生みだすのかについて最初の数カ月間で学んだこと──それこそがIMVUにおける前進の実体だったのだ。

  • 顧客が本当に望んでいることを見つけ出し、その望みに製品を合わせていくという地道な作業だった。そのために我々は、自分たちのビジョンと顧客が受けいれてくれるものをひとつにまとめることを自分たちの仕事だと考えた。これは顧客が考える望みにただ従うのでもなければ、こういうものが欲しいはずだと顧客に押し付けることでもない

  • 戦略が改善された結果、製品開発の生産性が信じられないほどあがったのだ。その理由は仕事をそれまで以上に一生懸命やるようになったからではなく、顧客が本当に願っていることに合わせて上手に仕事をするようになったからだ。

  • 我々がやらなければならなかったのは、虚栄の評価基準と「成功劇場」に頼りたいという誘惑に負けず、製品開発という形で大きな成功に向けて少しずつ進んでいると証明することだった。

  • 成功とは機能を提供することではありません。成功とは、顧客の問題をどうしたら解決できるのか学ぶことです。

  • おそらくこれが一番大事なポイントだと思うが、実験に使うシステムを種として充実したサービスを作り上げることができる。実験システムを出発点として継続的に改良を施せば、ゆっくりかもしれないが確実にサービスを拡充していける。

  • 彼らに共通する問題は、「十分な調査にもとづく計画を信じる」という一般的な総括マネジメント手法の常識を乗り越えなければならない点だ。計画というのは長期にわたり安定した運用実績があってはじめて効果を発揮するツールである。

  • 大事なのは、このフィードバックループの一周に要する トータル の 時間を最小にすることだ。

  • スタートアップに科学的手法を適用するためには、まず、検証する仮説を選ばなければならない。スタートアップの計画でもっともリスクが高い要素、ほかのすべてを支える基礎となっている部分を私は 挑戦の 要(leap-of-faith) となる仮説と呼んでいる。なかでも重要度が高いのが価値仮説と成長仮説だ。

  • 成功と失敗を分ける鍵は、計画のうまくいっている部分と道を誤っている部分をみつけられるだけの先見性と能力、ツールをアントレプレナーが持っており、戦略を状況に順応させられるか否かである。

  • トヨタ流はほかのマネジメントアプローチとどこが違うのかとトヨタの人々に聞いたとき、一番多かった答えが現地・現物だった。製造、製品開発、営業、物流、広報など、部門が違っていても同じだった。自分で現場に出むき、自分の目で確かめなければ、事業が抱える問題をごく一部であっても本当に理解したと信じることなどできない。

  • 私は皮肉な話だといつも思うのだが、このようなアプローチは多くが実験的・反復型で、すばやいプロトタイプ作成と顧客の直接観察などを通じてデザイナーが進むべき道を示す。であるにもかかわらず、デザイン会社との取引形態から仕方がないのかもしれないが、最終的にクライアントに提出されるのはひとつにまとめられたものだけとなる。ここですばやい学びも実験も終わってしまうのだ。

  • そこをなんとかしようと新しく開発された手法がリーン・ユーザーエクスペリエンス(リーンUX)である。この手法では、顧客の原型を事実ではなく仮説だと考える。顧客の特徴は暫定的なものだと考え、その顧客に対して持続的に対応できる戦略であることを検証による学びで確認しようとするのだ。

  • プロトタイプやコンセプト検証と違い、MVPは製品デザインや技術的な問題を解決するためのものではない。基礎となる事業仮説を検証するためのものなのだ。

  • MVPといってもさまざまで、下はすごくシンプルなスモークテストにすぎないもの(単なる告知とあまり変わらないレベル)から、一応はプロトタイプで問題が多く機能も欠けているものまでがありうる。

  • やらなくても学びはじめられることはどれほど重要に見えてもすべて無駄──これがMVPについて学ぶべきことなのだ。

  • 誰が顧客なのかがわからなければ、何が品質なのかもわからない。

  • 彼らの課題はそのアイデアに優先順位をつけて実行すること──だからこそ、スタートアップに生き残れる希望があるのだ。

  • アイデアを知られたら他社のほうがうまく実行できるのであれば、いずれにせよそのスタートアップに生き残れるチャンスはない。チームを結成してアイデアを追求するのは、構築─計測─学習のフィードバックループを誰よりも速く回転させられると考えるからだ。その考えが正しい場合、競合他社にアイデアを知られても同じことだ。

  • このジレンマを解消する鍵はサイクルのくり返しを決めておくことだ。MVPでどのような結果が出ても絶対に希望は捨てないと、あらかじめ心に決めておかなければならない。成功するアントレプレナーというのは問題に直面したからといってすぐにあきらめもしなければ、飛行機が地面に激突するまでがまんもしない。忍耐力と柔軟性を兼ねそなえているからだ。

  • 立ち上げ後のスタートアップが直面する現実とは大きく違うのが普通だ。その中でスタートアップがやらなければならないのは、(1)現状を的確に計測し、評価で明らかになった厳しい現実を直視する、(2)事業計画に記された理想に現実の数字を近づける方法が学べる実験を考案する、である。

  • 事業計画に置かれたたくさんの仮説からひとつを選ぶ場合は、なるべくリスクの大きい仮説にすべきだ。持続可能な事業を実現できるレベルまでそのリスクを緩和できないのであれば、ほかの仮説を検証しても意味がない。

  • コホート分析の場合、総売上や総顧客数のような総計あるいは累積値を見るのではなく、製品と新しく接する顧客グループの成績を個別に見る。この互いに独立したグループをコホートと呼ぶ。

  • 学びの中間目標(コンバージョンレートやサインアップ率等、売上等ではなくもっと手前のメトリクス)は「意味のない計画を鉄の規律で実行しているのかもしれない」状況に着目し、負のスパイラルを防止する。枠組みとして革新会計を採用すれば、会社が泥沼にはまり、方向転換が必要となった場合にはっきりとそうわかるのだ。

  • 特筆すべきなのは、このやり方を採用すると作り込んだ新機能の数ではなく、検証による学びをベースに生産性を測るようになる点だ。

  • 学びの評価尺度としてはコホート型のレポートが最高なのだ。コホート分析を使えば、複雑な行為を分析して人間をベースとしたレポートにできる。コホート分析とは「この期間に我々の製品を利用した人のうち、我々が注目する各種の行動を取った人数は行動ごとに以下のとおりである」という形で論ずるものだからだ。

  • スタートアップに科学的手法を勧める理由は、人間の創造性が大きく花開くようにしたいからであり、誤った判断でがまんを決めるほど創造性を破壊するものはない。市場から得たフィードバックをもとに方向転換を決められない企業は、ゾンビの世界にとらわれてしまう。

  • 方向転換するからといって、それまでにやってきたことをすべて捨て、一からやり直す必要はない。そうではなく、ピボットとは、それまでに作ったものや学んだことをその目的を変えて再利用し、もっと優れた方向をみつけることだ。

  • トヨタの場合、バッチサイズの縮小で工場の効率が高くなった。これに対してリーン・スタートアップの場合、たくさんのモノを効率的に作ることが目的ではない。持続可能な事業の構築方法をできるかぎり短時間で学ぶのが目的だ。

  • 私のメンターでもあるベンチャーキャピタリスト、ショーン・キャロランはこう表現している──「スタートアップは飢え死にしない。溺れ死ぬのだ」。製品を改善するアイデアなら数えきれないほど浮かぶが、このようなアイデアの大半はごくわずかな違いしかもたらさない。

  • 昔はイモムシがチョウになるなどとよく言われたが、そのようなイメージでスタートアップを見るのはもう正しくない。スタートアップも大企業もさまざまな仕事を同時並行でこなし、オペレーショナルエクセレンスと破壊的イノベーションの両方を追求できるようにならなければならない。

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