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2024年に鑑賞した映画ベスト10選
音楽、映画、本、喫茶巡り
なんだか典型的な趣味をしている私。
今年は実習で忙しかったけど、たくさんの良い映画に出会いました。
そんな私の2024年に鑑賞した映画ベスト10選。
大きな家
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児童養護施設に住む子どもたちのドキュメンタリー映画。教育を学ぶ私にとってすごく大事な映画になった。
ただ、施設の子どもたちと職員さんのありふれた日常生活が映し出されているだけだが、この「ありふれた日常生活」を送るまでにどれほどの苦労があったのか。少しふれたら壊れてしまいそうな日常を守るためにみんな頑張ってるんだ。「普通」って「家族」って「幸せ」ってなんだろう。
子どもたちの本音を聞いて、日常生活や心にお邪魔した気分になって、感動したわけじゃないんだけどなんだかよく分からない涙がずっと流れていた。
配信やレンタル予定もなく、映画館でしか観れない映画。サブスクで十分に映画が楽しめるこの時代に映画館に行く人は減ったと思う。でも私は、この映画を観て映画館にわざわざ足を運ぶ価値を感じた。ライブハウスもそうだけど、「リアル」をみるために私はわざわざ映画館に行くんだ。
ロストケア
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教員になるためには、老人ホームなどで「介護等体験」をしなければならない。私は今年、デイサービスで実習を行った。
「老い」について考えてしまった。誰もが必ず老いていく。忘れていく。動かなくなっていく。今までできたことができなくなっていく。みんなが誰かに助けてもらわなければならない。
怖いと思ってしまった。自分はまだ21だが、それよりも家族も老いていくことが受け入れられない。実習が終わった後に久しぶりに会いに行った大好きなおばあちゃんが忘れっぽくなっていた。認知症で施設に入っているひいおばあちゃんに「あなた誰?」って言われたことがフラッシュバックした。そんな時に観た映画。
映画を観てさらに怖くなった。現実は、綺麗事では済まされない。日本の社会福祉はこんなにも脆弱なのか。知らなかった世界。
大切な家族だからこそ、葛藤がある。目を背けてはいけない問題だと思った。
PLAN75
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「ロストケア」と同時期に観た映画。この映画も老いについて考えさせられる。
「プラン75」という75歳から「自由に」安楽死を選べる制度があるのだが、私には自由になんて言葉だけで、実際は国がめちゃくちゃ推進して洗脳しているようにみえた。死ななくたって良いのに、自由に、次世代のために、なんて謳い文句を掲げて、セーフティーネットをつくることもなく老人を死に追いやっている。死を選ぶしかない。
遠くない未来本当にこんな制度ができるかもしれない。私だったら安楽死を選ぶと思う。でも、家族には選んで欲しくない。きっとそんな人ばかりな気がする。特に私と同じまだ老いと遠い人ほど同じ意見を持つのではないか。
この先生きていくことが怖くなる。でもこの映画は希望も描かれていて良かった。希望と言えるほどの希望じゃないかもしれないけれど、強く生きたいし強く生きていて欲しい。
市子
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新聞か雑誌で知って、今私が観るべき映画だと思って寒い中大学終わりに映画館に行ったのをよく覚えている。
この映画もまた、日本の社会福祉の脆弱さを痛感する。無戸籍者の特集をNHKで見たことがあって彼女の問題にすぐ気づいた。問題は無戸籍以外にもたくさんあってただただ苦しい。
どんな人も受け止めるセーフティネットはどこにあるのか。私は全ての子どもが通う学校もその一つの役割を担っていると思っていたけれど、そこからこぼれ落ちている子がたくさんいるのだろう。そもそも人生のレールがない場合はどうすれば良いのか。レールを外れるとかそういう問題以前だ。救いようがない、辛すぎた。
でも私はどんなに考えても、市子の気持ちを理解することはできないんだと思う。
杉咲花がとても好きだ。今回も杉咲花の目に吸い込まれた。
すばらしき世界
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この映画最初いつ出会ったのか忘れたけど、この映画で私は役所広司の虜になる。(すばらしき世界を観た次の日にPERFECT DAYSを観るの最高なのでおすすめです!!!!!!私は好き!)
“この世界は生きづらく、あたたかい”
この映画を言葉で表現すると、もうこれが全てだと思う。
まっすぐしか生きられない三上は、まっすぐ生きさせてくれない普通の社会でどうやって生きていくのか。普通の社会では折り合いをつけて適当に生きていく必要がある。あたたかい人の繋がりがつくられていく中で、良い人ばかりじゃないことを実感する。
自分が心の底から変わろうとしたり、周りの人の支えがあって初めて人は変われるのか。人は簡単には変われない。
PERFECT DAYS
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みんな大好きパーフェクトデイズ。
私も大好きなさよならポエジーってバンド好きな人もれなく全員好きだって偏見がある。
直接は関係ないけどこの映画を観て、私は人生で初めて「断捨離」というものをした。ずっと片付けが苦手で、できなかったのに、自ら断捨離をした。
人生に必要なものは、大切なものはきっとそんなに多くないんだ。今あるものを大切にすれば、今を生きることができる。多くのものを手放せずに、さらに多くのものを求め続けている私にそう気づかせてくれた映画。確かにこの映画は大きな変化はないけど、間違いなく私に大きな変化をもたらしている。ただ、平山が憧れである。
平山とニコが読んでいた本も読んだ。木/幸田文と11の物語/パトリシアハイスミス。
私も平山みたいに生きたい。
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ケイコ目を澄ませて
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今年、大学で手話通訳士の試験を受けられるよというところまで手話を勉強し終わった。言語系の勉強が苦手な私にとってはとても大変で、後半はほぼ半泣きの状態で手話通訳をしていたのを思い出す。
この映画は聴覚障害にすごく焦点を当てているって訳じゃないのだけど、聴覚障害者がコロナ禍に苦しんでいたことなども描かれている。
大きな出来事がある映画ではないのだけど、綺麗で静かだけど熱くて観て良かったと思えた。
淡々としていて曖昧で、でも心がいっぱいになるケイコの日常をみることができて良かった。
岸井ゆきのも杉咲花と同様好きな俳優の1人で、吸い込まれる演技をするなと思う。
ぼくが生きてる、ふたつの世界
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「コーダ愛のうた」や「デフヴォイス」で今は割と知られるようになったコーダのお話。
両親が聴覚障害者でその間に生まれた健常の子どもをコーダという。小さな頃から「聴こえるから」と通訳させられることが多く、ヤングケアラーになる。
それがすごく分かった映画。映画やドラマで本で、大学の講義で、実際に聴覚障害者の話を聞いて、手話を学ぶ人間として、分かった気になってた。この映画は、実際のコーダの方が書いたノンフィクション本が元になってることもあってすごくリアルだった。映画館で泣いた。また分かった気になってしまったかもしれない。
周りから見れば言ってはいけないこと、でも子どもはどうして言ってはいけないのか分からない。当たり前だ。生きている年数も知っている情報量も全く違う。大人が子どもに「そんなこと言っちゃいけない」なんて言うのはただの押し付けだと思った。
怪物
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気になってたのに映画館で見損ねたのよく覚えてる。大好きな是枝監督の作品。
誰が怪物なのか。そう思って怪物を探しながら観ている視聴者に対して、お前も怪物だよと気づかせるような構成。私も怪物の1人だな。面白かった。
子どもを大人のルールで縛り付けて、大人の価値観を押し付けること、その怖さを感じた。悪気がなくてもやってしまいかねない。子どものためだと言って、子どものことをよくみずに、本人の言葉をきかずに、知らず知らずのうちに大人に考えを主張して、勝手に押し付けてしまいそう。
子ども2人の世界尊かった。あと子役の顔が綺麗すぎる、演技も素敵だった。
岬の兄妹
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うーん、しんどい。しんどすぎる。
しんどすぎて、途中で観るのやめようかなと思った。そんなこと思ったのこの映画と「子宮に溺れる」くらい。もうリアルすぎて。
私は障害をもつ子どもたちと関わる仕事をする身として、考えなければならない。学校を卒業して、社会に出た障害をもつ人たちが安定で豊かに人生を過ごせるように。必要な支援からすり抜けてしまっている人が間違いなくいる。当事者目線で描かれたこの映画を観て、綺麗事じゃだめだなと改めて。
リアルで重くて悲しい映画、それだけで済ませていい作品ではないと私は思う。
以上!
こうやって書いてみると映画に私の1年間の想いと学びが全部盛り込まれてる気がする。
来年もいっぱい映画を見て、いっぱい考えて学んで、知らない世界を知りたい。