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日本建築の屋根を見ると!?

九條です。

皆さま、日本建築の屋根を観察された(見較べられた)ことは、おありでしょうか?

日本建築の屋根には、いくつ種類があると思われますか?

代表的な日本建築の屋根には、

【日本建築の代表的な屋根】
(1)切妻きりつま造(切妻屋根)
(2)寄棟よせむね造(寄棟屋根)
(3)入母屋いりもや造(入母屋屋根)

の3種類があります。

なお、宝形造ほうぎょうづくりの屋根はあまり一般的ではないので、ここでは除きます。


【切妻造(切妻屋根)】
我が国では最も古い形式の屋根で、平らな板を2枚立て掛けた(合わせた)ような形の屋根です。

構造が単純で、最も強度がある屋根です。風雨に強く雨漏りもほとんどしません。

古代においては最高の格式を持つ屋根でした。現在でも伊勢神宮や住吉大社などはこの形式の屋根を用いています。

切妻造(切妻屋根)/大阪・住吉大社

【寄棟造(寄棟屋根)】
切妻屋根の両側面(妻部)にさらに三角形の屋根を付けたような形の屋根です。

切妻屋根よりも少し構造は複雑化しますが、建物の四方が屋根に覆われているため雨漏りは少なく、また両側面(妻面)を風雨による傷みから護る役割もあります。

我が国では初期(古代)の仏教寺院の金堂などに用いられました。

寄棟造(寄棟屋根)/奈良・興福寺中金堂
寄棟造(寄棟屋根)/奈良・東大寺金堂(大仏殿)

【入母屋造(入母屋屋根)】
切妻屋根の正面と裏面の二方向の屋根を下方へ延長し、さらに両側面(妻面)下方にも屋根を付け足した形です。

屋根の真正面と裏面から見ると、両側面(妻面)下方の屋根が外側へ飛び出しているように見えます。

構造が複雑で重くて壊れやすく、また雨漏りもしやすいという欠点がありますが、見た目が荘厳で雄大なため、中世以降、現在まで日本において最も格式の高い屋根となっています。

入母屋造(入母屋屋根・正面から)/京都・醍醐寺金堂
入母屋造(入母屋屋根・斜め前から)/京都・醍醐寺金堂

【あまり知られていない秘密の屋根?】
じつはもう一種類、非常に古い時代(飛鳥時代)に、入母屋造の原型となった屋根があります。

それは「錣葺(しころぶき)」や「錣屋根(しころやね)」という屋根の葺き方で、切妻屋根の下方の四面に庇のように屋根を付け足した形です。

一見、入母屋造のように見えますが、入母屋造は正面と裏面の大屋根を一気に葺いているのに対して、この錣葺は二段階に分けて葺いています。

すなわち、入母屋造のように大きな屋根を一気に葺きあげるだけの技術がない時代に用いられた屋根の葺き方だと考えられています。

現在残されている例は極めて少ないのですが「仏壇の原型」とも「日本最古の建築模型」とも言われている法隆寺の玉虫厨子(飛鳥時代/国宝)の屋根の葺き方は、この「錣葺(しころぶき)」です。

錣葺の屋根をよく観察してみると、正面と裏面の大屋根の傾斜が二段階に分かれていて、その分かれ目に段差がある事が分かります。

錣葺の例/法隆寺 玉虫厨子(国宝)

また、現代(戦後)に鉄筋コンクリートで再建された例ですが、大阪の四天王寺の金堂も古式に則り、飛鳥時代の「錣葺(しころぶき)」の外観を忠実に再現しています。

錣葺の例/大阪・四天王寺金堂(五重塔の奥の建物)

さて、現存する世界最古の木造建築である奈良・法隆寺の金堂(白鳳時代/国宝)は、もとは錣葺だったようですが(いつ頃かは分かりませんが)、入母屋造に改められています。

錣葺から入母屋造に改められた法隆寺金堂(国宝)

【まとめ】
いかがだったでしょうか?

日本建築は新たに建てられる機会が減ってその総数を減らしてきていますが、屋根をじっくりと観察すると(やーねー)、その造りや格式、変遷など、いろいろな事が分かり、なかなか面白いと思います。^_^


©2024 九條正博(Masahiro Kujoh)
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