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1歳を過ぎたきみの全てを覚えておきたい

1年前の夏に、きみは産まれた。
お腹の中の、暗くて、あたたかく、くるんと、包まれた、そんな場所から、一気に別世界に飛び出して、そして、1年かけて、一緒にこの世界をゆっくり味わってきた。

私は、8月の1歳の誕生日を過ぎて、しばらく経ったころにやっと、「ああ、1年経ったんだ」と、秋の気配を感じる空を見て、しみじみ感じた。季節はめぐって、また2回目の冬が来る。

1歳になったきみは、本当にますますかわいくて、毎日困っている。きみは外の世界や他者としっかりやりとりをして遊ぶということができるようになった。

私が特にいつも幸せに包まれるのは、きみと言葉だけではないもので通じ合える瞬間。不思議なくらい、手に取るようにきみの気持ちがわかる。言葉を発していないのに、心のずっと中心に言葉がふってきたかのようにわかってしまう。

ママに見て欲しくて、1人遊びの途中でこれみてこれみてという表情で振り向き、私が楽しいねーと共感すると、喜びが増した雰囲気が2人の間に流れる。椅子に上れた嬉しさで誇らしげに振り向き、私がやったね!とはいタッッチすると、きみからはますます高鳴るワクワクが溢れ出す。いないいないばあをしていると、きみはおどけてわざと変な行動、今の遊びの中でルールとして2人でやっていたことではない何かをおりまぜて、そして笑い出す。「そっちから出てきたのー!!」「えへへ」と2人で同時に笑い出すんだ。同時に。面白さが2人の中に流れ込む。彼女が1人でどうしてものぼりたいけどのぼれないベットの横で悪戦苦闘している時、ほんの少し私が目を離す。すぐに部屋に戻ると、ベットの上にちょこんと座り、ワクワクしてこちらを見ている表情の彼女と目が合う。いつもすぐにちょろまか動くきみは、私が戻ってくるまで、じーと正座のままドアの方を見ていたようだ。「ママが戻ってきた時私がここにいたらびっくりするだろうな」そんな気持ちで待っていたのだろう。「ええ!のぼれたのー!」と驚くと、「えへへ」と嬉しそうにそこからごろんとベットの上を飛び跳ねるように寝そべってゴロゴロ遊び出す。

今のきみは、何でも知りたいし、何でも見たいし、何でも真似したい。そんなお年頃。ママが「あれ?」という顔をすると真似して「ん?」という顔をしたり、ママがお名前を呼ぶと「はーい」と返事したり、お互いの名前を呼びあったり、いないいないばぁごっこをしたり、そんなことをしているとあっという間に時間がたつ。できることなら家事も何もしないでずっときみと遊んでいたい。

特に、ばいばーいにはまっていて、電車や大きな車が通ると、小さな腕をめいいっぱい伸ばして手をひらひらさせている。「ばいばーい」ではなく「だいだーい」って言うんだ。家にあるうさぎのおもちゃ(ブルーナボンボン)に乗る時も「だいだーい」って言ってから乗るし、部屋と部屋の間を通る時とか、廊下にでる時もハイハイしたあと、くるっと振り向いて「だいだーい」とこっちを見て、手をふる。
「おでかけですか?」と聞くと、にっこり微笑んでまんざらでもない顔してまた2、3歩ハイハイして振り返り「だいだーい」と言う。「じゃあここで待ってるよー、見てるからねーいつでも帰ってきてねー」と答えて見守っていたけど、たまにそのすきに危ないものをサッと隠したりもしてた。

そうそう、それに面白いのは、きみはパパと遊んだり抱っこされたりして楽しくしていたかと思うと、「ママに抱っこ!」となる時がある。パパからきみを受け取ると、パパに向かって「だいだーい」と言う。その反対でママがパパに渡した時も言われるんだ。その時の言い方は、はーいもうパパ(ママ)はいいですよぉーという軽快なだいだーいで、勿論そのきちんと自分の感覚を自由に表現してる姿が何とも愛おしいと思っている。

今日のだいだいのことだ。洗濯物を干しに窓の外に出たら、後ろからついてきたきみはええっとショックを受けた顔をして「ふえええ」と目にうっすら涙をうかべてにママに「ふえ!え!」と何か訴えたんだ。私はしゃがみこみ、ちょこんと座っている小さなきみを覗き込みながら聞いた。「どうしたのかな。まだ洗濯物で遊びたかったのかな。干して欲しくなかったのかもしれないね。」と声をかけた。きみは「ふん……」と落ち込んだ顔をした。ママもしばらく「うんいんそうかそうか」と、相槌をうった。するとなぜか、きみは、くるっと振り返りリビングの方に向かおうとして振り返り「だいだーい」と笑顔で言った。気持ちが落ち着いたみたいだ。かわいいね。きみがこうして落ち込んだり、泣いたりした時は、なんだか、自分が菩薩のようなマリアになったと錯覚してしまうとても慈愛に満ちた、心も体も優しく抱きしめてあげたい、そんな思いでいっぱいになる。

そんなこと言うと、いつでも楽しく穏やかにいるように聞こえるかもしれないけど、急にぐっと疲れが押し寄せる時もある。きみはご飯を食べたり食べなかったり、夜寝たり寝なかったりする。何度も起きて眠れなかった日の朝、そっと洗面所に行き「眠い…」と涙をこぼして弱音を吐いたりもする。パパが仕事に行く時は必死に止める時もあるから、それを抑えながらパパを見送るのだって大変で、ママが見えないと泣くから、ママはトイレだっていつも大慌てだった。
ふと、これはいつまでも続くかなぁ、この先もっと大変なことがあるかなぁとわからない未来に不安になることもある。人はわからないことに、不安になるからさ。そんなの当たり前だよね。

でも反対に、こんなにも楽しい日々がいつまで続いてくれるんだろうとも思っている。それはこの1年かけて心の底からわかったこと。あんなに永遠のように感じた慌ただしく大変な0歳がこんなに早く終わった。きみはすぐに変化して成長するから、今しか味わえないことの連続なんだ。そしてそれは、最高の一瞬ばかり。

だから、こうして日記を書いている。



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