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【俳句】ことしの夏は。

お気に入りのマグカップを割ってしまった時。
なぜだか、残念だという気持ちがおこらなかった。
片づけなくちゃ、
発生したばかりのしごとを冷静に見つめながら、同時に
めんどくさ。
少しばかりのうんざりした気分。

気に入っている・惹かれる・なんかいい・好き
そんなものばかりでじぶんのスペースを
囲んでおきたかったはずなのに
いつのまにかなくなってしまったあれやこれ、
ほんとうに好きだったのかな。
というか、
ほんとうは何も好きになれないのかな、
わがままなじぶん以外。
(おいコラ)

そんなふうに冷たい目でぼくは
ぼくを観察していた夏でした。
いつの日か、あのマグカップみたいに
ぼくが壊れる日が来て、
あのマグカップに対して感じたように
あっさりとぼく自身を手放せそうだな、
という夏でした。


   びいどろのとすれちがふ夜の秋    梨鱗

   目高の子透けはらわたのやうなもの

   そんな眼で蛇へと吸ひ寄せられる足

   明日死ぬだらう羽蟻がひしと玻璃



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