リコリス・リコイル公式note
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『A Day of No Guns』④
散開するように、三人はそれぞれにプリクラ筐体から出る。
千束はシャッターのしまっている出入り口側のスーツ、たきなは事務所へ続く扉の前に立つマッチョへ。カスミもまたたきなから離れて大きく迂回するようにしてマッチョの方へと向かった。
打ち合わせたわけではなかったが、自然とそうなった。
それは恐らく、スーツの方が腕が上だと千束もたきなも判断したせいだろう。
たきなは、千束の心配はもう辞めて
『A Day of No Guns』③
「あの、千束……? これは?」
「ほら入って入って」
ゲームセンターの一角に複数台鎮座する、女性の顔がドでかく写る垂れ幕で覆われた謎の大型筐体。
千束はその中の一つに颯爽と入って行くのだが……たきなとカスミは思わず立ち止まってしまった。
「カスミ、これ、知ってます?」
「さぁ、何でしょうか」
情報を取得しようとしばし観察していると、どうやら証明写真を撮る要領でシールを作る機械らしい…
『A Day of No Guns』②
たきなが見た限り、そのサードリコリスの顔は完全に他のゲームセンターの客と同じで、今、目の前で起こった事が現実として受け入れられず、驚き、そして硬直している……というような感じである。
どう見てもあのスーツとマッチョを処理するために現場に侵入し、作戦を遂行中のリコリスには見えなかった。
「へい、彼女!」
ベンチに座っていたそのサードの左隣に、千束は声をかけつつ座った。
……が、サードは
『A Day of No Guns』①
たきなは、千束に頬ずりするようにして顔、そして体をも寄せる。
肩、そしてお互いの髪がそっと触れ合うも、頬同士は触れあう事はなかった。
たきなの頬が感じたのは千束の細く長い指と、スマホの硬い感触。
「もしもーし」
千束の声から数秒を経て、二人の間に挟まるスマホから聞き覚えのある声――楠木司令だ。
『……何だ? 今忙しい、後にしろ』
「こっちも結構緊急なんですけどぉー。言っちゃぁなんで
『ザ・アンリマーカブル・ナイト』⑤
千束はピザを大皿に載せると、小上がりの方へと持って行く。中央にちゃぶ台が再び鎮座し、それを囲むようにL字型に布団が備えられた、それ。
まさに、夜中のパーティ仕様である。
そこにカトラリーやピザカッター、皿、そしてコップ……トドメに14インチタブレットがスタンドで立たせられているという状態だった。
そこにトコトコと店の奥からクルミが大型のポテトチップを持ってやって来ると、彼女はそれをた
『ザ・アンリマーカブル・ナイト』④
寝なきゃいい。
寝る前に食べると太る。それは問題だ。しかし空腹だ。……ならば、寝なければいい。
たきなや千束の中には存在しない発想だった。
まさにコペルニクス的転回であり、常識を打ち破る新たな、そして見事な回答と言えた。
これまでも時の刻みに人間は支配され続けてきた。
時計など想像もされなかった原始時代であっても、日は登り、沈んだ。その間――昼と夜に人々はスケジュールを組み、それ
『ザ・アンリマーカブル・ナイト』③
「明日、何食べようか。朝ご飯」
……また食事の話が始まった。
しかし、予定を立てておくのは悪くない。起きたらすぐに準備に入れば無駄がないだろう。
たきなは瞼を閉じたまま付き合う事にした。
「……そうですね。普通に考えるなら、ご飯を炊いて、お味噌汁にお漬物と……納豆。あ、磯辺焼き用ですけど、いい海苔を仕入れていたので、それ、少しもらいましょうか。それと鮭を焼いて」
「いいねぇ! 日本の朝だ
『ザ・アンリマーカブル・ナイト』②
「そうじゃなくて、ご飯」
「……は?」
千束が何を言い出したのかわからず、たきなは思わず振り返ってみると……彼女もまたきょとんとした顔をする。
たきなの眉間に今、皺が寄っている理由はなんぞや? とでも思っているかのようだ。
「千束」
千束がドライヤースイッチを切る。
『ザ・アンリマーカブル・ナイト』①
※本作は錦木千束と井ノ上たきなのどうでもいい日常を切り取ったものです。過度な期待は大変危険ですのでおやめください。
「あー、なんか無駄に疲れたー」
カランカラン、と扉に取り付けられたカウベルが鳴る。
たきなと千束が喫茶リコリコの扉を開けたのは、丁度深夜〇時を回ったタイミングだった。
予想以上に任務が長引いてしまった。
とはいえさしてハードでもない任務である。
喫茶リコリコ営業終