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さよならのあとで

ヘンリー・スコット・ホランド 髙橋和枝(訳) 2012 夏葉社

手のひらに載るような、小さな絵本。
素朴な装飾と古風な字体の表紙。
ひっそりとしたたたずまいで書架に並んでいた。
存在感は控えめなはずなのに、目が惹かれ、手に取ると、離せなくなった。

1ページに1行か2行。
たっぷりの余白と余韻をもって語られる詩。
たっぷりの空間に柔らかな線で描かれた絵。
その空白が、時間をゆっくりと進める効果を持つ。
一つ一つの言葉や絵に、思いを込めながら読むことになる。

死は何でもないものです。
私はただ となりの部屋にそっと移っただけ。

移ってしまって見えなくなったその人からの温かい語りかけの言葉だった。
さよならのそのあとで、それでもなにも変わっていないのだと教えてくれる言葉。
優しくて穏やかな、慰めに満ちた一冊だ。

自分が身近な存在を亡くしたときに思い出したい。
大切な存在を亡くした人に手渡したくなる。
あるいは、まだ死というものを体験していない幼く若い人に、こういうものであるんだよと学んでもらうことにも役立つだろう。


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