香桑

公認心理師・臨床心理士。がん闘病中。 日々のこと、病気のこと、旅のこと、本のこと、食事のこと、こころのこと。 思いつくまま、言葉を紡いでいます。 Twitterと同じ「香桑」の名前に変更しました。 @AilesLibres

香桑

公認心理師・臨床心理士。がん闘病中。 日々のこと、病気のこと、旅のこと、本のこと、食事のこと、こころのこと。 思いつくまま、言葉を紡いでいます。 Twitterと同じ「香桑」の名前に変更しました。 @AilesLibres

マガジン

  • こころに関わるもろもろのこと

    こころに関わる仕事をしているからこそ語れる言葉を、少しずつ紡いでいけたらいいなぁと思っています。

  • ねこたちのこと

    ももたのこと。ももた以外の我が家に来た猫たちの話も書いていければと考えています。

  • がん患者である、ということ

    婦人科がんになり、14年。2019年11月に3回目の手術後、抗がん剤治療。2022年4月に3回目の再発がわかり、2度目の抗がん剤治療中。今回の闘病の記録や、病気に関連して考えたことなど。

  • 我が家のこと

    家族の歴史に関わるようなことを書いていきたいという野望だけはあります。我が家の家族の歴史を通じて、近現代を照射することができれば。

  • 香桑の読書室別室

    #NetGalleyJP で一足先に読んだ本のレビューを中心に、私の応援したい本たちを紹介していきます。

最近の記事

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ももたをたすけてください

動物愛護センターのHPにももたを見つけて、全身の血が引くような思いがした。 ももたの写真が載っていた。 まぎれもなく、ももただ。 小さな写真でもすぐにわかる。 黒っぽい雉猫で、緑色の首輪をして、体格は「大」。 顔にケガをして、ぐったりとしたももたの写真がそこにあった。 ももたが家にいないことに気づいたのは、夕方になってのことだった。 仕事から帰り、家族にももたは私の部屋で寝ているかと尋ねられて否定した。 締め切った部屋は昼間の間に蒸し暑くなっており、入るだけで汗がふきでる。

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    • ポンズにやられた

      その動画は、ある日突然、タイムラインに流れてきた。 長い金髪、太い二の腕のおにーさんが、高らかに歌い上げる。 おはようございます こんちは こんばんは はじめまして おやすみ トゥギャザー ちょっと待て。 お前なにもの。日本語やんけ。 「みんなのうた」か「おかーさんといっしょ」の新曲かいな?という歌詞。 そして、私好みのハイトーンボイスに、私好みのギターの響き。 ザ・リーサルウェポンズというらしい。 買う。 これは買おう。 その前に、サブスクで聞いてみる。 ちっちゃな

      • 我が家には姫がいる

        ももたは今日も元気です。 おなかいっぱいで、ご機嫌さんです。 さて、ももたには弟妹がいます。 そのなかのひとりのことを書きたいなぁ。 便宜上、妹姫と呼びましょう。 姫は、ももたと兄姫の次に生まれた子です。 母親猫が3匹連れてきた子の一匹でした。 こうなったら3匹まとめて世話をするしかないか…?と思って、避妊手術につれていったりなんだりしました。 残念ながら、3匹のうちの1匹の女の子は、家の中に入ってくれず、ついには姿が見えなくなりました。写真の一枚も残っていない子です。

        • 病歴60:わがみを もてあます

          「痩せたら酸素がいらなくなるんだって?」 そう言った緩和ケア医は悪くない。 見せてくれたカルテには、「説明済み」と書いてあるが、二日前に呼吸器科に受診した時、そんなことを聞いていなかった。 ふた月に一度、在宅酸素療法を処方してもらうために呼吸器科に受診する。 念のためにレントゲンを撮るが、肺炎はきれいにおさまっており、徐々に肺活量も回復してきた。 二日前も「肺炎は治っている」と言われて、次の予約日を決めて、それで診察は終わった。 だから、看護師さんに少しぼやいた。 「肺

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        ももたをたすけてください

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        記事

          父は半透明

          今朝方、猫にご飯をあげたあと、ついつい二度寝をした。 その時に夢を見た。 60代ぐらいの父だろうか。 赤い地のネルシャツを着て、少し気難しい顔をしている。 葉書よりも小さいサイズの、いつも愛用しているノートを見ながら、なにやら考えている風情。 今よりも若くて、今よりも髪が黒くて、今よりもしっかりとしていた、思い出の父。 父は、父が書斎としている部屋の、机の前の椅子に座っている。 父が仕事部屋にしていた部屋で、本当はピアノのための部屋にするはずが、父が居座ったからピアノが物

          父は半透明

          感想『八月の御所グラウンド』

          万城目学 2023 文藝春秋 御所にはグラウンドがある。 北側の門から入って右側、梅園のほうだったように記憶している。 運動なんてものとは縁のない生活を好む学生だったので、ぼんやりとした記憶でしかないけれど、確かにある。 あの頃でも、京都の夏は沖縄より暑く、京都の冬は北海道より寒い、などと話していたものであるが、今は一層暑いだろう。 そんな暑い京都と、寒い京都と、それぞれを舞台にした二つの物語に、笑ったり泣いたり忙しい読書となった。 冬の女子駅伝では、御所に沿った懐かしい

          感想『八月の御所グラウンド』

          読書ブログの思い出

          本を読み、その感想をブログに書く。 それを始めたのは、いつだっけ。 パスワードも忘れてしまいそうと思いながら調べようとしたら、一年以上更新していないのでロックされていた。 これを機に思い切って削除することにする。 ちょっと寂しいけれど。 noteも、このサービスが終わってしまえば、私の書いた文章も消えていく。 そう思えば、もう少し、気楽に言葉をつづってもいいのかもしれないなあ。 読書をブログを始めた理由はいくつかあった。 昔は自分の書いたものを全部残しておきたくて、それで

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          読書ブログの思い出

          感想『照子と瑠衣』

          井上荒野 2003 祥伝社 Twitter(今はXという例のやつだ)で、佐賀之書店さん(https://x.com/Sagano_Book)が、ほんま大賞を紹介しているポストが流れてきた。 これは、「テルマ&ルイーズ」じゃん! と懐かしい映画がぱっと頭に浮かんだ。 タイトルも、まんまだし。 ああそうか。1991年から、およそ、30年が経った。 テルマとルイーズなら、今も世界に生きているとしたら、立派に老女になっているのかしら。 照子と瑠衣は、70歳。シルバーのBMWに乗っ

          感想『照子と瑠衣』

          2年ぶりの夏

          全力で夏ばてに向かって疾走している。 夏って、こんなに暑いものだっただろうか。 7月に入った途端の猛暑と、雨が降ったかと思えば豪雨。 この不安定な天気のせいで、汗びっしょりになる日と頭痛になる日が交互にくる。 こころなしか食欲も落ちてきたように感じるのに、体重が落ちないのはなぜだ。 きっと、自炊をしている人は全国で感じていると思うのだけれども、暑い台所で、熱い火を扱うのが億劫で仕方がない。 たとえば、夏の代表のようなおそうめん。食べる時はすずやかでも、茹でるのは熱くて暑い

          2年ぶりの夏

          父はオーパーツ

          今月は、私が風邪を引いた。高熱を出したのは1日だけだったが、咳発作が続いた。 昨年のコロナ罹患や間質性肺炎を思い出したが、三週間してやっと落ち着いてきた。 一緒に住んでいるので、家族も同じく、父は発熱し、母は咳を患った。 父は発熱時に立てなくなり、救急搬送してもらい、そのまま、今も入院している。 初めて、付き添いで救急車に乗った。自分が搬送された以外では、初めてだ。 電話で救急車をお願いするのは、だいぶと、慣れてきた気がする。 こんなことがあると、父のいない日が近づきつつ

          父はオーパーツ

          夜が明けると

          夜が明けると、太陽が大地を焼く。 日が沈むと、人はほっと一息をつく。 夕暮れが一日の始まり。   おいてかないで。   小さな声が聞こえた。 生まれたての子猫のような小さな声だ。 頼りなくて心細い、返事を期待していないような小さな声だ。   おいてかないさ。   真っ黒な大きな大きなオオカミは、優しい音色でうなった。 かつて、人の言葉がわかるように、大きな大きな獣たちが生み出された。 世界から動物たちが姿を消していく中で、動物園に展示されるのはそういう特別に手が加えられた大き

          夜が明けると

          「光る君へ」の中の直秀の面影

          大河ドラマ「光る君へ」。 今年は例年以上に、しっかりと大河ドラマを観ています。 もともと、平安時代というイメージが好きでした。 それは、大和和記さんの「あさきゆめみし」や田辺聖子さんの「おちくぼ姫」、氷室冴子さんの「ざ・ちぇんじ!」などが育んでくれた愛着です。 これを書いている現在、直秀ロスに兼道ロスが重なって、やはり最後に残る推しは実資様などと考えたりします。 とはいえ、5月12日放送の第19回「放たれた矢」でも、私は直秀の存在を感じたことを書いておきこうと思います。

          「光る君へ」の中の直秀の面影

          感想『ウンム・アーザルのキッチン』

          菅瀬晶子(文) 平澤朋子(絵) 月刊たくさんのふしぎ 2024年6月号 福音館書店 発売を楽しみにしていた絵本が届いた。 イスラエルの北の方、海に面したハイファという町に住む女性、ウンム・アーザル。 彼女はアラブ人で、キリスト教徒。 お料理上手で、4人の子ども達を育ててきた、還暦を過ぎた女性。 子どもに語りかける優しい口調で、その女性の一週間の過ごし方を紹介する。 一週間を描きながら、その女性の生まれ育ち過ごしてきた様々な苦難を描き、その地に住む人々の暮らしぶりを描き出す。

          感想『ウンム・アーザルのキッチン』

          病歴59:小康状態

          今月の病院受診もすませた。 正直なところ、診察の前、検査の前は緊張する。 今回のCTでも、私の腫瘍は小さいままで、腹水もたまっていなかった。転移も特にしていなそうだ。 次回の予約も3か月後になった。 小康状態だ。 ほかに、どう言えばいいのだろう。 治癒はしていない。腫瘍は腹の中にある。再発リスクはもちろんある。 寛解というのも違うし、とにかく治ったわけではない。 長い目で見て、治療と治療のインターバルに過ぎないと思うのだ。 AIに訊いてみたら「腫瘍が休眠状態にあり、治療が必

          病歴59:小康状態

          ふりそそぐ

          あっという間に満開の手前にまで、花開いた桜を眺める つぼみの濃い色も可愛らしく、日に日に開いていく様子を見るのが好きだ。 咲くのが早いのはこの辺り、本数が多いのはこの辺り、よく通る道で憶えている通りに視線を向ける。 今年は寒いからと油断していたら、ある日、はっとするほど存在を訴えて来た。 木によって花期が違うのは、いい。 一斉じゃないところがいい。 だから、長く花を楽しめる。 全部、同じ種類じゃないところが、楽しい。 多様性というのは、そういうものではなかろうか、と、ふっ

          ふりそそぐ

          病歴58:アピアランスのこと

          数日前、髪を染めた。 昨年の7月に抗がん剤を終えて、髪が再び生えるようになってから半年。 G.I.ジェーン状態を通り過ぎて、ベリーショートぐらいにはなった。 以前もこれぐらいの長さになった時、美容師さんに色で遊ぶことを教えてもらった。 その時は、ぱっと見は目立たないけれども、光の当たり具合によって、気づく人は気づくぐらいに、赤に染めてもらった。 私は、美容室迷子になっている。 昨年の抗がん剤治療開始まで通っていた美容室は、もう長く通った場所だった。 美容師さんが店を変わるた

          病歴58:アピアランスのこと