【意外】自己免疫疾患の原因は”清潔さ”?腸内フローラの多様性の欠如があらゆる病気を引き起こす:『寄生虫なき病』
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「清潔な生活」のせいで腸内の細菌が多様性を失い、現代人は病気に陥っている
本書を読む際の注意事項
本書では、花粉症やアトピー性皮膚炎、多発性硬化症のような自己免疫疾患だけではなく、がんや自閉症、心臓疾患、肥満、うつ病など様々な病気を治せるかもしれない可能性について触れられている。素晴らしいじゃないか、と思うだろう。
しかし本書は、明確な結論を出している本ではない。「世界中にはこんな事例が存在する」と羅列した事例集と捉えるべき本だ。確かに、実験の裏付けがあるデータも存在する。しかし本書の著者も、「人間に対して効果があるという決定的な証拠はない」という立場を明確にしている。
この作品では、「寄生虫を体内に取り入れることで様々な疾患が解消される可能性がある」とし、実際にアンダーグラウンドの世界で行われている寄生虫の売買などにも触れている。しかし著者は決して、それを推奨しているわけではない。
本書を読む限り、病気の種類にもよるが、自己免疫疾患は相当辛いようだ(私はどれも経験がないので実感はできない)。なんとかその苦痛から逃れたくて、可能性があることはなんでもやってみたいと感じる人も中にはいるだろう。だから、アンダーグラウンドな世界で寄生虫を買って体内に入れてみる。上手くいくこともある。でも、全然上手くいかないこともある。まだメカニズムはきちんと判明していない。
本書は、あくまでも可能性を示唆するものだ。書かれていることをそのまま実行すべきではない、という忠告を、先に書いておく。
本書で解き明かそうとする疑問の数々
まず、本書の中でどのような問題提起がなされるのかについて触れておこう。
本書ではこれらすべてに対して、同じ原因によるものと考えている。それが、
人類が、寄生虫や腸内微生物を失ったこと
である。これを示す様々なデータが本書に載っている。一部を抜き出してみよう。
医者や科学者は、自己免疫疾患やアレルギーの有病率が、「異常事態」と呼べるほどに上昇している、と感じているそうだ。
そして、自己免疫疾患やアレルギーの患者の増加は、感染症の減少と関係していることが分かっている。つまり、感染症が減れば減るほど、自己免疫疾患・アレルギーが増える、ということだ。
清潔な環境を整えたことにより免疫関連疾患が増えたとする「衛生仮説」
人類は、ほんの少し前まで、酷く不衛生な環境で生活をしていた。本書には、19世紀のロンドンについて、「常に、自らの排泄物に浸かっていた」という表現が載っている。下水道などがまともに整備されていなかった頃は、大都市でも道端に汚物が積み上がっているのが当たり前だったというから、なかなか想像を絶する環境だ。
人類が公衆衛生に目覚めたきっかけがある。それが、1817年から世界中で大流行となったコレラだ。徐々に感染症の原因が明らかになっていくことで公衆衛生の重要さを理解し、人類は「寄生虫」の撲滅に努めるようになる。そうして、世界的に衛生的な環境が整えられるようになったのだ。
しかし、寄生虫の撲滅に伴って、少しずつ免疫疾患が増え始める。本書を読んで初めて知ったことだが、「花粉症」というのは当初「先進国病」と呼ばれていたという。なぜか先進国の富裕層ばかりが発症するからだ。
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