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【自由】幸せは比較してたら分からない。他人ではなく自分の中に「幸せの基準」を持つ生き方:『神さまたちの遊ぶ庭』

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誰かと比べても「幸せ」を感じることはできない

「世間的な幸せ」を「幸せ」だと感じるか?

子どもの頃から、「自分はどうなれば『幸せ』だと思えるんだろう?」と考えてきたような気がします。世間的に「楽しい」「面白い」「嬉しい」とされていることに、どうもあまり興味が持てなかったからです。

今も、それはあまり変わりません。食や旅には興味がないし、たくさんの人とワイワイ関わりたいということもないし、結婚願望もありません。

ただ子どもの頃は同時に、「世間的な幸せ」から外れちゃいけないんだろう、とも思っていました。それの何が良いのかよく分かっていなかったけれど、良い大学に行って良い会社に入って、結婚して子どもをもうけて家を買って、みたいなことを「幸せ」だと思わなきゃいけない、と考えていた気がします。

みなさんは、いかがでしょうか? そういう「世間的な幸せ」について、どう感じるでしょうか?

今の私はもう、「世間的な幸せ」を諦めてもいいと思えるようになりました。周りの誰かがそれに「幸せ」を感じていても、私には関係ありません。そういう呪縛から逃れることができたのはよかった、と感じます。

「世間的な幸せ」が「自分の幸せ」と一致するなら、とても素晴らしいことでしょう。別にそれを否定したいわけではまったくありません。ただ中には、「世間的な幸せ」とズレてしまっていることに対して、自分を否定するような感情を抱いてしまう人もいるでしょう。それは、間違った落ち込み方だと私は感じます。

「幸せ」を感じられない場合、まず自分がどんな考えに囚われているのか理解してみることは大事でしょう。「世間的な幸せ」だけが正解だと感じてしまっていると、どんな風に生きても永遠に幸せにはたどり着けないと思います。

宮下奈都は、幸せの基準を自分の内側に持っている

本書は、普通に読めば、突然短期間の移住生活が決まった一家のエピソードを収録したエッセイです。そういう作品として楽しく読んでもらえば何の問題もありません。

ただ私は、「幸せに生きるとはこういうことではないか」というロールモデルとして、宮下奈都とその一家を紹介したい気がします。

しあわせって、たぶんいくつも形があるんだろう。大きかったり、丸かったり、ぴかぴか光っていたり。いびつだったり、変わった色をしていたりするかもしれない。そういうのをそのまんまで楽しめるといいとつくづく思った

宮下奈都は、自分の外側にある何かを基準にして「幸せ」を判断する人ではない、と感じます。基準は、彼女自身の内側にあるもので、端的に言えば、「自分が幸せだと思ったら幸せだ」という、まあ身も蓋もない表現になってしまいます。

ただ、こう感じることって、特に現代社会では難しいような気がします。なぜなら、比較対象を簡単に見つけ出せてしまう世の中だからです。

インターネットやSNSの登場で、自分と同じような境遇の人がどんな生き方をしているのか、それまで以前よりも簡単に知ることができるようになりました。男か女か、結婚してるかしてないか、子どもがいるかいないか、仕事をしているかしていないか、などなど、様々な違いがあり、その違いごとに多様な生き方を探し出すことができます。

多様な生き方があるなら、比較対象もたくさんあるはずですが、多くの人はきっと、「自分と同じ境遇で、自分よりも幸せに見える人」の方が視界に入ってしまうだろうと思います。そしてそうなってしまえば、自分の人生がなんだか不幸に感じられてしまうでしょう。

こういうことが、意識しなくても視界に入ってきてしまう世の中です。そんな中では、誰かと比較せずに「幸せ」を感じることが難しくなってしまいます。

エッセイを読んでいると、宮下奈都はそういう葛藤から解放されている人のように感じられます。実際にどうかは分かりません。ただ、誰かと比べるのではなく、自分が目の前の日常を良いと思えるかどうかで、常に人生を判断しているのではないかと感じます。

そういう視点が貫かれているからこそ、宮下奈都のエッセイはただのエッセイで留まらず、読む人により深い何かを感じさせるのでしょう。

親を見て、子どもは育つ

宮下奈都のエッセイを読んでいて感じることは、彼女の生き様は、子どもの教育という点でも非常に良い効果をもたらしているのではないか、ということです。

本書に限らず、宮下奈都のエッセイには三人の兄弟がよく登場します。そして彼らは、なんというか、とにかくのびのび過ごしているように感じられるのです。もちろん、実際の彼らの姿は分からないし、宮下奈都が良く見える側面しか描いていない可能性もゼロではありませんが、まあそんなことはないでしょう。

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