【天才】映画『ツィゴイネルワイゼン』(鈴木清順)は意味不明だが、大楠道代のトークが面白かった
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鈴木清順監督作『ツィゴイネルワイゼン』はまったく訳の分からない映画だったが、上映後に行われた大楠道代のトークイベントが実に面白かった
正直なところ、映画としてはまったく意味不明だった。最初から最後まで割とちゃんと観たのだが(後半、若干寝てしまったが)、何が描かれているのかさっぱり理解できなかったのだ。しかしそれは、あながち間違った感想ではないようである。というのも、本作に出演している女優・大楠道代が、上映後のトークイベントの中で「よく分からない作品」と言っていたからだ。出演している女優が「よく分からない」と言っているのだから、一般の観客が理解できるはずもないだろう。
さてそんなわけで、内容的には全然意味が分からない作品だったのだが、思いの外観れてしまいもした。最後の方で少しウトウトしてしまったものの、全体的には「意味不明だが、どことなく惹かれる部分もあるなぁ」という感覚で観れたのである。そういう意味でも、変わった映画だなと思う。ただ、観終わった今も結局、「どういう要素からそのように感じたのか」はよく分からないままである。
それでは、ざっくりとではあるが、まずは内容の紹介をしておこう。
まずは内容紹介
物語は、風来坊の如く全国をフラフラ歩き回っているらしい中砂糺が警察に捕まりそうになる場面から始まる。その日海で死体が上がったのだが、その女を殺したとして疑われてしまったのだ。そこにたまたまやってきたのが、陸軍士官学校の教授・靑地豊二郎である。彼がどうにか、その場を丸く収めた。
2人はそのまま、うなぎでも食おうと店に入り芸者を呼ぼうとしたのだが、出払っているらしい。しかしそこへ、自殺した弟の弔いを終えたばかりの芸者・小稲がたまたま戻ってきた。中砂は「弔い帰りの芸者もいいじゃないか」と無茶苦茶なことを言って座敷へと呼び寄せる。そして彼らは、窓の外に見えた盲目の旅芸人の関係性を邪推したりしながら、しばらく時を過ごすのである。
それからしばらく月日が過ぎ、靑地は中砂が結婚したという話を聞きつけたので、家を訪ねてみることにした。すると、良家の出身だというその細君は、なんと小稲と瓜二つだったのだ。中砂は何も考えていないのか、細君の前で靑地に「似てるだろ」と口にする。妻の園は当然、「誰に似てるんですか」と靑地に問う。もちろん、「芸者」だなどと答えるわけにはいかない靑地は、口をつぐむしかなかった。しかし、親友のそんな気遣いなどお構いなしに、中砂自身が「芸者の小稲だよ」と口にしてしまう。それを聞いた園は、ひたすらにこんにゃくを千切り続けるのだった。
中砂は結婚してからも、相変わらずあちこちをフラフラと旅している。そしてその旅先にはなんと、呼び出したのだろう小稲もいて、2人はそのまま関係を続けていく……。
撮影現場で大楠道代が驚いた様々な話
物語はとにかく、「中砂が無茶苦茶なことをして、彼の周りにいる靑地、小稲、園がひたすらに振り回される」という形で展開していく。まあ「展開」なんていうほど物語の筋があるようには感じられないのだが、とりあえずそのように進んでいくのである。中砂は「生まれてこの方、俺がまともだったことなど一度もない」と啖呵を切っていたほどで、「普通じゃない」という自覚は持ってはいるようだ。そんな中砂の存在感は圧倒的で、「何をしでかすか分からない」という危険な雰囲気が作中にずっと漂っていた。この点は、観客を惹きつける大きな要素と言っていいだろう。
さて本作の物語には、靑地の妻・周子も関わってくるのだが、この周子を演じたのが大楠道代である。そして、「4Kデジタル完全修復版」の公開を記念したトークイベントに、彼女が登壇したというわけだ。
そもそも私は、「鈴木清順の代表作である3部作が4Kで劇場公開される」ことを映画館で観た予告映像で知った。あいも変わらず、私は「鈴木清順」という監督については名前を知っていた程度だったが、その予告映像のインパクトがかなり強かったので、これは観てみようと思ったのである。
そしてそんな予告映像の中に、「ある女性が男性の目玉を舐める」というシーンがあったのだ。予告は3作品らの映像を繋ぎ合わせていたため、それがどの作品のものなのか知らなかったのだが、本作『ツィゴイネルワイゼン』の中でそのシーンが出てきた。周子が、入院中の妹の病室で、「目にゴミが入った」と口にする中砂の目玉を舐めるという場面である。
トークイベントでは、このシーンについての言及もあった。なんと、この「目玉を舐めるシーン」が「撮影初日」だったというのだ。しかも、台本には元々「目玉を舐める」などとは書かれていなかったという。現場入りして初めて、そんな指示を受けたと語っていた。鈴木清順というのはそういうタイプの監督だったようだ。彼女は、他にも色んな指示を撮影当日にされたという話を披瀝していた。
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