【告発】アメリカに”監視”される社会を暴露したスノーデンの苦悩と決断を映し出す映画:『スノーデン』『シチズンフォー』
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この記事は、映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』と映画『スノーデン』を元に書いている
スノーデンはかつて、NSA(アメリカ国家安全保障局)というアメリカの諜報機関で働いていた人物で、そこから盗み出した極秘機密情報を世界中に暴露した。その実話を扱った2本の映画がほぼ同時期に公開され、この記事はその2作品を元にしている。
『シチズンフォー スノーデンの暴露』はドキュメンタリー映画だ。ローラ・ポイトラス監督が香港でスノーデンと接触し、彼の口から語られる衝撃の事実がカメラに記録されていく。スノーデン本人が諜報機関の現実を暴露しているため、緊迫感・臨場感がもの凄い。ドキュメンタリー映画が好きな私としては、その凄まじい現実に圧倒される内容だ。
その後、『スノーデン』を観た。こちらは、事実をベースにしたフィクションである。スノーデンがNSAに採用されてから、そこで何を見、どんな経験をし、どのような苦悩の末に機密情報の暴露という行為に至ったのかがドラマチックに描かれていく。
そして、ドキュメンタリー映画が好きな私としては非常に珍しいが、この2作を比較して、『スノーデン』の方がより興味深いと感じた。それは、スノーデンが場面場面でどんな感情に支配されていたのかがリアルに伝わるからだろう。スノーデンが、個人としての人生ではなく公益を優先し、自分のすべてを抛ってまで暴露に踏み切るまでの苦悩には心を打たれた。
この記事では、この2作の映画をベースにスノーデンについて書いていく。
スノーデンは、
と語っている。まさにSF映画かスパイ映画であるかのような現実が描かれるのだ。我々はこんな世界に生きているのだと認識するべきだろう。
また記事の書き方についてだが、フィクションである『スノーデン』での描写も、事実として扱っている。映画的な演出も多少は含まれているだろうが、物語の大枠は事実に基づいているはずという判断だ。
スノーデンが暴露した現実と、スノーデン自身について
私はスノーデンの映画を見て、パソコンのカメラ部分にガムテープを貼った。スノーデンが、「起動していないパソコンのカメラだけを立ち上げて室内を盗み見る技術」をアメリカの諜報機関が持っていると語っていたからだ。ガムテープを貼るというのが対策として有効かは分からないが、やらないよりもマシだろう。
そう、スノーデンが明らかにしたことは、決して私たちの生活とは無関係ではない。というか、大いに関係していると言っていいだろう。
スノーデンの映画を観る前から、「アメリカがエシュロンというシステムで世界中の通信を傍受している」という事実は知っていた。しかし、「そんなこと知らなかった」という人も多いだろう。今この瞬間もアメリカは、世界中すべての場所で行われている電話などの通信をすべて収集しているのだ。
それだけではない。非公開にしているSNSなどのやり取りも、エックスキースコアというシステムで収集されている。映画で語られていたのではなくニュースで見た話だが、電源OFFになっていると見せかけて起動させていたスマートテレビで室内の音声を拾うというような技術も、実際に使用されているかどうかはともかくとして、既に開発されているというのだ。
つまり私たちは、対面での会話も、電話やオンライン上でのやり取りも、すべてアメリカに知られてしまっているということになる。
それだけではない。スノーデンは日本で働いていたこともあるというが、その際にになんと、送電網やダムにトラップを仕掛けたと告白していたのだ。彼は、
と言っていた。日本がアメリカの敵だと認定されたら、それらのトラップが起動され、我々の生活に大規模な障害が生じる可能性がある、というわけだ。
アメリカはこのような措置を、「テロの脅威に対抗するため」という理由で正当化している。9.11を再び起こさせない、というわけだ。しかし、だからといって彼らの行為を許容できるわけがないだろう。スノーデンも諜報機関でこの事実を知って大いに悩み、一度はCIAを退職してしまったほどである。
そんなスノーデンは、国家機密を世界中に暴露したことでアメリカ政府からスパイとして告訴された。パスポートを失効させられたことでモスクワの空港に40日間足止めされた後、現在は政治亡命者としてモスクワに住んでいる。
というスノーデンの言葉は、とても重い。そう、彼には、暴露などせずに平穏に暮らす、という選択肢もあった。機密を暴露することで自身がどんな状況に置かれるかなどすべて分かっていただろう。しかしそれでも、公益のためにすべてを捨てる覚悟で暴露に踏み切ったのだ。
そんなスノーデンの決意には、凄まじいものを感じさせられる。
スノーデンと同じ立場に立たされた時、同じことができるだろうか?
スノーデンはローラ・ポイトラス監督を“暴露の場”として選び、映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』として公開された。スノーデンは偽名を使ってローラ・ポイトラス監督とやり取りを続け、NSA批判で知られるジャーナリスト、グレン・グリーンウォルドを含めた3人が香港で落ち合う。そして盗み出した機密情報を明らかにし、グレン・グリーンウォルドが『ガーディアン』誌に記事を書き、その後『シチズンフォー』が公開される、という流れで内部告発が行われた。
彼はカメラの前で何度も、「自分のことは気にしなくていい」という趣旨の発言をする。
もの凄い勇気だろう。実名で顔をさらして、アメリカに真っ向から喧嘩を吹っかけるというのだから。
もちろん、リスクは承知の上だ。
身近な人間に迷惑を掛けないように、彼は誰にも話をせずに行動に移したのだ。
スノーデンが、これから行う内部告発について熟慮していると分かる発言がある。
確かに、内部告発に限る話ではないが、何らかの発信に対しては「誰が言ったか」という情報も付随してしまう。しかしスノーデンは、それによって論点が捻じ曲げられることを嫌った。「誰が言ったか」ではなく、「情報そのもの」に注目してほしかったのだ。
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