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【研究】光の量子コンピュータの最前線。量子テレポーテーションを実現させた科学者の最先端の挑戦

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世界的な偉業を成し遂げた著者が描く「光の量子コンピューター」の未来

量子コンピューターとは何か

本書は「”光の”量子コンピューター」についての本なのだが、まずは「量子コンピューター」から説明しよう。「量子力学」という分野の知見から発想された、まったく新しいコンピューターの仕組みである。

現在我々が使っているコンピューターは、「電子」を使って「0」か「1」を表現し、「0」と「1」だけを使った2進法と呼ばれる表記で計算や指示などを行っている。

重要な点は、「電子」が「0」か「1」の”どちらか”の状態を取る、ということだ。

一方、構想されている「量子コンピューター」はそうではない。「1量子ビット」という単位が、「0と1を重ね合わせた状態」を取るというのだ。

意味不明だろうが、意味不明なままでいい(私もよく分かっていない)。そもそも「量子力学」というのがなかなか一般的な感覚では理解不能な分野なので、ちゃんと分かろうとすると頭が混乱してくる。

とにかく、現在のコンピューターは「0」か「1」のどちらかの状態しか取れない仕組みだが、「量子コンピューター」は「0と1が重なった状態」を取ることができ、そのことによって、これまでとは比べ物にならないほどの速度で計算が可能になる、と考えられているというわけだ。

これ以上のことは私には説明できないので、あとはネットで調べてみてほしい。

「量子コンピューター」は「早く計算できること」が重要ではない

さて先程、量子コンピューターでは「これまでとは比べ物にならないほどの速度で計算が可能になる」と書いたが、それによって危惧されているのが、「RSAという暗号システム」が使えなくなってしまうことだ。

「RSA暗号」のは、インターネットのパスワードやATMの暗証番号で使われている。この暗号は「因数分解」がベースとなっており、「現在のコンピューターでは、物凄く大きな数の因数分解にはとんでもなく時間が掛かる」という事実によって安全性を生み出す仕組みなのだ。

しかし「量子コンピューター」が誕生すれば、この因数分解が一瞬で解けてしまうことが分かっている。「RSA暗号」が暗号として機能しなくなる、ということだ。

世の中の情報セキュリティには、「RSA暗号」以外の仕組みも存在するのだが、「RSA暗号」への依存度が高いまま「量子コンピューター」が開発されてしまうと、社会は大きな混乱に陥る可能性がある。

とまあこのように、計算速度がとんでもなく早くなることが分かっているのだが、本書を読んで意外だったのは、「量子コンピューター」の最大のメリットは決して高速計算ではない、ということだ。

量子コンピューターが実現することで、確実に超高速に計算処理できるようになることが理論的に保証されている問題は、ショアのアルゴリズムに加え、1996年にベル研究所の研究員であるロブ・グローバーが、量子力学の性質を使って膨大なデータの中から目的のデータを探索する手法として開発した「グローバーのアルゴリズム」など、現在のところ約60種程度に過ぎず、それ以外はほとんどわかっていないというのが現状だ

実は、「量子コンピューター」における計算アルゴリズムはほとんど発見されておらず、「計算速度が早くなる」というのも、そのアルゴリズムが分かっているものに限られることになる。だから、計算の性能は確かに上がるが、計算アルゴリズムが充実しない内は計算速度は大して重要ではない、ということになるのだ。

著者は、「量子コンピューター」にまったく違う期待をしている。

量子コンピューターであれば、計算処理に伴って排出される大量の熱エネルギーを理論上、ゼロにできるということだ

既存のスーパー・コンピューターを正常に稼働させるには、原子力発電所1基分以上の電力が必要とされており、その電力の大半が、本来の目的である計算処理ではなく、冷却に使われている

このことは、本書を読んで初めて知った。そして確かにこれは、「量子コンピューター」を開発する大きなメリットだと言えるだろう。

著者は、世界初の「量子テレポーテーション」を成功させた

本書は「光の量子コンピューター」を研究している最前線の研究者自身が書いている本だが、この著者の経歴が凄い。

世界で初めて「量子テレポーテーション」の実験を成功させたのである。

「テレポーテーション」と聞くとSFの世界の話に聞こえるかもしれないが、「量子力学」という分野では実は「テレポーテーション」が既に実現している。我々が「テレポーテーション」と聞いてイメージするような現象ではないが、それでも凄い現象だ。

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