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【宣伝】アポロ計画での月面着陸映像は本当か?映画『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』のリアル
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まさかの設定で「歴史のif」を描き出す映画『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』は、NASA全面協力の元、「月面着陸はウソだった!?」という可能性を掘り下げる
これはとても面白い作品でした。誰もが一度は、「アポロ計画での月面着陸映像はフェイクだ」みたいな陰謀論を耳にしたことがあると思いますが、そんなネタを本気で映画化した作品と言っていいでしょう。しかもそんな物語を、NASAの全面協力を受けて制作するというのだから、面白くならないわけがないと思います。
時代背景を含めて考えると、とてもリアルな設定
さて、本作の最大のキモは、「月面着陸が失敗した場合に備えて、あらかじめフェイク映像を用意しておいた」という点にあります。もちろん技術者たちは成功させるつもりで臨んでいたわけですが、アポロ計画は失敗が続いており、後がない状況でした。つまり、「仮に月面着陸に失敗したとしても、『失敗した』と認めるわけにはいかなかった」のです。「だから予備として、地球上で撮影したフェイク映像を用意しておいた」というのが、本作の物語の核心となります。
私は正直、「月面着陸の映像がニセモノだ」という主張には賛同しかねます。月面着陸の映像をじっくりチェックしたことはありませんが、地球の重力の1/6しかない月での動きを地球上で再現するのはかなり困難なはずだからです。本作ではもちろん「フェイク映像を撮影している様子」も映し出されるわけですが、あんなやり方で「後世の検証に耐えうる精緻な映像」が撮れるはずはないと思います。それに、もし仮にフェイク映像だとしたら、現代の技術をもってすれば容易に検証可能でしょう。そしてこの件に関する信憑性のある話が出てこない以上、月面着陸映像は本物なのだと私は思っています。
しかし、本作が面白いのはここからです。確かに、「地球上の撮影で、月面の様子をリアルに再現すること」はかなり難しいだろうし、当時の技術では、どんなに頑張ったところで、恐らく後でフェイクだとバレてしまうと思います。ただ、物語の舞台となる1960年代後半のアメリカには、「後でフェイクだとバレるリスクを冒したとしても、『地球上で撮影した月面着陸の様子』をテレビで流す動機」が存在したのです。作中でも、フェイク映像の制作を直接指示した人物が、次のようなことを口にする場面があります。
もはや問題は月面に着陸するかではない。テレビを通じて「ソ連に勝つアメリカ」を世界に見せつけることだ。
NASAはもちろん、純粋に科学的な関心・探究心から月を目指したと思いますが、アメリカにとってこの月面着陸計画は「ソ連との競争」でしかなかったのです。だから、「失敗」など許されるはずがありません。
「アメリカは宇宙開発競争においてソ連に遅れを取っていた」という話はよく知られているでしょう。宇宙に初めて動物を送り込んだのも、初の有人飛行も、どちらもソ連でした。そんなソ連を上回る成果を挙げるために「月面着陸」という大目標を掲げていたアメリカは結局、月を目指したかったというより単にソ連に勝ちたかっただけなのです。プロジェクトに大金を投じてもいたので、なおさら「失敗」などあり得ないでしょう。
さらに当時のアメリカはベトナム戦争の真っ只中でもありました。アメリカは、少なくとも1000億ドル以上をベトナム戦争に注ぎ込んでおり、その影響は国民の生活にも及んでいたのです。そんな状況では、日常生活に何も役立たない「月面着陸」に人気が集まるはずもありません。そのためNASAは、予算の増額など望めない状況にあったのです。さらにアポロ計画では、最初の打ち上げで大事故を起こし宇宙飛行士を亡くしています。それにより、アポロ計画は一時無期限の延期に陥っていました。その後も事故が重なったことで、国家が威信をかけて進めているアポロ計画は国民の関心を失い、そのせいで予算の増額も望めなくなるという悪循環に陥っていたのです。
「NASAを売り込む」というビッグプロジェクトに燃えるケリー・ジョーンズ
さて、そのような背景があるからこそ、本作の主人公の1人であるケリー・ジョーンズもリアルな存在に映るでしょう。彼女は「PRの天才」として知られていた人物で、あらゆる企業と関わりながら、商品を売るための施策やキャッチコピーを生み出し続けていました。
では、そんな人物がどうして物語に関わってくるのでしょうか? それはズバリ、「NASAを売り込むため」です。
先述した通り、当時のNASAはマイナスイメージばかりが先行し、国民から好ましく思われるような存在ではありませんでした(少なくとも本作ではそう描かれているし、実際にそうだったのでしょう)。そんな中でケリーは、政府関係者らしき人物から仕事を頼まれます。「不人気なNASAをPRして、月面着陸に注目を集めろ」というわけです。
そこで彼女は、「見栄えの良い俳優を『NASA関係者』と偽ってテレビ出演させる」「企業と広告契約を結び、企業イメージを上手く使ってNASAの印象を向上させる」など様々な手段を使って月面着陸を盛り上げようとします。「宇宙飛行士たちをビートルズより有名にする」と意気込むケリーは、最初こそNASAの職員に嫌われていましたが(実直に技術と向き合う人たちからしたら、ケリーのやり方は「嘘をついている」みたいに見えるのだろう)、彼女の手腕なくして月面着陸の盛り上がりはあり得なかったわけで、次第に受け入れられていくのです。
さて、ケリー・ジョーンズが実在の人物なのか(あるいは、実在のモデルがいるのか)については、ざっくり調べてみたけど分かりませんでした。ただ、「ベトナム戦争に関わっていたアメリカが全体的に疲弊していたこと」「事故続きだったNASAが不人気だったこと」は事実だろうから、1人で成した仕事だったかはともかく、やはり、ケリー・ジョーンズのような役割を担った人物(チーム)が存在したと考えるのが自然ではないかと思います。
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