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【天才】映画『リバー、流れないでよ』は、ヨーロッパ企画・上田誠によるタイムループの新発明だ
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「タイムループものの物語」を革新したとんでもない作品!ホント、よくもまあこんな映画を作ったもんですわ
私は普段、劇場で流れる予告映像や配布されているチラシなんかを元に観る映画を決めています。出来るだけフラットな状態で作品に触れたいので、映画を観る前の時点では可能な限り内容も評価も知らない状態を保つようにしているのです。特に、SNSやネットはなるべく見ないようにしているので、「話題になっている作品」ほど取りこぼしやすいと言えるかもしれません。
そんなわけで、公開されるまで『リバー、流れないでよ』という映画についてはその存在さえまったく知りませんでした。公開後に、映画レビューサイトFilmarksでの評価が異常に高いことに気付いたことでその存在を知り、「なるほど、あのヨーロッパ企画・上田誠の脚本なのか」という情報だけを頭に入れて映画館に行った、という感じです。
なので、まあとにかく驚きました。まったくノーマークだった映画が、こんなにも面白いのか、と。
映画を観ながらずっと、「世の中には『天才』ってホントにいるんだなぁ」としみじみ感じてはいました。こういう天才がいるから世の中が面白いとも言えるし、また、若干「絶望」させられもする、といったところでしょうか。
何が凄いかって、「タイムループものの物語」で新機軸を打ち出していることです。いやもちろん、世界中の物語に精通しているわけではないので、もしかしたら同じようなアイデアは既にどこかにあるのかもしれませんが、私はとにかく、『リバー、流れないでよ』で描かれる「タイムループ」が非常に斬新だと感じました。
というのも、「同じ2分間がずっとループし続ける」という物語だからです。「同じ1日」「同じ1時間」を繰り返すみたいな物語はいくらでもあると想いますが、「2分間」というのはなかなか究極的な短さだと言っていいでしょう。それに、「同じ2分間がずっとループし続ける」という設定だけ聞くと、「それ、どうやって物語を展開させるんだ?」と感じるのではないかと想います。ホント、その通りでしょう。普通に考えて、「そんな物語、成立させられないだろう」ってなると思います。
以前観た映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』も「タイムループものの物語」として新しさを打ち出していたと思いますが、『リバー、流れないでよ』は後で触れるように、かなりの制約を乗り越えなければ作れない作品なので、よりその凄まじさが伝わる感じがしました。
というわけでまずは、大まかな設定を紹介したいと思います。
まずは内容紹介
舞台は、冬の京都。中心部から少し離れた貴船にある料理旅館「ふじや」は、女将であるキミの「とにかくお客様に素敵な時間を過ごしてもらいたい」という気概によって、長く続く伝統が守られている。
時間帯は午後、つい先程帰りの客を見送った。今泊まっているのは、友人同士だろう男性2人組、そして筆が進まない作家と彼を缶詰にした編集者だ。宿は夕飯時を前に少し落ち着いたところで、キミは中居のミコトに、「部屋の片付けが終わったら休憩して」と告げる。ミコトは、旅館沿いを流れる川べりで一息ついてから、番頭と共に先程帰った客の部屋の掃除に取り掛かった。「サミットが開催されるからか、駅で不審物が見つかったらしい」「今度、娘の彼氏が家に来るんだよ」と、他愛のない話をしながら、テキパキと仕事をする。
しかししばらくすると、ミコトは何故かまた川べりに立っていることに気づいた。頭の中に「???」が駆け巡る。ついさっきまで客室の掃除をしていたのに。さっきと同じルートで階上へと向かい、途中で合流した番頭と一緒に先程の部屋へと向かう。なんと、ミコトの記憶では片付け終わったはずの部屋に、まだ食器が残っていた。番頭も不思議そうな顔で目の前の光景を観ている。
「この部屋、さっき片付けましたよね」「この会話、さっきもしたよね」と不思議な感覚を共有していると、ミコトはまたしても川べりに移動していた。何これ? しばらくして、「事情は不明だが、どうやらかなり短い間隔で時間がループしているらしい」ということが分かってきた。男性2人組のお客様からも、「この雑炊、しばらくすると量が増えて全然食い終わらないんだけど」と言われてしまい、状況を説明する。
旅館の者たちの知識と調査を総動員し、十数分後には、「旅館周辺のみ、2分間きっかり時間がループしている」と明らかになってきた。「2分後にはそれぞれのスタート地点に引き戻されてしまう」という制約の中、彼らは短い時間で作戦を立てながら、どうにかこのループから抜け出そうと奮闘するが……。
あなたなら、この条件でどのような物語を作るだろうか?
さて、ここまで触れてきた通り、物語の設定は非常にシンプルだと言えるでしょう。「同じ2分間を繰り返すことになってしまった旅館の面々が、いかにそのループから抜け出すか」というだけの物語です。基本的には、「2分経ったら、記憶以外のすべてが2分前の状態に戻る」と考えればいいでしょう(ただし、理由は後で触れますが、2分前にはなかった雪が積もっていたりするなど、世界線がバグったような感じにはなります)。どれだけ遠くに行こうとも、2分経ったら各々のスタート地点に戻されますし、何かを動かしたり壊したりしても、2分経ったら元の状態に戻るというわけです。たとえ命を落としても、2分経てば生き返ります。
さて、あなたが物語を生み出す側の人物だとして、このような設定からどんなストーリーを作るでしょうか?
何を描いても2分経ったらリセットされてしまうので、長く続くような展開は描けないでしょう。もちろん、記憶は引き継がれるので、次の2分間に持ち越すことは出来ます。ただ、毎回「スタート地点」に戻されてしまうという制約がなかなか厳しい。例えば、「作戦会議のためにみんなで集合する」みたいな状況の場合、移動のための時間がロスとなるため、決して2分間丸々使えるわけではありません。
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