
マネジメントで“部下を深く理解する”ってどういうこと?②【スタンス編】
前回のnoteでは、こんなことを書きました。
マネジメントにおいて「部下を深く理解する」ことの重要性が語られているが、“いったい何をどのように理解したらいいか?”については十分に語られていない
マネジャーが部下を正しく理解するためには【観点・モノサシ】を持つことが有効
それは“スキル・スタンス・動機の源泉“の3つである
スキル:成果を出す上で必要な課題解決力や人との協働に必要な力
スタンス:責任感・主体性など課題解決や協働に向かう姿勢
動機の源泉:モチベーションリソースと呼ばれたりもしますが、前向きに仕事に向かうためのエネルギー

そして、前回はこの3つのうちスキルについて掘り下げましたので、ご関心ある方はこちらをご覧ください。
今回は、スタンスについて書いていきたいと思います。
スタンスを身に着け、成長を加速する
スキルが「技」だとすれば、スタンスは「構え」にあたるものです。
スポーツでも、「技」を身に着けるためにはその前提として「構え」が重要になりますよね。正しいフォームで適切な動きをしないと「技」を身に着けることはおろか、身体を痛めてしまうことも少なくありません。仕事も同じで、必要なスタンスを身に着けることは、仕事経験を通じた正しい学習を助けます。
その正しい経験学習の積み重ねがスキルへと昇華し、成果の再現性を高めます。ですので、新入社員に始まる若年期に、しっかり身に着けておくことがポイントです。
求められるスタンスとは?
では、具体論に入っていきたいと思います。ビジネスパーソンとして必要なスタンスについては様々な考え方がありますが、私は、様々な事業で多数のメンバーをマネジメントした経験(失敗からの学びが大きいw)を通じて、以下の6つを身に着けていることが重要だと考えています。
そして、これらが3つの対となっていることがポイントです。

これらの要素について、以下の点をチェックすることで、部下一人ひとりの理解が深まっていきます。
6つのスタンスそれぞれが必要レベルを満たし、左右のバランスが極端に悪くないか?~今後の成長を阻害するリスクがないか?
特にどの要素が特に強いか?~その人の特徴やらしさはどこにあるのか?
「左右のバランス極端に悪くないか?」というのが、少しイメージしづらいかもしれませんので補足しておきます。
例えば、【責任感】に比べ【顧客志向】が高すぎるメンバーを考えてみましょう。(顧客志向>>責任感)
この人は、顧客の事情ばかりを最優先し、「お客さまが言ってるから」と言うことを錦の御旗に、社内に特殊な事情をごり押しするなどのアクションをとるリスクがあります。この傾向が続くと、その後の組織内での協働に問題をきたし、その人自身の成長も妨げてしまうことにつながりかねません。
逆に、【顧客志向】に比べ【責任感】が高すぎるメンバーを考えてみます。(顧客志向<<責任感)
この人は自身の仕事の責任感の強さから社内の事情ばかり優先して例外を恐れ、刻々と変化する顧客ニーズに対応しようとする姿勢が薄くなるリスクがあります。この傾向が続くと、顧客からの信頼獲得がままならず、成果が上がりにくいばかりか、成長に必要な仕事経験の不足を招く恐れがあります。
このような状況に陥らないためにも【顧客志向】と【責任感】をバランスよく高めていくことが重要です。
“仕事とは対価を頂く以上、顧客の期待に応えなければならないものである、一方、自社が提供可能な価値の範囲内で価値を提供しなければ継続的な価値提供は成り立たず、結果的に信頼を失うことがある”
と言うように、この二つのスタンスは仕事に対する「構え」の核のようなものです。
他の2対についてもバランスが極端に悪いことによって生じるリスクを簡単に触れておきます。
主体性 >>協調性
集団の中での主体的なアクションが過度になり過ぎて、周囲のメンバーがついていけなくなるリスク
主体性<< 協調性
周囲のメンバーに合わせるばかりで、自身の意向・考えを示せなくなり、組織への貢献度が低くなるリスク
好奇心>>着実性
未知や未経験のことへの感度が高すぎて、思考が拡散的になり、地に足がつかず、企画が具体化されないリスク
好奇心<<着実性
経験に基づき確実に動くことを重視するあまり、新たな視点や大胆な発想が持てず、仕事の改善・改革につながらないリスク
メンバーの継続的な成長を願って。
ちなみに若年期に高い成果をあげるメンバーは注意が必要です。“成果があがってるからスキルも高いはず。OKだよね”と評価されがちですが、若年期に成果が華々しかったメンバーが中堅になるにつれ、成長に陰りがみられ、伸び悩むといったケースは少なくありません。
残念ながら、こうしたメンバーの多くは、若年期にスタンスがしっかり身に着いていないことが大きな原因だったように思います。
マネジャーとして関わったメンバーが、自組織を離れた後も継続的に成長を続け生き生きと働いている姿は、マネジメントの仕事の喜びであり醍醐味でもあります。
そのためにもスキルだけに目を奪われず、メンバー一人ひとりのスタンスを理解し、その醸成をしっかり支援していくことが、とても大切な仕事のように思います。
Life is quest.